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「COVID-19に対する2剤目の経口抗ウイルス薬」

TONOZUKAです。


COVID-19に対する2剤目の経口抗ウイルス薬

以下引用

2022年2月10日、抗ウイルス薬のニルマトレルビル・リトナビル(商品名パキロビッドパック)が特例承認された。ニルマトレルビル(淡赤色)は1錠中150mg、リトナビル(白色~微黄白色)は1錠中100mg含有し、シート1枚に通常用法・用量の1日分(ニルマトレルビル4錠およびリトナビル2錠)がパックされている。適応はSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)による感染症、用法用量は「成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児にニルマトレルビル1回300mgおよびリトナビル1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与する」となっている。

 新型コロナウイルス感染症は、世界保健機関(WHO)ではCOVID-19と称しており、日本では感染症法で「指定感染症及び検疫法に基づく検疫感染症」に指定されている。2022年4月1日時点、全世界で累計4億人以上が罹患している。

 主な伝播様式としては、感染者から咳、くしゃみ、会話などの際に排出されるウイルスを含んだ飛沫・エアロゾルの吸入が主要感染経路と考えられている。潜伏期は1~14日間であり、曝露から5日程度で発症することが多く、発症前から感染性があり、発症から間もない時期の感染性が高いことが市中感染の原因となっている。主な症状としては、発熱、咳、咳以外の急性呼吸器症状および重篤な肺炎が報告されている。

 現在、COVID-19に対しては、感染および重症化予防の目的でワクチン(mRNA、ウイルスベクター)の接種が全世界で行われているが、治療薬に関しては多くの薬剤が開発段階であり、選択肢が限られているのが現状である。

 現在、日本でCOVID-19に対しては既存のステロイドのデキサメタゾン(デカドロンオルガドロン他)などが対症療法薬として使用されている他、COVID-19に特化したRNAポリメラーゼ阻害薬のレムデシビル(ベクルリー)が保険適用され、さらに中和抗体薬のカシリビマブ(遺伝子組換え)・イムデビマブ(遺伝子組換え)(ロナプリーブ)およびソトロビマブ(遺伝子組換え)(ゼビュディ)、2021年12月24日に日本初となる経口のRNAポリメラーゼ阻害薬のモルヌピラビル(ラゲブリオ)が特例承認されている。

 パキロビッドは、モルヌピラビルに次ぐ2番目のCOVID-19(重症化リスク因子がある軽症~中等症Ⅰ)に対する経口薬である。ニルマトレルビルは、SARS-CoV-2のメインプロテアーゼ(Mpro:3CLプロテアーゼ)を阻害し、ポリ蛋白質の切断を阻止することで、ウイルス複製を抑制する。また、リトナビルは抗ウイルス活性を示さないものの、ニルマトレルビルのチトクロームP450(CYP)3Aによる代謝を阻害し、血漿中濃度を増加させることで、体内濃度をウイルスに作用する濃度に維持する目的で併用されている。COVID-19に対する経口薬の投与対象は、モルヌピラビルが18歳以上であるのに対して、パキロビッドは体重40㎏以上の12歳以上の小児であることも特徴の1つといえる。

 日本人を含む18歳以上のCOVID-19患者を対象とした国際共同第II/III相試験(C4671005[EPIC-HR]試験)において、プラセボ群と比較して本薬の有効性および安全性が確認された。

副作用としては、味覚不全、下痢・軟便(各1%以上、5%未満)、浮動性めまい、悪心、嘔吐、消化不良、胃食道逆流性疾患、ALT上昇、AST上昇、発疹、筋肉痛(各1%未満)などであり、重大なものは肝機能障害、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)の可能性があるので十分注意する必要がある。また、特例承認時までの治験症例が極めて限られていることから医薬品リスク管理計画書(RMP)では「高血糖、糖尿病」、「出血傾向」が重要な潜在的リスクとして注意喚起が行われている。

 薬剤使用に関しては、下記の事項について事前に十分留意しておく必要がある。

●現状では、安定的な入手が可能となるまで一般流通は行われず、厚生労働省が薬剤を所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関および薬局からの依頼に基づき、無償で譲渡される。詳細は、事務連絡「新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬(パキロビッドパック)の医療機関及び薬局への配分について(別紙及び質疑応答集の修正)」を参照すること

●臨床試験における主な投与知見を踏まえ、また、最新のガイドラインを参考にCOVID-19の重症化リスク因子を有するなど、本薬の投与が必要と考えられる患者に投与すること

●臨床試験において、症状発現から6日以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータが得られていないことから、症状が発現してから速やかに投与を開始すること

●有効性、安全性、品質に係る情報が限られ、現在、引き続き情報を収集中での特例承認したものであることから、あらかじめ患者または代表者に、その旨ならびに有効性および安全性に関する情報を十分に説明し、文書による同意を得てから投与すること

●多くの薬剤と薬物相互作用があることから、服用薬を全て確認すること。また、本薬剤で治療中に新たに他の薬剤を追加する場合も注意すること。特に、リトナビルはCYP3Aの強い阻害作用、CYP1A2の中等度誘導作用、P糖蛋白(P-gp)および有機アニオントランスポーター(OATP)の阻害作用を有するので注意しなければならない。なお、併用禁忌薬を含めた「投与前チェックシート」が公開されているので参考にすること

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