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「SARS-CoV-2ワクチン接種開始後も感染対策を緩めてはならない   ワクチン接種者が増えても身体的距離の維持やマスクの着用は重症者を減らす」

   
2021/06/29



TONOZUKAです。


SARS-CoV-2ワクチン接種開始後も感染対策を緩めてはならない

ワクチン接種者が増えても身体的距離の維持やマスクの着用は重症者を減らす

以下引用

米国North Carolina大学Chapel Hill校のMehul D. Patel氏らは、SARS-CoV-2ワクチン接種の推進と、身体的距離の維持やマスクの着用といった非薬物的な介入(NPI)を併用することの重要性を検討するために、ノースカロライナ州の住民をモデルにしてワクチンの有効性とカバー率を仮定したシミュレーションを行い、ワクチンが有効性が50%でも90%でも、NPIをやめてしまうと新規感染者数、入院患者数、死亡者数が増加することが予想されると報告した。結果は2021年6月1日のJAMA Network Open誌電子版に掲載された。

 SARS-CoV-2ワクチンはCOVID-19による入院や死亡のリスクを減らすことが期待されているが、ワクチンの大規模製造と流通の難しさもあり、流行を終息させるという目標を達成することは容易ではない。ゆえに、地域住民に対するワクチン接種が進む間に、身体的距離の維持やマスクの着用といったNPIの継続がどれほど重要かを把握する必要がある。そこで著者らは、ワクチンの有効性と地域住民のカバー率を仮定した複数のシナリオをによるシミュレーションを行い、NPIを継続した場合とやめてしまった場合のCOVID-19入院患者数や死亡者数に与える影響を検討することにした

 地域のモデルとして人口1054万人のノースカロライナ州を選んだ。人口動態統計から、65歳以上の住民が18%、アフリカ系米国人の割合が20%、ヒスパニックやラテン系住民が7%、貧困レベルにある住民が19%といった特徴を持つためだ。SARS-CoV-2感染モデルは、SEIR(Susceptible-Exposed-Infected-Recovered)の枠組みを用いた。感染は、家庭内、職場、学校、コミュニティーで日常的に起こると仮定した。基本再生産数R0=2.4とし、年代特異的な入院率と死亡率をパラメーターに使用した。

 シミュレーションの時期は、2020年3月24日~2021年9月23日までの18カ月間とした。ワクチン接種が始まった時点で既に住民の10%が感染していることとし、20歳以上の成人に対して6カ月間にわたって接種を継続すると仮定した。接種期間が終了した時点のカバー率は、住民の25%、50%、75%に達した場合を想定した。ワクチンの有効性は臨床試験で報告された90%と、FDAが承認のために最小限必要とする50%の場合を検討することにした。また、参考までにワクチンを接種しなかった場合のシナリオも追加した

 NPI(移動制限、学校閉鎖、マスクの着用など)については、接種期間中も、接種開始前と同レベルを維持し、さらに同じ状態を21年9月23日まで継続した場合と、接種開始から3カ月が過ぎた時点で解除した場合について検討した。非エッセンシャルワーカーの感染者数の減少には、実際に同州でステイホーム指示が出ていた2020年3月24日から5月8日までのデータを反映させた。

 主要評価項目は、新規感染者(無症候性を含む)、入院、死亡とした。それぞれの項目はシミュレーション期間中の累積発症率と最終日までの人数を推定した。

 最も好ましくないシナリオ(ワクチンの有効性が50%で住民のカバー率は25%)で、NPIを解除した場合には、18カ月後の新規感染者数は223万1134人(標準偏差11万7867人)になり、住民の累積感染率は30.8%(0.2%)になると予想された。一方で、同じシナリオでもNPIを継続した場合には、新規感染者は79万9949人(6万279人)になり、累積感染率は17.3%(0.2%)になると推定された。

 一方、最良のシナリオ(有効性が90%でカバー率は75%)では、NPIを解除した場合、新規感染者は52万7409人(4万637人)で累積感染率は14.7%(0.2%)、NPIを維持していた場合は、45万575人(3万2716人)で累積感染率は13.8%(0.2%)になると予想された。

 ちなみにNPIを継続した場合も解除した場合も、「有効性90%カバー率25%」のシナリオと「有効性50%カバー率75%」のシナリオを比較すると、感染者数も累積感染率も「有効性50%カバー率75%」の方が少ないことから、ワクチンの有効性よりも、住民のカバー率を上げる方が流行の抑制には効果的なことが示唆された。

 COVID-19による入院と死亡についての分析の結果も、同様の傾向を示した。「有効性50%カバー率25%」の最も好ましくないシナリオで比較すると、NPIを解除した場合の入院患者数は11万6060人(1318人)、10万人当たりの入院率1106、死者数は1万1152人、10万人当たりの死亡率106.3となった。しかしNPIを継続した場合は、入院患者数6万5632人、10万人当たりの入院率626、死者数4465人、10万人当たりの死亡率42.6だった。

 「有効性90%カバー率は75%」の最良のシナリオでも、NPIを継続した方が入院患者数も死者数も少なかったが、最悪のシナリオに比べるとNPIの有無による差は小さく、状況が好ましくないほど、NPIを持続する影響が大きくなることが示唆された。

 次に、1日当たりの新規感染者数に与えるNPIの継続または解除の影響を、ワクチンの効果とカバー率を変動させたシナリオごとに検討した。接種開始から3カ月後にNPIを解除すると新規感染者数は急増し、第2のピークを形成した。「有効性50%カバー率25%」の最も好ましくないシナリオの場合、第2のピークは368日目で、1日当たりの新規感染者数は1万6335人に達した。

 これらの結果から著者らは、ワクチン接種を拡大している途中でNPIを解除してしまうと、感染者数、入院患者数、死者数が著しく増加することが示唆された。そのため、感染を再拡大させることなくパンデミック前の日常生活を再開するには、NPIを継続しながらワクチンカバー率を高める必要があると結論している。この研究は米国NIHなどの支援を受けている。

 原題は「Association of Simulated COVID-19 Vaccination and Nonpharmaceutical Interventions With Infections, Hospitalizations, and Mortality」、概要はJAMA Network Open誌のウェブサイトで閲覧できる。





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