お迎え【ショートショート】
準備は整った
いよいよ明日は推しのライブだ
ワクワクが止まらない
コロナに振り回されてライブは延期になり、明日やっと開催
おっと、夜更かしは良くないな
今日はもう寝るとしますか
逸る気持ちを抑え私は眠りについた
「お姉ちゃん、起きて、お姉ちゃん」
ん?
「お姉ちゃん?」私はなかなか開こうとしない目をようやく少し開けた
「お姉ちゃん迎えに来たで。遅くなってごめんな。あっちの世界じゃまだまだ新米やから色々忙しくてね。やっと来れたわ。さあ行こか」
私はびっくりして飛び起きた。
アイタタタ、腰をさすりながら暗闇を見た
危うく奇声をあげそうになった
「おはようさん」そこには母がいた
「お、か、あ、さん?」
「うん、あんた迎えに来てって言うてたやろ。来たで」
「お母さんは3年前に…」
「3年前に死んだよ。せやからあっちの世界から迎えに来たで。行こか」
「ちょ、ちょっと待って。え?何これ。夢よね?」
「夢じゃないよ。あんたが早く迎えに来て、早く来てってしつこく言うたから迎えに来たんや」
確かにお母さんが死んでから色々ゴタゴタ続きでひどく気が滅入っていた。
もう死んだ方がましだと、毎日お仏壇に「迎えに来て」と言っていた
「今日はあかん。明日は待ちに待った大事なライブなんだよ。んーと、明後日来てもらえないかな?」
「はあー?そんなこと出来るわけ無いやろ。頼み込んでやっと今日来たのに。次はいつ来れるかわからん」
母は少し怒りながら続けて言った
「あんた毎朝私の写真に、迎えに来てー早く来てーって言うてたやん。今日来るのも大変やってんで。で、行くの?行けへんの?どうすんの?」
私は小さな声で「なんで今日?今日はちょっと。ごめん!お母さん」と手を合わせて謝ると母は笑いだした。
「はははー、あー良かった。おじいさんもおばあさんもまだ早いって言ってたけど、そんなにあっちに行きたいならと思って来てみたんや。あんたはまだまだこれからや。私の歳よりもっともっと生きなさい」
「生きてて良いことあるんかな…」私が呟くと
「あるある。幸せになれる」
ピピピ、ピピピピ…
スマホのアラームで目が覚めた
私は仏壇の母に手を合わせた
読んでくださってありがとうございます。
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