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夏目漱石「草枕」から ~ クリエイターの存在意義。人の心を豊かにするからこそ尊い。    

山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。
情に掉させば流される。
意地を通せば窮屈だ。 
とかくに人の世は住みにくい。

夏目漱石の小説「草枕」の冒頭部分です。

「理性や知恵だけで割り切ってふるまっていると、他人と摩擦を生じてぶつかる。
 かといって、他人の感情や顔色ばかりうかがっていると、騙されたり、ビクビクしたりで困ったことになる。
 それじゃあ、ということで、「自分は自分らしく生きよう」とすると、それこそ、ヒンシュクをかったり、さらに周りの人ととぶつかったりで思うようにいかない。窮屈な想いばかりする」と言った意味でしょうか。
 
 ここまでの文は、有名で、共感も得られて、よく知られています。
 ですが、その続きもなかなか考えさせられる、かっこいい文章が続きます。

住みにくさが高じると、安いところへ引き越したくなる。どこへ越してみても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画ができる。
・・・・
住みにくい所をどれほどか、くつろげて、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職ができて、ここに画家と言う使命が降る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするがゆえに尊い。

 芸術(家)の肯定ともいえます。
 そして、クリエイターの存在意義みたいなことを書いているとも言えます。
 
生きていく中で、自分らしく生きようとする時、周り(世の中)とのズレで悩む時があります。
 ズレから生じる心のモヤモヤや叫びを、そのままぶつけてしまうと迷惑をかけることになったり、周りとの関係を断ち切ってしまったり、それこそ自分を追い込んで苦しくなります。
 そんな時、

心の中のものを外に表現する~書き出す、絵にする、音楽にかえる・・・ことで、自分を保って行けます。表現(クリエイト)は、自分の健康にとっても必要なものだとも言えます。

 そして、自分の心を深く深く探究し、つかんだものを「詩」「文学」「絵」「彫刻」・・・などの形にできた時、きっとそれを見たり読んだりした多くの人の共感を得られ、「芸術作品」となるのではないかと思いました。
 
 共感と言う意味では、世の中の有名な芸術家は、世の多くの人~時代も世代も性別も超えて~にささるメッセージを送れた人だとは思います。

 でも、芸術家だけが表現者(クリエーター)ではないともいえます。

 このNOTEのように、その「作品」が、誰か(読者)にとどけば、立派な芸術作品。
 夏目漱石の言葉でいえば、「人の世を長閑にし、人の心を豊かにした」尊いものとも言えると思います。
 そして、

そうやって表現していく限り、自分が毎日経験すること、世の中への違和感は、たとえ、ネガティブなものだったとしても、表現(創造)のタネになります。

 そして、

クリエイティブな方向に使っていけたら、少しは、ネガティブな経験や思いも消化・昇華していけるかなあと思っています。

 
ここまで、お付き合いいただき、ありがとうございます。
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです。 

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