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秘密の薔薇の園(創作童話)

秘密の薔薇の園(創作童話)

時計台の下で、彼と彼女は出逢いました。
まだ、若い2人でした。
午後4時になりました。
彼は、彼女の手を取って、走り出しました。
「どこへ行くの?」
「特別な場所。まだ、間に合うかも」
若い2人は、楽しそうに、一緒に走りました。
そして、彼女が知らない薔薇園に到着しました。
「ここ、今日で閉園するんだ」

彼は、彼女の手を握り、再び走り出しました。
薔薇を愛でる暇もなく、2人は薔薇の記念館に入りま

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ケムタの憂い

ケムタの憂い

毛虫のケムタが卵から孵化したのは、葉っぱの上だった。
生まれた頃は、たくさんの兄弟と葉っぱを一緒に食べていた。
しかし、兄弟たちは好む葉っぱが違うみたいで、
それぞれ、違う道を歩みだし、みんなバラバラになっていった。
ケムタは親の顔を知らない。
お父さんもお母さんも、ケムタが生まれた時には居なかった。
ケムタの友達は、葉っぱの様な緑色である。
葉っぱと同じ色にするのは、外敵に襲われない様にする為ら

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電灯さんと蛾のお嬢さん(創作童話)

電灯さんと蛾のお嬢さん(創作童話)

とある森の奥にある、秘密の小屋にて。

私は、狂った科学者だか、芸術家だかに作られた、意思を持った電灯です。
身は人と同じ形をしていますが、全身電灯で出来ています。
夜は暗いので、コンセントを差し込んで、自分の身体を光らせます。
することもないので、小屋の中にある本を読んで孤独を癒しています。
ある日の事、こんこん、と、音をさせて、ドアの硝子越しに何か黒い影が現れました。
私は、気になって、ドアを

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不思議な生き物

不思議な生き物

ある日、私は不思議な雑貨店を見かけた。
店はそれほど広くも無いのだが、店内の扱う商品が、珍しい物ばかりなのだ。
ほとんど見た事も無い商品が並んでいる。
その中で、目を引いたのが、小さな缶詰である。
見ると、[烏賊の踊り食い]と書いてある。

何だろう?踊り食いって!
生きたまま食べるのだろうか?
私は、興味を持ってその店の店員に聞いてみた。
店員はこの缶詰の事は余り知らないみたいで、店主を呼びに行

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すじ金入りの嫉妬人形(創作童話)

すじ金入りの嫉妬人形(創作童話)

あるところに、男がいました。
男は、人生において、女の人から嫉妬されたことが一度もありませんでした。
男と付き合う人はみんな口を揃えて言いました。
「あなたは良い人だから、安心するわ」
男は、女の人から嫉妬されてみたかったのです。
そんな男も、いい年になり、身を固めることにしました。
結婚して3年目。
男は、だんだん、結婚生活に飽きてきました。
奥さんは、安心しきって、嫉妬なんて、考えたこともない

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