【ファンタジー小説】優しい午後の歌/第三話「塔の噂」
最上級のあいさつの仕方。食事作法。言葉遣い。もちろん、これまでも躾けられたことだ。しかし、ラウザーに全て、おさらいをさせられた。その上で国交のために重要な国の行儀作法まで。僕の頭の中は国と国との作法がもつれた糸のように絡まっていた。部屋のソファに倒れ込む。
ラウザーには、さっきやっと下がってもらった。こんなだらしない姿は見せられない。僕はうつろな目で窓の外を見る。王宮の贅の限りをつくした飾り窓から月光がうすく差し込んでいる。灯りがついているのは、この部屋の入り口付近だけな