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「SARS-CoV-2感染は脳の構造に悪影響を及ぼす」

TONOZUKAです。



SARS-CoV-2感染は脳の構造に悪影響を及ぼす

以下引用

英国Oxford大学のGwenaelle Douaud氏らは、UK Biobank研究に登録されており、約38カ月間隔で頭部のMRI検査を2回受けていた人の画像データを分析し、初回検査後に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染していた人と非感染者の画像を比較して、脳の構造に違いが観察されたと報告した。結果は2022年3月7日のnature誌電子版に掲載された。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化した患者では、脳神経系にも異常をもたらすことが知られている。しかし、SARS-CoV-2感染が軽症患者の脳神経にも影響を与えるかどうかは明らかではなかった。COVID-19患者の脳の画像を分析した研究のほとんどは、急性期の患者を対象としており、その患者の感染前の画像との比較は行われていなかった。

 そこで著者らは、UK Biobank研究のデータを利用して、患者がSARS-CoV-2に感染する前のMRI画像と、感染後の画像の変化を比較し、合わせて年齢・性別・人種をマッチさせたSARS-CoV-2に感染していない対照群を設けて、同じ期間のMRI画像変化を調べることにした。UK Biobank研究は、2006年から年齢40~69歳の英国在住のボランティア約50万人を登録して、短くても30年間は健康状態の追跡を継続して、様々な医学研究に役立てるデータを提供するためのプログラムだ。

 今回の研究では、脳画像の長期的な変化を調べるために、約3年間隔で2回以上MRI画像検査を受けていた人を分析対象とした。このうち401人は初回の検査後にSARS-CoV-2に感染しており、感染陽性となってから2回目の検査までの期間は中央値で141日だった。対照群はSARS-CoV-2感染歴のない人の中から、感染者と年齢・性別・人種・2回のMRI検査間隔がマッチする384人を選び出した。1回目と2回目のMRI検査の間隔は平均値で38カ月、分析対象になった785人の平均年齢は2回目の検査を受けた時点で、患者群が62.1±6.7歳、対照群が63.3±7.1歳、女性の割合は患者群が57.1%、対照群が57.3%だった。両群とも約97%が白人だった。

 UK Biobankは、T1強調画像、T2強調画像 FLAIR画像、磁化率強調画像、拡散強調画像、安静時機能的MRI画像、課題遂行中の機能的MRI画像を取得していた。著者らは、患者群と対照群の画像を比較することにより、感染者の脳に以下のような変化が生じていることを見いだした。

 患者群では、対照群に比べ、左側眼窩前頭皮質と海馬傍回の灰白質厚または信号強度がより大きく低下しており、一次嗅皮質と機能的に結合している領域の組織のダメージを示すマーカーがより大きく変化していた。主に辺縁系の萎縮が大きく、脳全体の体積も減少していた。また、脳脊髄液量は患者群で増加していた。

 患者群では画像所見以外でも、2回目のMRI検査までの期間の特定の認知機能検査のスコアの低下が、対照群に比べ有意に大きかった。患者群に認められたMRI画像と認知機能の変化への影響は、入院を要した15人を除外して分析しても、引き続き有意だった。

 これらの影響が、SARS-CoV-2感染後にどのくらい続くのか、経時的に回復するのかについては、今後さらに追跡して明らかにする必要があると著者らは述べている。この研究はWellcome Trustなどの支援を受けている。

 原題は「SARS-CoV-2 is associated with changes in brain structure in UK Biobank」、概要はnature誌のウェブサイトで閲覧できる。




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