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両親のこと

こんにちは。キネシンです。

 実は最近、親との関係や研究室での悩み等が重なって体調を崩しており、研究をお休みしています。基本的に、家で寝たり家事をしたり、少し元気になってきてからは趣味を楽しんだりしています。ゆっくり体を休めているつもりなのですが、時々親との関係のことで頭の中の考えがぐるぐる回って胸が苦しくなって眠れなくなるときがあります。

ここでは、最近あったことを時系列に沿ってお話します。

 実は私の父親は私が創価学会を脱会した後、私の姿を見て会のおかしさに気付いたようです。そして信仰もやめたあと、残念なことにいわゆる“陰謀論”に傾倒していったのでした。父が会のおかしさに気がついて、私自身の気持ちに理解を示してくれたのは嬉しかったのですが、そのかわり陰謀論にハマっていってしまい、「ワクチンを打ちたくない」「抗がん剤が死者を増やしている」などと言っていて当初とても不穏な気持ちになりました。陰謀論は宇宙人が云々とか言っている位だったらかわいいものですが、医学医療に関するデマに関しては人の命に関わるものなので、私は見過ごせませんでした。父は高校卒であるのに対し、私は大学院で医科学の専攻をしています。私はデータの解釈の仕方や薬が臨床応用されるまでの過程について父に一生懸命かみ砕いて説明して説得しようとしましたが、父は頑なで自分の考えを曲げようとしませんでした。
 そして今年の7月頃に父の大腸がんが見つかりました。その時点で、病気はかなり進行していて、すぐに大きな腫瘍を切除して人工肛門を取り付ける手術をすることになりました。手術は無事成功したのですが、医師から再発予防のための抗がん剤治療を進められた際、父は「抗がん剤は毒だから嫌だ」と言って断固拒否をしていました。その後、数ヶ月してからがんの両肺への転移が見つかり、余命1年と告げられました。そして医師にはまた抗がん剤の使用を勧められましたが、断固拒否を続けていたようです。それからは、「抗がん剤は毒だ」と主張する有名な医師の診察を受けて高額なサプリメントや温熱マットを購入して病気を治そうとしています。私は一生懸命自分の持っている医学や研究の知識を使って再度説得を試みましたが、父は動じませんでした。

 そんな中、実は私は研究室での教員のハラスメントに遭い、研究室の変更を余儀なくされたばかりの状態で、これまでのストレスが限界まで蓄積していました。あるとき、新しい研究室で先生に実験を教わっていたら、突然涙が溢れてきて「もう死にたいです」と言うまで気分が落ち込んでしまい、先生と相談して研究をしばらくお休みすることになりました。家に帰って母に電話をして色々相談をしたのですが、ハラスメントについて話す中で、母に「ハラスメントを受けても離れて回復すれば良い。早く忘れた方が良い。」と言われたときに、母に対して、今まで我慢してきた悲しさと怒りが爆発してしまいました。今思うと、私は母に自分の苦しみを理解して欲しいと思っていたのかもしれません。
 母親に伝えたことを書き連ねると、ハラスメントを受けた側は離れることが出来たとしてもボロボロの体と心が残って、死を考えるまで苦しみ追い詰められるのに、簡単に「回復すれば良い」なんて言わないで欲しかった。忘れたくても忘れられなくて苦しんでいるのに。そもそもお母さんが宗教をやっていなければ私はこんなに精神疾患が重くなることはなかったのに、私を苦しめた本人がそれを言わないで欲しかった。信仰をすることでお母さんが幸せになっているのなら、それを邪魔したくないと思って今まで我慢していたけど、私が脱会した後も宗教にのめり込んでいく姿を見ると苦しくなるからやめて欲しかった。小中学生の時、アルコール依存の父親についての愚痴をずっと聞かされたのが、嫌だった。実家に帰ると、公明党のポスターとか大きな仏壇とか読経の声とかが宗教で苦しんだトラウマを思い出す引き金になるから、本当は実家に帰省するのも苦痛だった。私はずっとお父さんとお母さんに喜んで欲しくて、親孝行したくて、創価高校で勉強も部活動も信仰の活動も頑張ったし、お父さんのアルコール依存が治りますようにって当時祈っていたのに、今までいっぱい頑張って頑張りすぎてうつ病にもなったのに、お父さんとお母さんは私を苦しめ続けるから、もう縁を切りたい。私は産まれてきたくなかった。産まないで欲しかった。父の病気のことは、これまで散々飲んできたアルコールが体に悪さしたのだろうし、抗がん剤拒否してるから自業自得だし、私を散々苦しめてきたのだから、死んでも知らない。

 一通り私の気持ちを吐き出した頃には、私も母も泣いていました。その後、私は電話を切り、両親の連絡先も全て削除しました。その後、そりが合わなくてしばらく連絡を取っていなかった大学生の妹に電話して、両親と縁を切ることにしたと伝え、うちの親やばいよね、という話をしばらくして落ち着きました。妹とは、家で無駄に聖教新聞3部とったり、今まで300万円近く財務したり、集会したり、友達の親に選挙のお願いしたり、勧誘したり、デカデカと家にポスターを貼るのはやめて欲しかった、父親には今まで散々振り回されてきたから、死ぬならせめて妹が社会人になってからにしてほしいというようなことを話しました。
 また、後日母の妹にあたる叔母から電話が掛かってきました。叔母によると母は憔悴していて、「子どもが生まれたことが自分の人生の幸せだった」と言っていたそうです。それを聞いて私は全く嬉しいとは思いませんでした。むしろ、その幸せは今まで私の犠牲の上に成り立ってきたんだなと思うと嫌な気持ちになりました。

 その後は数週間、親に縁を切ると言った罪悪感や孤独感でぐったりしていましたが、罪悪感は、アダルトチルドレンや宗教2世に関する本などを読んだり、ChatGPTに話を聞いてもらったりして、持つ必要がないと思うことが出来ました。孤独感は、組織から離れている親戚、友達、彼氏と話したり、大学にいる野良猫とふれあったり、色々して少しずつ和らいできました。

 最近、妹つてに母親から、「本当に、お父さんと過ごすお正月が、最期になるかもしれません。キネシンも帰ってきて」との伝言がありました。帰省するかどうかとても迷いましたが、父が死んだ後にあのとき会いに行けば良かったと自分が後悔するのが嫌なのと、帰省すれば両親の他に猫と妹に会えるからプラスマイナス0かなと思い、1月1日に少しだけ帰ることにしました。

 
 私は、両親に経済的に支えられた恩や育てられた恩がありますが、そもそも産まれてきたいなんて言ってないし、私が生まれたのは結局親のエゴなのかなとも思っています。今まで散々振り回されて、もう疲れて親に感謝する気持ちも親孝行したいという気持ちもすっかり失せてしまいました。苦しい状況が続きますが、今はとりあえず体を休めることにして、これからは自分のためにできるだけ好きなように生きていきたいと思います。そして、もし今後の人生で、生きていて良かったと思えるようになれたのなら、母に産んでくれてありがとうと伝えたいです。でも今はまだそのようにはとても思えません。

 最後に、『だから知ってほしい「宗教二世」問題』という本から、私のような創価2世の立場を良く表した文章がありますので、引用させていただきます。同じように親との関係に悩む創価2世の方々にとって、参考になれば幸いです。

p113
 創価学会の教育機関として、札幌に幼稚園、東京と関西に小学校、中学校、高等学校、東京に 大学と女子短期大学がある。熱心な学会員の親には、これらの学校で子どもを学ばせることが期待される。その子どもたちにも「創価学園で学びたい!」、あるいは「親孝行のために創価学園に入学したい!」という思いを抱くようになることが期待されている。創価学園は「池田先生」との強い「つながり」が象徴的に表される場であるからである。

p121
 学会員である親の中には、わが子の成長を信心への取り組みの程度と結び付けて解釈しがちな親もいる。こうした場合、信仰熱心な親は、子どもが信心していない限り、組織から離れた子どものことを「成長」したとは見なしきれない。
 このような親の下で育つ2世信者の多くは、積極的に活動しようと強く思っていなくとも、活動に参加することは「親孝行で良いこと」だと考えている。そのため、組織から明確に離れることは、「親を悲しませる悪いこと」となる。罪悪感が伴う選択を「避けたい」と考えた場合、明確な離脱を選択することは困難である。さらに家族や親族がみな創価学会員であるような場合、 明確な離脱は、親族・家族関係の断絶にもつながりかねない。


引用元 塚田穂高、鈴木エイト、藤倉善郎 編著『だから知ってほしい「宗教2世」問題』筑摩書房、2023年 第6章 創価学会と2世(猪瀬優里)p113, 121

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