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静 霧一/小説
2021年8月10日 23:08
7月1日、午前0時。30歳の誕生日を迎えると同時に、私の手は半透明に透けてしまった。手首から先の輪郭がぼやけ、手のひら越しに、外の景色が見える。半透明であるためか、肌色交じりに星空が映っているせいか、とても綺麗とは言えない景色。そうかと思えば、普通に物は握れる。私の手は、なぜ半透明になってしまったのだろうか。頭の中にはぐるぐると悩みが旋回している。そんなとき、ふと私の視線は本棚
2021年4月21日 21:41
子供の頃、1度はこんな妄想に耽ったことはないだろうか。「もし、魔法が使えたのなら」「もし、私に秘められた才能があったなら」「もし、白馬の王子様に求愛されたなら」恥ずかしながら、私も幾度となくそんな事を妄想していた時期はある。そんな思春期を乗り越え、一旦落ち着いたかと思いきや、社会人になって大多数の大人がこの妄想病を再発させるのだ。自分の思い描いた理想とは程遠い生活、淡々と過ぎてい
2021年4月7日 21:19
「文字は人格を表す」そんな言葉を久しく感じるほどに、私たちは文字を打つことに慣れすぎてしまった。誰かに向けたメッセージさえ、私たちは無表情で文字を打つ。ビックリマークやはてなマーク、絵文字やスタンプと、文字を装飾する煌びやかな表現は発展しつつあるが、画面に映る顔は果たしてその装飾と釣り合う表情をしているのだろうか。私はテクノロジーの発展による筆記の利便性向上には大いに賛成である。第一に