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読書の一番の効果は、もっと読書したくなること~他人の声を聞くこと・受け入れる練習にも通じる  

 先日、文化庁から「国語に関する世論調査」結果が公表されました。
 その中の読書(電子書籍を含む)の状況についての調査で、次の事が分かりました。

・1か月に1冊も本を読まない(0冊)人は62,6%(6割越え)

 ただ、1冊も読まない人に、SNSやインターネット記事など、本以外の活字を読む頻度を尋ねた調査では、
 
・ほぼ毎日読む (75,3%)
 
となり、単純に「活字離れが進んでいる」ともいえない状況がうかがわれます。また、全国学校図書館協議会が毎年行っている「学校読書調査」(2203年)によると、1カ月に読んだ本の平均冊数は
 
・小学生(4~6年) 12,6冊
・中学生        5,5冊
・高校生        1,9冊
 
と、

特に小・中学生は、過去の調査と比べても増加傾向にあります。

 こうしてみると(もちろん、本の種類や内容、分厚さは違いますが)、子供達は大人よりも本をたくさん読んでいることが分かります。
 
 では、どうして増加傾向にあるのでしょうか?

1 「朝の読書」運動が浸透した

 1988年に千葉県の女子高で提唱されてから、全国の学校に広がったと言われています。活動内容自体は、いたってシンプル。
・登校後から朝の会(ST)が始まるまでの約10分間を読む時間に設定。
・教室のみんなが、同じ時間に同じ条件で読む。
・自分が選んだ好きな本を読む
・ただ読むだけ。感想文や記録などは求められない。
 
 実際、この朝読書が定着すると、

「読書好きが増えた」
「気持ちを落ち着かせることができる」
「読書習慣が身に付く」

 
などのメリットがあったそうです。
 
 何でも、やってみようという時は、「楽しい」「好き」が入り口になります。下手に、感想文を書くとか「この本を読みましょう」などと課題がくっついてくると、せっかくの読もうという意欲が失われてしまいます。本を読む楽しさを覚えたら、周りがとやかく言わなくても、次の本を手にするということかもしれません。

2 読み聞かせ、ビブリオバトルの取り組み

 私自身は、近所の市立図書館をよく利用します。地域によって違うとは思いますが、最近の図書館では、ブックトーク、紙芝居、「●●さんの講演会」などの「イベント」がかなり行われています。
 その中で定番なのが「本の読み聞かせ」です。自分で読むのと本を読んでもらうのとでは違った味わいがありますし、普段手にしないような本の紹介があると、自分でも読んでみたくなります。

 ビブリオバトルは、

「お気に入りの本の魅力を言い合う書評合戦」

のことで、一種のゲーム感覚で本の紹介を行えます。

 自分に票が入るには、やはり読んだ本の事を詳しく知って、その魅力を面白く、楽しく伝える必要があるので、より、本を詳しく読もうとします。また、たくさん本を読んで、自分が好きな本、紹介したい本と巡り会う必要があります。

 ただ読むだけではなく、読んだ後に「紹介する」「伝える」という活動が、さらに、本との交流、結びつきを強くしているのかもしれません。

3 情報機器から距離を置く環境

 大人が本を読まなくなった一つの原因は、

「スマホなどの情報機器によって本を読む時間が奪われる」
「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」

等です。
 その点、小中学校の多くでは、教室にスマホを持ってくることはないことがほとんどでしょうし、一人一台端末が導入されたとはいえ、例えば、休み時間中の取り扱いなど、学校ごとに「使い方のルール」が決められ、ある意味、情報機器から距離を置く環境が整っていると思います。
 
子供達も休み時間中に、外で遊ぶ子もいるでしょうが、雨の時など、外で遊べない時は本を読む機会も多いのではないかと思います。
 
 本を読むことには、思考力の育成や人格形成に資するなど、さまざまな数多くのメリットがあります。
 
 最近、私が感じているのは、

読書は「他人の声を聞くこと」だということです。

 ネット検索で情報収集できる時代ですが、ネットの情報は、「検索する私」(の見方、考え方)に影響された「ワード」ばかりを探し、答えを得ることになります。ある意味、ずっと「偏る」情報ばかりが集まってくることになります。別の言い方をすれば、自分好みの情報ばかりになります。
 
 その点、本は違います。
 1冊まるまるすべて、自分好みの、自分が求めた内容が書かれていることはほぼありません。
 
 時に、読んでみて「外れだった~」と思える内容であったりもします。
 しかし、そういう、

「自分と離れた遠い情報」に接することが思わぬヒントになったり、自分を見つめるきっかけになったり、意外と大事だったりもします。

 そして、そういう、一見自分には関係なさそうと思った内容を読んでいくことは、今まで自分が考えもしなかった、あるいは想像もしなかった他者の声を聞くことにもつながり、「読書=他人の声を聞くこと」によって、「受け入れる」練習になっていたりもします。

 なので、たまに、「日本は、不寛容社会になって来た」と言われる時がありますが、ひょっとしたら読書離れと関係があるのかもしれません。
  
 
 最後に、読書離れが進むのは、「本嫌いな人が増えたのではなくて、本が身近にない人が増えた」ということかもしれません。

本を読めば読むほど分かるのは、もっと読む本があるということ。
読書の一番の効果は、もっと読書したくなることですね。きっと.。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです
 
 

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