見出し画像

【仕事・建築】進化し続ける天井を見ない人々と、天井を描く設計士

おはよう
こんにちは
こんばんわ。
今日も来てくれてありがとう。

今、この記事をスマホで見ているのかい?
であれば、少し上を向いて欲しい。

外にいるなら空かな。
屋内だったら、天井かな。

今日は天井の話をする。


屋根・天井を見ることは少ない

建築に興味がない限り、なかなか建物は見ない。

それは、僕もそうだった。印象に残る建物といえば、歴史的な建造物や東京タワーといったような観光目的として見た建物。

ただ、建築業界にいると目線が変わるんだ。今まであまり着目したことがなかった部分や、設計者に意図を考えるようになってくる。

着目したことがない部分といえば、天井や屋根。わざわざ建物の中に入って上を向くことなど少ないからね。


でも少し上を見上げると、天井のデザインは奥が深いのよ。

例えば、京都駅。設計は原広司氏率いるアトリエ・ファイ建築研究所。原広司氏は、京都駅のほかに日本発連結超高層ビルの梅田スカイビルや札幌ドームを設計している。

鉄格子が作り上げる近未来的な空間。天井高が他の駅に比べて非常に高いので、本当にここは駅なのかと勘違いしそうになる。

アートという点では東京駅の天井も美しい。

東京駅は辰野金吾氏が設計。このドームには干支12支のうち8つの干支が配置されています。

サラリーマンや旅に行く人・帰る人を迎える天井だね。まさに日本の中心にぴったりな駅だ。

予算が合わない拘り

某組織設計事務所のS氏。

これまで数々の大型施設の設計に臨んできた。

S氏とは、建築イベントで挨拶したことがきっかけで、事務所に訪問するようになった。

白髪混じり、50代半ば。設計一筋でここまで仕事を続けてきた。

だからこそ、拘りは強い。

役所がS氏のアートに不満でも、曲げることなく主張し、結果良い方向にに転じることが多く、業界でも話題性のある人物だ。


しかし、そんなS氏が頭を抱えていた。複合施設の新築設計だった。

エントランスホールについて、S氏が理想とするデザインには、どうしても予算が合わなかった。

そして、天井材の相談として僕が呼ばれたんだ。

デザインに対して拘りを持つのはわかるけど、何故そこまで天井・屋根に拘るのかわからなかった。

率直に聞いた。
なぜ、天井にこだわるんですか?

一瞬、眉間が寄ったときは怒られるかと思ったよ。だけど、その後S氏は笑みを浮かべた。


聞きたいか、、
待ってましたかと言わんばかりの表情だった

天井の下、見上げる屋根

S氏は語り始めた。

_____

天井の下では当然だが人が行き交う。そこは要するに”場”であり、その”場”をどう考えるかが設計士としての役目だ。

複合施設は特にそうだ。用途問わず集まる複合施設は様々な人が集まるから、場の中には様々なコミュニティーが生まれる。

子連れのお母さん、営業回りのサラリーマン、受験を控えた高校生、地域の方々。それぞれの生活を上から見ているのが天井だ。

そして、入口から建物の印象を大きく左右するのも天井。入った瞬間に人は上を少し見上げる。記憶に残らないかもしれないが、建物に対する感じ方は変わると思うよ。

天井は大事な存在なんだよ。


天井の上は、屋根がある。

屋根は建物を外から見た時の印象に関わる。屋根に使われている素材もそうだが、切妻・寄棟・片流など様々な形状で建物を表現できるんだ。

表現だけじゃない。屋根の形状は建物の強度にも関わってくる。

積雪地域の屋根は、陸屋根よりも切妻が多いのは、陸屋根だと雪が乗ることで屋根に荷重がかかり、建物を崩壊しかねない。

白川郷といったような古くからある積雪地域の建物が切妻なのは、昔の人が生み出した知恵なのだ。

陸屋根の場合における積雪


白川郷

だから、安易にコストを削減したらいいって話じゃない。天井や屋根は人が建物に対して感じるイメージと、安全といった両面で大事なのだよ。

S氏はそう語ってくれた。

天井屋根のデザインは進化し続ける。

建築業界の営業が楽しい理由は、新たな視点で建物を楽しめることだと思う。今回の天井や屋根の形状もそうだ。

昨今では、3次元を活用した形状が注目されている。それも木造屋根で3次元を表現するということが、国内でも増えているのだ。

代表例としては、伊藤豊雄氏が設計を務めた「みんなの森メディアコスモス」だね。

木を格子状に組み合わせることによって、このような曲面上に表現できる。これまで木造では実現できなかった屋根・天井を実現できるようになってきている。

下からみるとこんな感じ

本当に日本で造られた建物なのかと思うほど、美しい空間になっている。

このような天井が、入った瞬間に光景として目の前に広がったら、印象に残るだろう。


ただ、天井を楽しむ心は昔から日本人にあった。神社や寺の天井を見ると様々な絵が描かれている。

平岡八幡宮「花き図」

日本建築の特性上、梁を細かく通す必要があった。空間を広くするには、そのようにしないと崩れてしまう。

そこで、細かく設けた梁のマス目に絵を描くようになった。平岡八幡宮の花き図は室町時代の再建時に描かれたものなんだって。

これらは、上にいる神様や仏様を祀るものとして描かれるようになった説がある。

建物自体を信仰物としていたんだね。

上を少し向いてみよう

僕らはいつしか下を向くようになった。

今電車に乗っていても、スマホばかり見ている人が多い。この文を打ってる僕もそのひとり。

たまに上を見れば、これまで気にしていなかった面白さに気づく時もあるね。

それこそ、屋根や天井を見るためには、上を見る必要がある。

下ばかりを見ていないで、たまには顔をあげてみな。きっといいことがあるはず。

そんなことを天井は言っているかもしれいない。


今日もありがとう。
よろしければ
フォロー・スキ・コメント
よろしくお願いします!


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?