SS【神の手】#シロクマ文芸部
お題「ガラスの手」
【神の手】(418文字)
ガラスの手と呼ばれる者は壊れたガラスをあるべき姿に戻す。
この国にはそんな伝説があった。
形見のグラスを直してくれたとか、子どもが欠けたビー玉を元に戻してもらったとか。
しかしガラスの手がどこにいるかは誰も知らなかった。
この国の王様はガラスの心臓の持ち主だった。
怖がりの王様は戦争ばかりしていた。自分が一番強ければ、誰も自分の心臓を脅かすことはできないと考えたのだ。
しかし戦争は果てしなく続き、イライラが高じた王様の心臓にはヒビが入ってしまった。
死を恐れた王様はガラスの手を求めた。
「早くガラスの手を見つけ出すのじゃ」
「手を尽くしておりますが、なかなか…」
王様は言い訳する家来の首を次々にはねた。
ようやくガラスの手が見つかった時、王様は大喜びで言った。
「わしの心臓をあるべき姿に戻せ」
ガラスの手はうなずいて、王様の胸に手を置いた。
パリン。
王様の心臓は粉々に砕け、王様は死んだ。
家来たちは大喜びし、戦争は終わった。
ガラスの手は神の手でもあった。
おわり
(2023/6/9 作)
小牧幸助さんの『シロクマ文芸部』イベントに参加させていただきました。
ガラスの手帳、ガラスの手毬、ガラスの手袋、ガラスの手風琴、ガラスの手紙、ガラスの手招き……等々、『ガラスの』と付くだけで多くの言葉が不思議な世界を表現し始めることに気づいておもしろかったです~
出てきたのはこんな話でしたが… (;・∀・) 結局『ガラスの手』。
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