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「アスピリンがCOVID-19中等症患者の死亡と肺塞栓を減らす可能性」

TONOZUKAです。


アスピリンがCOVID-19中等症患者の死亡と肺塞栓を減らす可能性

以下引用

米国George Washington大学のJonathan H. Chow氏らは、米国で入院した中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者のうち、初日にアスピリンを投与された患者とそうでない患者のアウトカムを比較するコホート研究を行い、アスピリン群は28日後までの院内死亡と肺塞栓のリスクが低かったと報告した。結果は2022年3月24日のJAMA Network Open誌電子版に掲載された。

 COVID-19患者に対するアスピリンの有効性については、いくつかの研究で異なる結果が報告されており、一貫性がなかった。そこで著者らは、米国立衛生研究所(NIH)の全米規模の症例データベースを使用した研究で、早期のアスピリン投与が中等症のCOVID-19患者の死亡率に及ぼす影響を検討することにした。

 Analysis of National COVID-19 Hospitalization Outcomes in Recipients of Aspirin(ANCHOR)スタディは、NIHのNational COVID Cohort Collaborative(N3C)Data Enclaveを利用した。対象は、SARS-CoV-2感染が確定した入院患者で、入院初日の評価で中等症に分類された人とした。入院せずにすんだ患者や、初日から重症と分類された患者は除外した。入院初日にアスピリンを投与されていた患者をアスピリン群とした。

 主要評価項目は28日までの院内死亡率とし、副次評価項目は入院中の急性肺塞栓と急性深部静脈血栓症として、アスピリン群と対照群のリスクを比較した。対照群はアスピリンを投与されなかった中等症の入院患者の中から、逆確率重み付け(IPTW)法を用いて傾向スコアをマッチさせた患者を選び出した。調整した交絡因子は、年齢、性別、人種、併存疾患、入院前90日間のアスピリン使用歴、入院日、受けたCOVID-19治療薬(デキサメタゾン、レムデシビル、トシリズマブ、ヘパリンなど)を調べた。

 2020年1月1日から2021年9月10日までに、793万729人が検査を受け、244万6850人がCOVID-19患者と診断され、18万9287人が入院していた。このうち中等症と判定された18歳以上の患者は11万2269人だった。入院初日にアスピリン投与を受けていたのは1万5272人(13.6%)で、アスピリンの用量は中央値で81mg(四分位範囲81~81mg)だった。治療期間は中央値で4日(2~10日)だった。

 中等症の入院患者コホート全体の年齢の中央値は63歳(47~74歳)で、16.1%がアフリカ系米国人、3.8%がアジア人、52.7%が白人、5.0%がその他の人種、22.4%が人種不明だった。傾向スコアをマッチさせる前の比較では、アスピリンを投与された患者では、慢性腎臓病の有病率が高く(39.4%と17.3%)、慢性閉塞性肺疾患患者も多く(17.6%と10.3%)、心臓病(55.3%と21.1%)、高血圧(75.6%と43.9%)、糖尿病(51.1%と27.2%)の患者が多かった。さらに、アスピリン投与群には、アスピリン使用歴のある患者が多かった(46.9%と4.2%)。

 28日目までの院内死亡率は、アスピリン群10.2%と対照群11.8%だった。オッズ比は0.85(95%信頼区間0.79-0.92)になった。アスピリン投与による絶対リスク減少は1.6%で、相対リスク減少は13.6%になり、28日院内死亡を1件回避するための治療必要数は63だった。

 肺塞栓の発生率は1.0%と1.4%で、オッズ比は0.71(0.56-0.90)と有意差を示したが、深部静脈血栓症の発生率は両群ともに1.0%で、オッズ比は1.00(0.78-1.28)になり、有意差は見られなかった。
アスピリン群に消化管出血の増加は見られず(0.8%と0.7%、オッズ比は1.04:0.82-1.33)、脳出血リスクにも差はなく(0.6%と0.4%、オッズ比1.32:0.92-1.88)、輸血リスクにも有意差は認められなかった(2.7%と2.3%、オッズ比1.14:0.99-1.32)。これらの出血性合併症を合わせた複合イベントの発生率にも、差は見られなかった(3.7%と3.2%、オッズ比1.13:1.00-1.28)。

 サブグループ解析で、アスピリンの利益が有意になることが示されたのは、60歳超の高齢者で、61~80歳の28日院内死亡のオッズ比は0.79(0.72-0.87)、80歳超では0.79(0.69-0.91)だった。また、併存疾患を持たない患者には有意な利益は見られず、併存疾患を1つ保有している患者の28日院内死亡率は、アスピリン群が6.4%、非アスピリン群は9.2%で、オッズ比は0.68(0.55-0.83)であり、2つ保有している患者では10.5%と12.8%で、オッズ比0.80(0.69-0.93)、3つ保有している患者では13.8%と17.0%でオッズ比0.78(0.68-0.89)、4つ以上保有している患者では17.0%と21.6%でオッズ比は0.74(0.66-0.84)となった。

 これらの結果から著者らは、中等症のCOVID-19で入院した米国の成人患者において、早期のアスピリン投与は、28日以内の院内死亡と肺塞栓のリスクを減らしていたと結論している。アスピリンの有効性は多様な患者を含むランダム化比較試験で確認する必要があるが、アスピリンは安価であるため世界で役立つ可能性があるとしている。この研究はNational Center for Advancing Translational Sciencesなどの支援を受けている。

 原題は「Association of Early Aspirin Use With In-Hospital Mortality in Patients With Moderate COVID-19」、概要はJAMA Network Open誌のウェブサイトで閲覧できる。




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