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「ワクチン職域接種の担当者さんが「小金井メソッド」から学べること」

2021/07/01



TONOZUKAです。


ワクチン職域接種の担当者さんが「小金井メソッド」から学べること


以下引用

 6月10日時点で高齢者の69%(1万8133人)が新型コロナワクチン接種を終え、2回目の接種率も2割を超えている東京・小金井市。地元の医療関係者が、かかりつけの診療所でも集団接種会場でもその中核を担う「小金井メソッド」について関係者に聞いていくこのインタビュー、第3回、第4回では、集団接種会場の運営を担当する会社、フォズベリーの方に、医師会、市役所と民間企業がどのようにチームを組んでいくのかを伺っています。

 集団接種会場でも高効率かつスムーズに接種を進めている小金井市のノウハウは、最近一気に話題になっている「職域接種」でも活かせるところがありそうです。そこでインタビューの後に、同社の方に「集団接種会場運営時に役立ちそうなノウハウ」をお聞きしました。最後のページにまとめましたので、ご活用ください。(Y)
市役所、医師会と運営会社がフラットに手を組む

── 前回に引き続き、新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場(以下、特記なき限りワクチンは新型コロナウイルスワクチンを指します)の運営を担当されているfosbury(フォズベリー)の方にお話を伺っています。医師会の方とは前向きなオーバーラップをお互いにできているとのことですが、市役所の方とはどうですか。

桑原 裕 部長(以下、桑原):市役所の方は、「役割としてはハブなので、必要な情報を適宜提供し、調整する」というスタンスを取ってくださって、実はこれもすごくありがたかった。本当にハブに徹してくださって、過剰なオーバーラップはしない。「こういう案件が出ました。運営サイドからはどう思われますか。医師会サイドはどう思われますか」というふうに、物事を円滑に進めるためのファシリテートをしてくれていると思います。あとは、市長がこの1週間実はずっと現場に実際に出てきていて、気になるところをご指摘いただくとか。

── でも偉い人の指摘なんてどうせ大したことないでしょう。

桑原:いや、それが結構的を射ていて。

── 本当ですか(笑)。

桑原:よくある偉い人に取り巻きの方がぞろぞろ連れ立って、という感じじゃなくて、2人ぐらいで来られて、「ここってちょっと気になるんですけど、どういうふうなお考えでこうされているんでしょうか」って、質問をされるんですね。それで議論があって、そういうことなんですねといって納得してお帰りになる。

── あら、すてき。

桑原:フラットに本音でお話ができていると思います。

── 医師会の方とは、桑原さん、岡田さんから見ていかがですか。

桑原:医師会の方々は、本当に、会場に置いてあるもの1個1個について、ちゃんと言及してくださるんです。「オペレーションの順番はこっちのほうがいいんじゃないか」「スタッフの立ち位置は、こうしたほうがやりやすい」という要望をストレートに言ってくださって。もちろん、可能なこと、不可能なことがありますので、「これはできる」「これはできないけれど、こういうやり方なら対応可能」といった、直接的なコミュニケーションが取れているのは、うまくいっている要因かなと思います。

 岡田がずっと話し合いを進めてきて、初めて僕も小金井市に伺ったときなんですが、実際の会場を使って簡単なシミュレーションをしましょうというところに呼ばれて三澤(多真子)先生(その1、その2を参照)と初めてお会いしたんですけど、終わった後のディスカッションをしている最中、「こうしたほうがいいと思います」と僕が発言したところ、「あ、それいいですね」と。

── 打ったら響いたと。

桑原:「もうプロがそう言うなら、じゃあ、お任せします。ありがとうございます」と言われて、僕としてはもう、最初からびっくりだったんですよ。

── 具体的な例では?

桑原:「観察30分と診断された人の体に直接シールを貼って目立つようにする」というアイデアをぱっと採用してくださいましたね。大きなものとしては、会場のレイアウトの大幅な変更、具体的に言うと会場の順路を当初と逆回転にしたことがあります。

── どういうことでしょう。
桑原:接種会場で人が滞留するポイントはいくつかあります。受付、予診前の待機などですが、一番時間がかかるのは経過観察(接種後の副反応、アナフィラキシーが起こらないかを確認)です。いかに経過観察のスペースを確保するか。そして、動線をシンプルにできるかがカギだと思います。初回訓練時のレイアウトでは、経過観察の席数確保、動線、ともにやや問題があったと思います。そこで流れを逆にしました。


── なるほど。それを、すっと医師会は受け入れたと。

岡田 陽平氏(以下、岡田):「イベントのプロにはプロの考えがあるでしょうから」という形で「それがいいというなら、もうそれに従うよ」という形で信じてくださった。これはでかいですね。

── うーん、そこで桑原さん、岡田さんが驚かれるということは、あまり「プロを尊重」する方ばかりでもないってことですか。

桑原:実のところ、小金井市の医師会・市役所のように、イベント運営会社の意見を尊重してくださるところは少ないと思います。そして、これも非常に重要なことなのですが、医師会がリーダーシップを持って接種会場の運営に協力してくださっている。

── ごめんなさい。よく分かりません。接種会場で医師会がリーダーシップを持つのは当たり前のようにも思えるのですが、具体的にどういうことなんでしょうか。

「医師会のリーダーシップ」の意味

西 達郎 フォズベリー取締役(以下、西):あくまで一般論としてしかお話しできないんですが、要は、マニュアルに従っていただけない医療関係者の方が出てきた場合、医師会の方が毅然として対応してくださるかどうか、ということです。もちろん、マニュアルに従わないのは「自分のやり方の方がよりいい結果につながる」という、よかれと思ってのことなのですが。

── いや、「よかれ」と思ってとはいえ、そこは従わない場合はお帰りいただくべきでは、とも思いますが。

桑原:ややこしいのは、「運営は基本、当社のワンストップ」と申し上げましたけれど(前回参照)、医療系の人材派遣だけは我々とは別なんです。他にも、応援で来ている市の職員さん、施設自体の管理運営をされている事業者さん、ワクチン輸送を担当する事業者さん、などなど、実際にはたくさんの方が接種に関わります。

── 別のステークホルダーがいて、そちらはそちらで言い分がある、となると、組織間のもめ事になりかねない。

桑原:医療関連の方とのお話が、(接種会場がある自治体の)医師会の人とだけの話で済めばいいのですけど、さらにもう1社加わると一気に複雑になる。例えば業務分担とかが、すごく細かい話ですけど、今回接種の記録を残すために、ワクチンのロットナンバーが記されたシールが発行されるんです。

── そうですね、接種券に貼るんでしたっけ。

桑原:そのどこまでの作業、記載、シールを貼る作業を誰がやるのか、というようなディテールですね。そこで議論になります。これは「面倒くさいからやりたくない」じゃないんですよ。「そちらでやったほうが効率的だし、時間はかからないと思うからお願いします」ということを現場で言われたりする。その場はそれでいいかもしれないけれども、例えば、複数の会場で接種している自治体さんだったりすると、その手順の変更を全部に浸透させなきゃいけない。

── どうしてですか?

桑原:もしかしたら、ここで働いていたスタッフが、違う会場に行く可能性がありますよね。

── 別の会場に行って、この会場での「現場で修正した」手順を引きずってしまう、ということになるのか。

桑原:はい。混乱が起きる原因になりますし、それだけではありません。我々が作っているマニュアルがありまして、これがまさに小金井市さんで使われている、全50ページぐらいの超大作になるんですけど、ここに記載をしたこと自体が「こういう認識で合意をしましたよね」というエビデンスになるわけです。

 もし、ここから外れたことをしてしまうと、何か問題が起きたときに、認識が誤っていたのか、別の原因なのかとかいうことが、中長期的に分からなくなってしまう。このオペレーションに従っている前提で起きたものなのか、それから外れたことによって発生したことなのか。

── そうか、オペレーションに問題が内在しているのか、そうじゃないことをしたからなのかというのが峻別(しゅんべつ)できるわけですね。

桑原:はい。

── なるほど。大事だわ。

桑原:これはどのイベントでもやらせていただいている作業なんですけれど、手順を順守することは、しゃくし定規に見えることもありますが、トラブルの際の原因究明と再発防止にも必要なんです。

── ワクチンを希釈する生理食塩水を注射してしまった(※人体にはもちろん無害)というトラブルが、一時他の自治体で発生していましたね。

桑原:はい、もちろん薬剤を希釈して接種するまでのオペレーションは、長年の実績を経て、非常に洗練されているものです。ただ、接種会場では、普段の診察室ではない臨時の場所、臨時の動線で行われるので、独自のオペレーションというか、いつもの手順に“つなぎ”の部分が加わるんですよね。そこを、会場を運営する我々が丁寧に作り込むことで、トラブルを防ぐことに寄与できるのではないかと思います。

── それこそ、ワクチンの空き瓶(バイアル)をどこに置くか、みたいな会場のオペレーションがちゃんと明文化、共有されていないと、空き瓶に希釈用の生理食塩水を入れちゃって、そこから接種用の注射器に吸ってしまう、ということに。

桑原:だと思います。

── そうか、でも、そこをどうするかについては、厚労省からの手引にも指示はない。だから、現場で運営する側が工夫する必要があるわけか。

西:話が長くなりましたが、というわけで、医師会の方が、接種現場の医療関係の意思統一を積極的にしてくださることがとても重要なんです。これがうまくいかないところは、我々も怖くて責任が持てないので、「手を引く」という選択肢も含めてかなり緊張して対応することになります。

── 医療関係の意思統一が現場のトラブルのない運営の極めて大きな条件で、接種現場を預かる立場としては、そこのリーダーシップを医師会に期待する、ということですか。

西:はい、ここをビシッとやっていただけることはとても大きいですね。

桑原:大きいです。小金井市は、医療従事者の方のコンセンサスが取れているというところは本当に助かっていますね。

「予算に関しては任せます」

── 市役所のほうはいかがですか。クライアントだけに言いにくいこともあるかとは思いますが。

西:聞いている話だと、小金井市さんがうちの担当者の裁量に任せてくれたというのは大きいようです。

桑原:そうですね。本当にそうですね。

── 任せてもらえた、と感じたことで、何かご記憶に残っているものがあればぜひ。

桑原:具体的なエピソードですか。すごく直接的な物言いになっちゃうんですけど……。

── なんでしょう。

桑原:僕、行政の方とこの仕事をやっていて、「予算に関しては任せます」という言い方を、初めて聞いたんです。

── へえ、事実ならば確かに衝撃的かもですね。

桑原:投げやりな言い方ではもちろんなくて、「その金額になるのには根拠がおありでしょうから、そこはある程度お任せします。本当に上限に達してしまってというときにだけ言います」と。

── 予算感を忖度(そんたく)して、取らなくていいリスクを取るようなことはしてほしくない、ってことですかね。

桑原:はい。「何よりも本当にうまくいくことを第一にして考えてほしい」ということでした。
パーティション一つで安全性(と予算)は変わってくる

── その方の決めセリフなのかもしれませんが、ちょっと泣けてきますね。民間でもなかなかそうは言えないでしょう。でも、会場に必要なものってある程度決まっているんじゃないでしょうか。やり方でそんなに変わります?

桑原:ひとつは人員、これはもろに変わります。あとは、そうですね、ちょっとマニアックな話になりますけど、さっきお話しした仕切り、パーティションがあるじゃないですか。あれにはいろいろなタイプがあります。自立するもの、しないもの。自立するタイプの中にもいくつか分かれていて、これくらいの薄い円盤みたいなのが下にベースとしてあるものと、太い脚がにゅんと出ているものがあって、全然コストが違うんです。ベースが薄くなっているものが、一番安全ですがコストが高いんです。ですけど、当初会場にやってくる方が、基本的に高齢者だということを考えると。

── 引っ掛からないものを選ぶ方がいい。

桑原:はい。理想を言えば。ただ、設置には少し専門的な技術が必要なので、臨時の会場には向いていないこともある。

 その場合、置くだけで設置が完了する、脚が出ているタイプなどを使うことになるのですが、そのときには転倒を防止するために人員を増やしてケアすることになる。

── よくキャスターが付いている三つ折りのパーテーションとかがありますよね。

桑原:あれそのものを全面的に否定するわけじゃないですけど、その周りに十分に人がいないように見える会場を見ていると、ちょっと怖いと思います。岡田さん、ちょっと僕が喋りすぎたけど何かないですか。

岡田:ありがとうございます(笑)。私が感じるのはただ、三澤先生は本当に一つ一つ細かく「物事を作っていただく」方だなあ、と。

── そうなんですか。ディティールを積み上げていく、ということですね。

岡田:運営フローもそうですし、医師、看護師、市、我々、誰に対してもどこにおいても真っすぐに、物事を一個一個解決してくださると。すごく真っすぐ、この集団接種に関して取り組んでいただいているという印象があります。

── えーと、私、三澤先生にはすごく突破力を感じるので、目標に全速力で突進していくタイプの方かなと思ったんですけど、そうでもないんですか。

岡田:私は、やり方が非常に繊細だと感じています。

桑原:目の前にある問題を解消しないまま「とりあえず」で進むことを、本当に嫌う方なのだな、とは思いますね。中ぶらりんになって、ディスカッションの間にふわっと浮いてしまった議題について、ご自身で調べて、「こうでした」ということを回覧していただくことがよくあるんです。「あの後考えたんですけど、こういうふうにした方がいいと思うんです。どう思われますか」というメールが「先生、寝てください」というような時間にも届きます。本当に、お体は大事にしていただきたいです。

── そういう意味では、意思疎通の密度も高いんですか。

桑原:密度もありますが、全幅の信頼を置いていただいているので、お互いにうそがない状態でのコミュニケーションを常に取っているんです。そこが大きい。それこそ、できること、できないことをはっきりと言うのは今でも一貫していて。

── すでに集団接種が始まっていますが、やっぱりやってみないと分からないなということってありますか。

岡田:細かな点ではたくさんあるんですけれども、現状だと、思っていたよりちゃんと対応できるので、想定していたより接種する人数を増やしていきたいと。

 そして、我々も100%慈善事業というわけではないので、「この数字を超えてしまうと、人を増やさなきゃいけないかもしれない」という話はあるわけです。
岡田:我々からしてみれば、それこそ(接種会場に派遣される)人が増えれば増えるほどお金にはなるんですけれども、そうなると今度は、コストの増加に加えて、オペレーションの複雑化、習熟度のばらつき、感染リスクや混雑といったデメリットが出てきます。メリットとデメリットは、必ず同時に提示するようにしています。

── 増やすと自治体・医師会側にはある種デメリットも生じるわけですか。

岡田:それを共有していただいた上で、それでも1日も早く接種を終わらせよう、という三澤先生の姿勢には本当に敬服しています。「私らもっと(接種数)いけるんだけど」というアピールがすごい。

桑原:はい。負荷が増えますよ、と申し上げても「全然OK、どんと来いよ」という姿勢で来てくださるので、変に気を使わなくていいというか。接種数を増やす、という大前提を共有したうえで、三澤先生は運営の我々を本当に尊重してくださるので、逆にこっちも、医療関係者の方々の考えを尊重しようという意識になりますね。

── なるほど。だから「前向きなオーバーラップ」になるんでしょうかね。

ちょっとずつお節介を焼く

桑原:当社の西がよく、重ならないマルの図を描きながらこういうことを言うんです。「これが僕の役割で、これが桑原の、これが岡田の役割で」と、誰の領域とも重ならず抜けもない、こうなっていると「これが一番いいじゃん、最小面積でムダがない形」と言われるよね、と。

── いわゆるMECEですね、抜けなく漏れなく。

桑原:でもうちの会社の社風というか文化は、むしろ重なり合い、はみ出しを大事にしようとするんです。人よりちょっと、いや、人よりというか、自分の役割よりちょっとだけはみ出すことで、仕事としては逆にムダを省いた、手戻りのないものになる。質も高くなる。

── 重なりがあったほうが、ムダな手戻りのない仕事に。

桑原:そういう考え方と、もしかしたら関連するところがあるかもしれないですね。実際の仕事がそう理想通りうまくいくものでもないし、小金井市の形が本当に理想形かどうかも本当は分かりませんが、すごくうまくいっているのは、みんながちょっとずつ、ちょっとずつおせっかいを焼くというか。

── なるほど。

桑原:という意味でいうと、まさにその考え方にのっとった形ができたのかもしれません。

── 心の小さい私からすると、人からその小さい気配りを省かれる、どころか、こっちに気配りを求められると、すごくいらっとして(笑)、お前の仕事なんか最後に回してやる、みたいな感じになるんですよね。逆にちょっと気の利いたことを仕事相手からしてもらうと「うわ、うれしい、3割増しで返すよ」みたいな感じになります。これどこかで聞いたな。そうか、これまたマツダの金井さんだ。うわー(『マツダ 心を燃やす逆転の経営』)。

桑原:小金井市でのお仕事では、どっちが先にとかいう感じでもなくて、不思議と最初からお互いを尊重して、これはあなたの仕事で、ここはお任せするところだけど、もしよければ、とオーバーラップしている。それが余計なストレスにならない、ちょうどいい関係性と距離感を保ちながらやれています。たまたま運よく、なのかもしれないですけど。
 以下、フォズベリーの岡田さんに無理をお願いしまして、職域接種の際にトラブルを避けることができそうなノウハウをいくつか教えていただきました。接種会場運営の細部にわたるものではなく、通常のマニュアルではあまり触れられていないであろう箇所についてのものです。ご担当の方のお役に立てれば幸いです。

 当然のことですが、企業によって状況が異なる点は多々あるはずですし、「これさえ守れば大丈夫」ではなく、会場運営を考えるための手がかりになれば、という意図で掲載させていただきます。ご了解ください。(Y)

集団接種会場運営のノウハウ

 職域接種のお手伝いをした経験はないので、あくまで自治体様での経験を通してですが、「安全にかつ適切に、医師・看護師の予診接種が進むことを一番の目的とする」ことを、関係者で合意しておく。これが大前提になるのは同じだと思います。

 その上で、会場の規模感を問わずに共通だろうと思われる留意点をお話しさせていただきます。まず、必要な機能は以下になります。

・予約確認 ※あればベター(後述しますが、入場対象の時間帯以外の方を受付前で止める役割を担います)
・受付待機 ※座席を用意する場合は少なくとも1回分の予約枠数が収まる必要あり
・受付 
・予診待機
・予診
・接種待機 ※予診が終わっても前の接種が終わっていない場合に備え、数人分だけでも座席があるとベター
・接種
・接種済証の発行
・経過観察 ※予約枠に対し座席数を設定する必要あり
・次回予約 ※会場内で行わない場合は設置不要
・救護室 ※ベッドが入る広さが必要、かつ、経過観察、医師(予診)の場所に近いことが望ましい
・薬剤保管充填 ※接種の場所に近いこと、そこまで他の導線と重ならない裏動線があるとベター

 各行程の所要時間ですが、我々はこのくらいで見積もっています。

1・受付……2:00-2:30(分:秒、以下同じ)
2・予診……1:00-1:30
3・接種……1:00-1:30
4・接種済証発行……1:30-2:00
5・次回予約……1:30-2:00

 1人あたりの所要時間としては、このほかに、行程間の移動時間と、経過観察時間(15分or30分)がかかります。5は会場内で行わない自治体が多いです。

スムーズに行うコツその1「受付が重要」

 接種会場でもっとも負荷を下げたいのは、予診と接種の段階です。言い換えると、「予診」「接種」に負担(イレギュラーな業務発生)を掛けないように「受付」でどこまでカバーできるか、が重要です。

 さらに言えば、その「受付」が詰まらないように、その前段階でどう工夫するか、も、とても大事です。

 具体的には以下のような対策を取っています。

■受付を行う前に、予約時間を確認するステップを設ける(会場入り口付近に設置)

 予約時間前に来た人を受付の前段階で発覚させ、会場内自体に入れない=接種会場の限られたスペースに不必要に人を入場させない、を行っています


■受付の段階で、被接種者が「接種前に相談したい」ことを聞き取っておく

 予診・接種の段階で発覚する前に、相談事項を具体化・解消しておきます。受付の横に相談コーナー(看護師による対応)を設置します。設置できない場合は医師に対して相談事項を聞き取り申し送る(付箋などで書いて渡す)などを行っています。

スムーズに行うコツその2「経過観察スペースが重要」

 接種後にアナフィラキシーなどが起きないかを確認する「経過観察」で必ず15分(通常)か30分(既往症などがあり、特に注意を要する方)の待機を要することから経過観察スペースの座席数に注意する必要があります。

 席数のマックスとしては、15分の予約枠の全人数が、予診の結果「経過観察時間30分」となり、そこに次の15分待機枠の方が来たら、となるでしょう。実際にはそのようなケースは希ですので、スペースとの見合いで経過観察席の人数が決まり、そこから無理のない接種数を算出、となると思います。

 15分、30分の方の区別をどうするか。待機場所を分ける方法も考えましたが、専用化することで利用しない時間帯が発生し無駄が生じるので断念。予診票を見て色別のカードをお渡しする方法を採っています(30分や要配慮の方のみにお渡しする方法を採らないのは「カードの渡し忘れ」か、15分の方なのかの区別が付かなくなるのを避けるためです)。

 カードは接種済証を発行する際に、接種時間と15分後、30分後の時間を書いた「経過観察時間案内用紙」と引き換えになるので、30分の方を目立たせるために、接種の際に服の肩か手の甲に10円玉サイズの赤丸シールを貼らせていただきます。


接種会場での「よくあるイレギュラー」

 先ほど触れましたが、スムーズに接種を行うにはイレギュラーの影響を最小限に抑えることが大事です。場所別に羅列します。

■入り口

・検温により37.5度以上が出た

 細かいことですが、会場内で予約の取り消しを誰かが行うのか、自治体のコールセンターに非接種者本人から電話をさせるのかなども決めています(どちらの場合も会場の中には入れません)。職域接種ではどのような対応が必要なのかを把握しておりませんので対応自体のアドバイスは控えますが、可能性として考えておくべきことかと思います。

・車いすの方など補助が必要、あるいは導線を分ける必要が生じた

・外国語のみ話せる方が来た

 いずれも、対応する人とその場合のフローを決めておく必要があります。


■受付

・予診票、接種券、身分証忘れ
・身分証の住所違い
・身分証の定義 ※顔写真なしでもよいか、など
・持病に関する質問(事務スタッフでは答えられないもの)の対応

 これは職域接種ではあまり心配はしなくていいのかもしれませんが、自治体の場合は対応が必要です。


■緊急時(アナフィラキシーの発生など)

・緊急連絡、動線など

 これについてはすこし詳しくお話しします。

 まず、緊急時の搬送先の確保。これは大前提です。
 その上で以下について配慮する必要があると考えます。

・経過観察スペースと医師、救護室の位置を近くにする

・緊急時の報告経路フローを確立、できれば訓練を行う

・緊急時の搬送経路の確保、できれば社内だけでも訓練を行う

 最後の搬送路は盲点かもしれません。パーティションの区切り方によっては、ストレッチャーが入れないことや、建物が古いとエレベーターに載らないこともあります。

 実際に集団接種会場でも、ストレッチャーは用いず担架を用意するというケースが発生しています。部屋の中に段差があり利用が困難、というケースもあります。(以上、フォズベリー 岡田陽平氏・談)
















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