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「メッセージ」~CMディレクター・杉山登志という男

CMディレクター・杉山登志をご存知でしょうか。
昭和中期に放映された資生堂CMの多くは、彼が手掛けた作品です。

2006年のドラマ「メッセージ」。
この作品は「テレビCMの日スペシャルドラマ」として、テレビCMの日である8月28日に放映されました。

杉山作品の多くは、中性的とも感じられるおしゃれさが特徴です。
何気ない日常の中でのおしゃれさ、短い尺で表現される芸術性など…令和の時代に見ても古さを感じさせることがありません。
実際の劇中でも、一部作品が使われています。

1973年に自ら命を絶った杉山ですが、一枚の用紙にこのような文を遺しました。

リッチでないのに
リッチな世界などわかりません
ハッピーでないのに
ハッピーな世界などえがけません
「夢」がないのに
「夢」をうることなどは・・・とても
嘘をついてもばれるものです

ドラマ「メッセージ」より

「リッチな世界」「ハッピーな世界」

私たちは、インターネットが普及する現代において、現実リアル虚像バーチャルの間に生きざるを得なくなっています。
目の前にあるものは、杉山が最期に問うた「リッチ」と「ハッピー」が広がっているのでしょうか?

ドラマのクライマックスで、平泉成さん演じる杉山組(杉山登志が率いた制作チーム)の元スタッフが、弟・伝命(藤竜也さん)に語りかけた台詞が印象的でした。

伝命さん、今になって思うんですよ。
杉さんのあの言葉・・・・…あれは決して、それまでの自分を否定した遺書なんかじゃない。
だって杉さんも俺たちも、本当の意味でリッチ・・・だったし、夢があった・・・・・し、絶対に嘘なんかやらなかった。
つまりね、杉さんのあの言葉は、『自分は、そういう恥ずかしいことはひとつもしてこなかった』という総括であり、宣言なんだって。
…いや、まぁそれだけじゃなくね。きっと、33年経ってもまだ生きている俺たちへの…いや、あの時の未来。ま、つまり『今の時代へのメッセージ』でもあったんじゃないかなって。

ドラマ「メッセージ」より

『子供ってのは…未来だ。俺には今だけでいい』という杉山の台詞があります。
暖かな家族の姿を目にした杉山は一瞬顔をほころばせますが、すぐに目つきを鋭くさせ、上記の台詞を口にします。
そのようなことを口にしていた彼が、命を絶つ寸前に見つけ出した未来への提言なのかもしれません。

今と未来をつなぐ架け橋―杉山にとってはCM制作がそうでした。
今を生きる私たちは、嘘を付くことなくリッチでハッピーな世界を築き上げているでしょうか?
血肉を犠牲にしてまで作品を作り上げる杉山の姿と私が今置かれている状況と照らし合わせながら見ると、彼が遺した一文の意味を深く考えさせられます。

杉山の作品はDVDにもなっています。
ACC創立50周年を機に「クリエイターズ殿堂」に選ばれたCM界の風雲児をその目に焼き付けたい方はドラマ共々ぜひご覧になってみてください!


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