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【短編小説】お題「バレンタインデー」で小説書いてみた。

kirinboshi(きりんぼし)です。
創作能力アップの一環として、お題をもらって2000字~3000字の小説を書いてみました第二弾。前回はコチラ。

【短編小説】お題「親子愛」で小説書いてみた。|kirinboshi|note

本編後には覚えている限り、頂いた講評を備忘録的に載せています。
良かったら、読んでみてください。
※今回は3000字ほど。百合要素アリなので、苦手な方はブラウザバックを。

『ウァレンティヌスの花』


「佐伯さん、何をボーっとしているの?」

東照寺マコがそう私に話かけてきたのは、とある放課後のことだった。


「……別に……」

私は柔らかそうでポチャッとした体型の東照寺からさりげなく視線を外す。

私こと、佐伯香は一見どんくさそうな東照寺の姿をいつも目で追ってしまうのだ。


成績優秀・眉目秀麗・クールな美形女子などと、噂されてはいるが、私はそんな自分が嫌いだ。のほほんと何も考えていなさそうな東照寺マコが自分は羨ましいのだろうか。


「おーい、マコ。帰るぞ」


そう教室内に声をかけたのは、マコの幼馴染である賀集拓人だった。私は賀集につい、厳しい視線を送ってしまう。賀集は、ビクッと怯えたようだ。

男のくせに、情けない。


「佐伯さん、また明日ね!」


マコはそう言って私に明るく手を振った。私はまたその顔を直視出来ず、「さ……さよなら」と小さく手を振った。


賀集拓人は東照寺マコが好きなのだろうか……。


私のここ最近の疑問である。いや、ただ帰る方角が一緒だから登下校を共にしているだけに違いない。冬になり、人肌恋しくなったせいでこんな愚かなことを考えてしまうのだ。


私は誰もいない教室で長く伸びた黒髪を振って邪念を払った。

しかし、東照寺マコの帰り際の笑顔は脳内から消えない。


私は女だけど、東照寺マコに恋をしているのだろうか。

それは、報われそうにない。友だちになりたくて、どうにか昼食を共にすることには成功したが、私は彼女を「東照寺さん」と呼び、彼女からも「佐伯さん」と呼ばれている。

賀集のように、まだ下の名前で呼ぶことは叶っていない。


そして、私はハッキリと気づいている。


付き合ってこそいないが、東照寺マコと賀集拓人はかなり良い感じの関係だということに……。


その理由はつい先日にさかのぼる。


球技大会が行われる中、私は東照寺と体育館の壁にもたれながら会話していた。

もう自分たちの出る競技が終わったころのことだった。

ぼんやりと他クラスの競技を見ているようで、東照寺マコは、やはり賀集拓人の姿を目で追っていた。


「好きなのか……?」

思わず、私は東照寺に向かってそう言ってしまった。

「えっえっ、何のこと?」と東照寺は多少テンパりながらも、その質問の意図するところは分かったようで、恥ずかしそうに頷いた。


「賀集くんのことね……うん、好きだよ」


その言葉に私は軽い衝撃を受けながらも、本題はここからだと思わず身を乗り出した。


「つ、付き合っているの……?」

「まさか、まさか!付き合ってないよー。佐伯さん、グイグイくるね!」


東照寺にそういさめられた私は「むぅ」とそれ以上のことは聞けなかった。


しかし事実、東照寺は賀集が好きなことがわかってしまった。

私は「はぁー」と長いため息を吐きつつ、その場に座り込んでしまった。


「えっ、佐伯さん、大丈夫?」


東照寺マコは気遣うように私の肩に手を置いた。いや、置いてくれた。

それくらい、私にはそのあたたかさがつらいと同時に嬉しかった。


球技大会でどんくさい東照寺マコはバレーのサーブ一つも決めることは出来ていなかったが、私の心にストレートを投げてきたのである。

そして月日は流れ、もう二月も中旬のときを迎えた。


図書室で東照寺は熱心に本を読んでいた。本嫌いで成績もあまりかんばしくないような東照寺が何故?と思ったが、読んでいる本はお菓子のレシピブックばかりだったので、私はすぐに合点がいった。もうすぐバレンタイン。


東照寺は賀集にチョコレートか何かを作って告白のきっかけにしたいのだろう。


「東照寺さん」


と、声をかけると彼女は恥ずかしそうにレシピ本を慌てて閉じた。

おそらく、さとられたくなかったのだろう。料理の下手な自分が一生懸命、賀集のためにプレゼントのお菓子を作ることなど……。


東照寺マコは料理がクラスに知れ渡るほど下手だった。

それは、調理実習で彼女がお米にタワシを使って洗ったり、卵を満足に割ることも出来ず殻まみれのスクランブルエッグを作ったりして級友におかしがられていたからだった。

余りにそのことでおちょくられていたので、私は級友に「料理が作れないくらいどうだっていうの!」と啖呵を切ったことから、東照寺との今の友達関係が作られたのだ。


図書室の彼女はレシピ本を持って貸出窓口へと持って行った。

何冊かふせんが貼られたレシピ本に彼女は恥じ入るように顔を真っ赤にしていた。


「バレンタインデーだから、頑張るんでしょ」


私は図書室の出口で東照寺に向かって言った。

東照寺が「うん」と頷く声が背中越しに聞こえた。

明日はバレンタインデー。私が本当に失恋する日……。


ここまで、東照寺マコについて、料理も運動も成績も悪い何でもないような子だと私は語ってきた。私は何故、東照寺マコが好きなのだろう。

動物に例えるなら、ひどいが白豚さん、といった印象の東照寺マコが私は可愛くて仕方ないのだ。恋に理由なんてない。だけど、あの東照寺のあったかい雰囲気は見るものがみれば最上級に魅力的なのだ。賀集拓人も気づいているのだろう……。


「さ、佐伯さん!」

インターホン越しに聞こえる泣き声に私は一瞬で目が覚めた。


あまりにもつらいバレンタインデーをわざわざ学校で過ごしたくなくて、私はズル休みしたのだった。

昼までダラダラと眠ったり起きたりを繰り返していたが、東照寺マコが何故かうちの家まで訪ねてきたのだ。


「どうしたの?」

「香ちゃん!助けて……!やっぱり私にはお菓子作りなんて向いてなくて……!!」


香ちゃんって言われたな……、と私は感じながらも東照寺マコの火傷だらけの手を見てハッとなった。


「マコ、手が大変だよ。消毒しなきゃ」


ボロボロと涙をこぼす東照寺マコに私も自然と「マコ」と呼べた。

お菓子作りは案の定、失敗したらしい。

夜から徹夜して作っても失敗続きで、朝、迎えに来た賀集に渡せるはずもなく、疲れ果てたマコは、そのまま眠ってしまっていたらしい。


彼女の手に消毒液を少しずつかけながら、私は努めて優しく言った。


「マコ、別にバレンタインだからって苦手なお菓子作りなんてしなくていいんだからね。昔、結婚が許されない国で結婚を勝手に許しちゃったえらい牧師さんがウァレンティヌスとかいう名前だっただけなんだよ。それでね、バレンタインが出来たんだよ」


マコは泣き止んで、真剣に私の話を聞いていた。

私はなおも話を続けた。


「ほら、そこに、あるでしょ。賀集に渡せそうなものが。あれを持っていきな」


マコはみるみる内に笑顔になった。

私の可愛い白豚ちゃん、本当にこれで私の想いはおしまいだ。




放課後、賀集は東照寺マコを迎えに校門前で待っていた。

今朝、迎えに行ったとき、顔を見せなかったマコに賀集は「大丈夫か?」と心配そうに駆け寄った。

私はその様子を校舎の二階からそっと見ていた。


賀集はマコに差し出されたものを照れたように受け取っている。

そうして、二人仲良く帰っていく様子を私はそっと見つめていた。


マコに話さなかったウァレンティヌスの話には続きがある。かの牧師は結婚したばかりのカップルに自分の庭から摘んだ花を贈った。

私も同じことをしたわけか。


私はマコと小さな花束を作ったのだ。

庭に咲いていたパンジーやプリムラの冬咲きの花たち。


「贈る心がね、あれば何でも喜んでくれるよ」


そう言ったときに笑顔を咲かせたマコ。

期せずして私もバレンタインデーに贈り物を渡せたのだ。

そして、私の恋は少しずつ友情へと移行出来るはず、……だ。


佐伯香は二月の寒空を眺めて少し笑った。




いかがでしたでしょうか。
ちなみに講評ではこれは「小説」ではなく「解説文」だと
バッサリ言われてしまいました……。

描写ではなく言葉で説明しすぎ、どういう感情で
行動しているか、読者に感じさせないといけない、というご意見でした。

自分で読み返しても、「物足りなさ」を感じました。
主人公の女の子の恋心がどれだけ相手の子を好きなのか。

その子をあきらめる理由など心の揺れ動きを描かなければ
小説ではない……と。
登場人物がどういう意図でどういう行動をしているのかわからない。

ごもっともです。
次のお題ももらいましたが、次は私の苦手な小説で書くか悩んでおります。

しかし、どんな文章表現になってもお題はこなすので、
またここで発表したいと思っています。

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