見出し画像

「コロナ禍を機に大衆化、「シベリア鉄道」の大改革」

TONOZUKAです。


コロナ禍を機に大衆化、「シベリア鉄道」の大改革


以下引用

世界で最長の鉄道路線を誇るシベリア鉄道では新型コロナウイルスの感染拡大の禍中に大改革を進めている。鉄道作家の宮脇俊三氏が乗車したウラジオストクーモスクワ間を結ぶ「ロシア号」も例外ではない。ロシアへの渡航が厳しい中で、シベリア鉄道はどのような改革を進めているのだろうか。


シャワー付きの車両を導入

シベリア鉄道は極東のウラジオストクと首都モスクワを結ぶ世界最長となる全長約9300kmの路線である。メインは東西間の貨物輸送だが、長距離列車を中心に旅客営業にも力を入れている。

シベリア鉄道で最も有名な列車がウラジオストクーモスクワ間を走る「ロシア号」だ。ロシア号はウラジオストクからモスクワを7泊8日で走破する。ほかにもウラジオストクーハバロフスク間のブランド列車「オケアン号」やウラジオストクーオムスク間の007/008列車など多数の区間優等列車が運行されている。なお長距離列車の運営はロシア鉄道の子会社である連邦旅客会社が担う。

ロシア号のダイヤは2020年7月のダイヤ改正により性格が大きく変わった。ダイヤ改正前は“格上”の列車を意味する「ブランド列車」であり、運行を開始した1960年代からシベリア鉄道を代表する列車であった。改正後はロシア号という列車名は残ったが、ブランド列車からは外され“降格”となった。2021年12月現在、ロシア鉄道ウェブサイトではロシア号にブランド列車の表記は見られない。列車ダイヤも大きく変わり、停車駅は倍以上に増加。運行日は週3日から毎日運行となった。
一般的にロシアではブランド列車の運賃は高く設定されている。たとえばモスクワからサンクトペテルブルクまで(12月21日調査 1月24日発)、一般優等列車であれば2等寝台車「クペー」は約2200ルーブル(約3300円)だが、ブランド列車になると3000ルーブル(約4500円)以上にもなる。ブランド列車から外し、停車駅を増やすことにより以前よりも乗車しやすい列車になった。言い換えればロシア号の大衆化である。
ダイヤ面では少し寂しくなったロシア号だが、特筆に値するのは2019年デビューの新型客車が投入されたことだ。従来は各車両に車掌室があったが、新型客車では2両分を1つの車掌室で管理することが可能になった。車掌との交流はシベリア鉄道旅行の醍醐味の一つであり、車掌との交流機会が減ることになるが、車掌室が置かれていたスペースに自動販売機などが設置され、旅客サービスは大幅に向上した。


シャワーの設置も見逃せないポイントだ。ロシア鉄道のウェブサイトでロシア号の車内見取り図を確認すると、ほとんどの車両にシャワーが設置されていることが確認できる。筆者がシベリア鉄道に乗車した2018年時点は1等寝台車「エスヴェー」にしかシャワー室がなく、150ルーブル(約225円)を車掌に払って利用した。しかし栓が上部にあり、身長175cmの筆者であっても背伸びをする必要があり、お世辞にも使い勝手のよいものではなかった。

ロシア人がアップしているユーチューブ動画を見る限り、新型客車のシャワー室はホテルと遜色なく、以前よりは使い勝手がよいと推測できる。もっともシャワー室は各車両に1室のみなので、手短に済ませる必要があるだろう。

もちろん寝台内も改善されている。多数のコンセントや金庫が設置され、現代のニーズに合った車内となった。またWi-Fiも整備され、車内でのインターネット利用も可能だという。
1等寝台車の減少が続く

シベリア鉄道における長距離列車のクラスは大きく3クラスに分類できる。

最上クラスは1等寝台車エスヴェーだ。1等寝台車は2人用個室になる。2等寝台車は4人用個室クペーとなり、エスヴェーを4人用にした感じの部屋だ。筆者はロシアの寝台車に乗るたびにクペーに乗車するが、多くのビジネスマンに愛用されているように感じる。

3等寝台車「プラッツカルト」はコンパートメントになっていない開放型寝台車だが、日本のブルートレインで見られた客車型B寝台とはレイアウトが異なる。このほかに特等寝台車「リュクス」があるが、連結する列車はごく一部に限られる。
さて近年、ロシア鉄道では1等寝台車エスヴェーが大幅に減少している。ロシア号でも改正前はエスヴェーが連結されていたが、新型客車導入後はクペー、プラッツカルトのみとなった。
2020年末におけるエスヴェー車両の平均車齢は14.6年とのこと。2016年には約870両あったが、2020年末には約500両に減少したという。また多くのエスヴェーは寝台内のコンセントも少なく、自動販売機は存在しない。少しずつ現代のニーズから取り残されているのが実態のようだ。それでいてエスヴェーの料金はクペーの2倍以上なので、利用者にとってコストパフォーマンスは悪いと言わざるをえない。

2021年8月にはロシアのS7航空グループが中央ロシアを拠点とする新LCC会社「シトラス」の設立を発表。2022年7月の就航を目指し、中央ロシアの都市を結ぶ航路を設定するという。シトラス社がシベリア鉄道にどのような影響をもたらすかは不明だが、少なくともコストパフォーマンスが悪い車両を放置する余裕はシベリア鉄道にはなさそうだ。

またシベリア鉄道を利用するビジネスマンは空港がある街からない街への移動が多く、1泊2日などの短距離利用者がほとんどだ。このような背景を踏まえて考えるとエスヴェーの需要はますます減少することが予想される。
ウラジオストク発ウクライナ行き列車が存在した

ところで2月22日にロシアはウクライナ東部にある「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を国家承認し、ロシアとウクライナの対立は新たな局面を迎えている。ここでは簡単にシベリア鉄道とウクライナの関係について触れておきたい。

ロシア人とウクライナ人は共に東スラヴ語群に属し、切っても切れない関係にある。現にロシアにも多くのウクライナ人がおり、ウクライナの首都キエフではロシア語をよく耳にした。

このようなロシアとウクライナの関係はシベリア鉄道のダイヤにも反映されていた。1984年ソ連時刻表を見るとウラジオストクーウクライナ・ハリコフ間の列車が設定されていた。全行程を乗るには1週間以上かかり、日本人の目から見ると「さすがに完乗する人はいないだろう」と思うかもしれない。


実は需要は存在したのだ。19世紀から20世紀初めにかけて多くのウクライナ人が極東ロシアに移住し、現在でもウラジオストクやハバロフスクではウクライナ料理店が目につく。キエフ在住のウクライナ人の友人によると、1990年代に極東ロシアに住む親戚がシベリア鉄道を使ってキエフまで訪ねてきたことがあるという。

ソ連崩壊後もハリコフ行き列車は運行され、ウラジオストク駅には青色に黄帯のウクライナ鉄道の客車が乗り入れていた。残念ながら、この列車はコロナ禍以前から運行を休止している。

いずれにせよ、ロシアとウクライナの対立が早期に収束することを願いたいものだ。



宜しければサポートお願い致します。いただいたサポートはポータルサイトの運営費用として大事に使わせていただきます。 https://music-online.kingstone-project.jp/