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「ウイルスに複数回感染することのリスクは?:新型コロナウイルスと世界のいま(2022年3月)」

TONOZUKAです。


ウイルスに複数回感染することのリスクは?:新型コロナウイルスと世界のいま(2022年3月)


以下引用

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各国の規制が緩和される一方、オミクロン株の「BA.2」系統の感染が止まらない3月。米国では新型コロナウイルスに複数回感染した場合の重症度の変化や、ウイルスの起源に関する分析結果も発表された。これらの最新情報と共に、この1カ月の新型コロナウイルスに関する動きを振り返る。
世界各国が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う制限を解除する傾向にあるなか、オミクロン株から枝分かれした「BA.2」系統の勢いが止まらない。BA.2は感染力が強く、最初のオミクロン株よりも肺にダメージを引き起こして入院患者を増やす傾向にあり、より病原性が高いことがわかっている。

こうしたなか、中国だけはいまだ「ゼロ・コロナ戦略」を実施している。しかし、オミクロン株の感染力は通常の規制だけでは抑えきれず、3月29日の時点で1日の新規感染者数が4,400人を超えた上海では、住民2,600万人を抱えながらロックダウンに踏み切った。

まるで山火事のようにまたたく間に蔓延したオミクロン系統は変異も速く、BA.1とBA.2の遺伝子が組み合わさったと考えられるハイブリット型「XE」も英国で確認されている。XEは現在感染者数を増やし続けているBA.2よりも感染力が約10%強いと推定されるという。
オミクロン株が世界中に散らばりデルタ株から置き換わる過程では、オミクロンとデルタに同時感染することでこれらが組み合わさったとみられる変異株「デルタクロン」(「XD」と「XF」と呼ばれる変異)も報告された。これらはSARS-CoV-2の複数の変異株がひとりの人間に感染し、その両方の特徴をあわせもつ新たな変異株が生み出される可能性を示唆している。
また人間から動物へと感染し、動物集団のなかで変異を蓄積したSARS-CoV-2が人間に戻ってくる例も複数見られるようになってきた。2020年末、デンマークとオランダではウイルスが養殖ミンクから人へ感染したとしてミンクが大量に殺処分された。22年2月には香港でハムスターから人間にウイルスが感染したとして、約2,000匹が殺処分されている。また3月に発表された分析によると、カナダのオンタリオ州でウイルスがオジロジカから住民に感染した可能性が高いという。
22年3月には、中国で最初に見つかったSARS-CoV-2が研究室由来ではなく武漢の華南海鮮市場の動物由来であることを示唆する研究結果が提示された。また米国では、mRNAワクチン接種開始後6カ月間のデータの副反応および死亡者数を分析した結果も明らかになっている。
ウイルスに複数回、再感染すると何が起きるのか? 4回目のブースター接種の行方は? 新型コロナウイルスの2022年3月の動向を振り返る。

ウイルスの起源は武漢の市場なのか?
SARS-CoV-2の起源についてはさまざまな推測が飛び交っているが、このほど新しい研究結果が3つ相次いで発表された。いずれもSARS-CoV-2が武漢のウイルス研究所(中国科学院武漢病毒研究所)から流出したものではなく、武漢にある華南海鮮市場で動物から人に感染したことを示唆するものである。

ひとつめの中国科学院による研究では、生きた動物が売られていた市場の特定の屋台と、ウイルスとの陽性反応を示した環境サンプルとの関連が明らかになった。市場にいた188匹の動物と、下水道の井戸や地面、脱羽毛機、動物が入れられていた檻などの環境から採取した1,380の検体を分析したところ、73の検体からSARS-CoV-2が検出されたのである。
なお、このとき陽性反応が出たサンプルはすべて環境由来のもので動物そのものから採取されたものではなかったことから、人間がウイルスを市場にもち込んだ可能性も否定できないと論文の著者たちは考えている。それゆえ最初の感染源は中国に輸入された冷凍食品だろうというのが、このグループの主張だ。

しかし、国際研究グループによる別の研究は中国科学院の研究で使われたサンプルと遺伝子分析や地理的分析を組み合わせて別のシナリオを描いている。この研究は、19年末に華南海鮮市場にいた人々から検出された微妙に異なるふたつのSARS-CoV-2の系統と、それぞれが出現した時期を分析したものだ。その結果、新型コロナウイルスが2回に分けて異なる動物から人へと感染したことの証拠が得られたとこのグループは考えている。市場で採取された遺伝子サンプリングデータをより詳しく分析すれば、そこで売られていたどの種の動物がウイルスに感染していたか正確に特定できるかもしれないという。

さらに同じグループによる別の研究では、最も初期のヒトの症例の「震源地」を特定する地理空間分析が実施された。その結果、変異の違いがたった2カ所しかない異なる2つのSARS-CoV-2系統が、市場とつながりのあった人や市場の近くに住んでいた人のみに感染していることがわかったという。

今回の研究のなかで国際チームは、タヌキやハリネズミ、アナグマ、アカギツネ、タケネズミなどSARS-CoV-2に感染しやすい動物が販売されていた場所を初めて特定し、それらの場所と動物が入れられたケージを含む陽性環境サンプルを関連づけた。

AとBと名付けられた2つの系統は華南海鮮市場で発生し、すぐに近隣の地域に広がったと結論づけられている。Bは19年11月下旬に動物からヒトに飛び火し、それが12月10日に最初の検出例となった可能性が高い。そしてA系統はその数週間後に広まったと、研究グループは結論づけた。

いずれにせよ、2つの系統がほぼ同時に出現したことは、ほぼ同時期に2つの異なるウイルスが漏出したことが前提となる。それゆえ「研究室起源説」に疑問を呈することになるというのがグループの主張だ。

国際チームの研究者らは、「これらの分析結果は野生動物の生体取引を通じてSARS-CoV-2が出現したことを示す決定的な証拠であり、華南市場がCOVID-19のパンデミックの震源地であることを明確に示している」と結論づけている。

生死を分けるワクチン接種率
香港ではワクチン接種をためらう高齢者が大きな代償を払っている。一時期は「ゼロ・コロナ」戦略で感染者を最小限に抑えていた香港やニュージーランドでも、2月にオミクロン変異株が広がってから感染者が急増した。

しかし、大きな違いもある。ニュージーランドでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死者がパンデミック開始以来の累計で299人(3月31日時点)にとどまっていた。これに対して香港では、オミクロン株による感染拡大による死亡者数がピークを迎えた3月14日時点で、週平均1日当たり285人もの死亡者が出たのだ。

もうひとつ大きく異なる点は、高齢者のワクチン接種率だ。ニュージーランド当局によると、同国では75歳以上の住民の100%(12歳以上では96%)がワクチン接種を受けている。これに対して香港では、80歳以上の2回接種率が約30%だという(大人と3歳以上の子どもでは70%)。こうした状況からも、ワクチン接種率が生死を分ける重要な要素になっていることがうかがえる。
複数回の再感染で重症化しやすくなる可能性
査読前のある論文は、新型コロナウイルスへの再感染は回数が増すごとに重症化率が高まる可能性があると警鐘を鳴らしている。米国退役軍人健康管理局のデータを分析したこの研究によると、20年3月から22年1月までに初めて新型コロナウイルスに感染した30万8,051人のうち、入院した人は58,456人(19%)だったという。その後、最初の感染から90日以上が経過したのちに9,203人が2回目の感染、うち1,562人(17%)が入院した。さらにその後189人が3回目の感染を経験し、そのうち49人(25.9%)が入院している。

つまり、1回目と2回目の入院率はさほど変わらなかった一方、3回目の感染では入院を伴うケースが25.9%と大きく増加したのだ。なお、免疫逃避能力と感染力が高いオミクロン株が優勢になると再感染者はそれまでの8倍まで膨れ上がったという。

加えてこれらのデータは米国退役軍人健康管理局の外部で実施された検査や未検査の感染については含まれていない。このため実際の再感染者数の下限にすぎないことが強調されている。

自然感染による「集団免疫」戦略は、再感染が稀なものだという憶測のもとに成立するものだったが、研究者らは再感染が決して稀なものではないと警鐘を鳴らす。再感染者の絶対数の急激な増加を考えると、医療システムや介護者、雇用者などに相当な負担を強いる可能性があるという。

4回目のブースターの有効性
3月の研究結果では、オミクロン株用に開発された新たなワクチンが既存のものと比較してオミクロン系統の変異株には大きな効果がみられないことが明らかになった。その一方で、従来のワクチンの4回目接種は3回目と比較して劇的な感染予防効果はないものの重症化を防ぐ効果はあり、欧米では高齢者や免疫不全者に対して既存のワクチンで4回目のブースターショットが認可された。

イスラエルの研究では、4回目のブースター接種を受けた約30万人のうち、COVID-19による死亡者数は92人(0.03%)で、4回目を接種しなかった約23万人中の死亡者数は232人(0.1%)だったという。

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22年3月にオミクロン株の変異である「XD」や「XF」の出現したことで、新型コロナウイルスの複数の変異株に同時に感染した際にまれに起こる「遺伝的組み換え」により、これまでとは異なる方法でウイルスが変異を獲得し、多様化することが明らかになった。また、動物集団のなかで変異したウイルスが病原性を変化させてヒトに戻ってくる可能性も否定できない。

これはSARS-CoV-2の大幅な変異のリスクを上げるという、パンデミックの新たな段階を迎えたことを示唆している。また、感染力が尋常ではないオミクロン株が出現すると同時に、ブレイクスルー感染や再感染のリスクが格段に増加した。複数回感染することによる重症化リスクや後遺症リスクを考えると、集団免疫戦略は危険だという可能性もある。

マスク着用や換気、ソーシャルディスタンスなどは今後も新型コロナウイルスの感染対策として重要だ。欧米諸国の時期尚早な規制の解除は、のちに被害をもたらすかもしれない。

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