自分の書いた短編小説を反省する(文章表現の添削編)
前回の記事の続きです。
以下の短編小説の「日本語」や「文章表現」の直すべき箇所を自己添削しいていきます。内容そのものの気になる点は前回書いたので、内容や構成自体を変えることはせず、あくまで部分部分の表現にのみ突っ込んでいきます。
ちなみにもう一度言いますが、↑の本編記事のほうには一切手を加えません。今後新たな作品をUPした時に過去との変化を比較したい為です。
1.ここから先の読み方
1.引用機能(こんな感じ)にて本編の気になる部分を引用し、直すべきと思う箇所を太字にしている。
2.その下に通常表示にて、太字に関するコメントや正しい表現を書いている。
ちなみに、みょー様のこちらの記事に文章表現において重要な事が書かれてあります。この内容も意識しながら添削していきます。
前回から悪い点ばかり書いており、何だか悔しくなってきたので、個人的にこだわった部分もコメントしていきます。まあどうせ大したことは書いていません。
2.では添削スタート
夏休みの目標は強制的に全員「歌の練習」で統一させポイントを稼ごうとしている。全て松本の独断で決まったことだ。合唱コンクールの優勝というたった一つの目標の為に。
早速「目標」の重複が気になる。後者の「目標」を消すには【合唱コンクールで優勝する為に。】かな……
指揮者にはパフォーマンス力のみならず、伴奏者との密なコミュニケーション、そして譜面から作曲者の意図を汲み取り、歌唱者へ歌い方を指導することまで求められた。これも音楽のおの字も知らない松本がネットで調べただけの情報で決めた作戦だ。
「ネットで調べた」という表現が何となく気に入らないが、「音楽のおの字も知らない」は松本先生の素性を表すのに必要。そこを残すと【音楽のおの字も知らないくせに無理難題を要求する松本。】になるのか? 少し違う気がする。
カーテンを揺らすそよ風の細やかな音と共に聞こえる沢井さんの弾き語り。課題曲の『大切なもの』をここまで美しい音色で聴いた記憶は無い。ピアノでは彼女に敵わないと悟った瞬間だった。
私の大の苦手な情景描写である。詳しくは後述するが、太字の部分は考えまくって何とか捻り出している。カーテンを揺らす風の動画を探してどんな音か聞いてみたりもしている。
その後は休む間もなく音楽室で「あーあーあー」とひたすら発生し続けること30分。ようやく課題曲の練習が始まった。
これだとジャージのまま発生練習することになってしまう。画的には音楽室のシーンは制服にしたいので、制服に着替えてから音楽室に行ったことにする為に【休む間もなく】は削除すべき。
25人もの生徒の前で話すのはやはり緊張する。「よく分からない」「ハッキリしゃべろ」と野次が飛ぶ。
後半で生徒数が25人だと明かしているので、自分を除けば【24人】が正解。あるいは【25人の生徒と担任】か?
「まあ皆が滝口君みたいに頭良いわけじゃないから、まずは先生の言うとおりに歌ってみようよ」
滝口は頭が良いわけではなく、ピアノ教室で音楽的知識を身に付けただけ。それが沢井さんにとって「頭良い」と感じるのだろうが、読者によっては気になりそうな部分。
アウトローまで弾き終えた沢井さんの漏らす小さな溜息を僕は聞き逃さなかった。
アウトローではなく【アウトロ(終奏)】が正解でした。
3年の他のクラスは受験勉強、旅行に帰省、遊びにデートと各々の夏休みを過ごしていた。1ヶ月間みっちり合唱コンクールの練習に充てるのは僕等C組だけだ。
そうなんだよ、受験勉強しなきゃいけない学年なのに合唱練習している場合かという。中3ではなく中2にすべきだったか。
「練習の前に大事な話があります。松本先生は今日から居ません」
8月も中旬に差し掛かる頃だった。松本は教育センターへの異動辞令が出され、二度とこの学校に戻って来られなくなった。
出ました、みょー様も記事にて言及している「状況説明している台詞」。【練習の前に】は現場の生徒たちは当然把握しているので、読者への説明にしかなっていない。そしてもう一つ【松本先生は今日から居ません】と【松本は教育センター~戻って来られなくなった】が意味的に重複している。どちらかは必要ない。
というかそもそもこの台詞、誰や? という。学級委員長のつもりで書いたが伝わるわけが無い。ちょっと書き直してみる。
「松本先生は教育センターへ異動になりました」
8月も中旬に差し掛かったある日の練習前。毎日怒号を飛ばしていた大人が不在であることを疑問に思っていた僕は、学級委員長の一言で理解した。
まあこうなるのかな。
殴ったと言っても昭和なら恒常的に起きていたレベルの弱い力だったのに、時代はそれさえも許してくれなかった。
何で令和の中学生が昭和を知ってんねん。
「ちょっと男子、もっと声を出しなさいよ!」~「ハハハ、それフォローになっていないし」
ここだけ無駄に長い会話文はどうしようか迷った。3行くらいに短くしても意味は通じるが、崩壊に向かうクラスを強調する為にあえて長くするのも良いかなと思い、こうなった。
不安は的中した。鬼の消えた音楽室、やる気と向上心を失った男子、感情的な言葉を吐く女子、これまでの上達が嘘のように全く交わらなくなったアルトとソプラノ。クラスが崩壊に向かうのに一週間もかからなかった。
【不安は的中した】でも間違いではないみたいだが、おそらく【予感は的中した】あるいは【不安は現実となった】と書きたかったのだと思う。まあこのあたりは好みの問題か。
ただ、その後の羅列はこだわりポイントである。特にアルトとソプラノの部分。状況説明を小刻みに3~4個テンポ良く羅列するのはそのシーンを強調したい場合に有効。
慌てて僕も追いかけた。この期に及んで笑い声を止めない男子と涙に気付きもしない女子への怒りを抑えながら。
倒置法も毎回だとクドいが、ここぞと言う時に使うと効果的。
3時間もマイクを持ち続けたカラオケの帰り道、僕は沢井さんに聞いた。
【2人だけのカラオケの帰り道】かな。カラオケに行ったのが2人だけであることをどこかで説明する必要があった。
それより【3時間もマイクを持ち続けたカラオケ】が引っかかる。単に【3時間にも及んだカラオケ】で良かったか?
今の沢井さんはスッキリしたのか、「クラスを引っ張れる指揮者になってね」と僕に託した時以来の満面の笑みを浮かべていた。
【今の沢井さんは思う存分歌えてスッキリしたのか】
「滝口君はこの夏休み、毎日密かに練習していたのよ。もちろん合唱の自主練もやりながらね」
また台詞が説明していますねえ。何と言うかアニメの脚本っぽい台詞になっている。アニメなんて「説明乙」の宝庫ですからね。
まずはけん玉。木で出来た赤い球を大皿、中皿、小皿、そしてけん先へと順番に入れ、これをひたすら繰り返す。
【紐で繋がれた赤い球】かな。
「エー、まずは、僕と沢井さんの我儘な提案を受け入れてくれてありがとうございます。パート割りを変更すると決めたあの日から、より団結して練習できたと思います。まあ男子の大半が面白がって乗っかってくれたお陰なんですけど。今から披露する合唱が、優勝という結果に拘っていた松本……いや、松本先生に向けたメッセージになるんじゃないかと思います」
ここの台詞はあえて説明している。この時点ではまだ沢井さんのソロパートがあることを明かしていないので、読者に向けた謎掛けにしてみた。だとしてももう少し自然な感じに出来なかったものか。
本番までの3週間、僕等は団結して練習を続けた。ランニングも発声練習も、その後の課題曲の練習も、家での自主練さえも、松本先生が居なくても誰一人気を抜くことなく真剣に取り組んだ。
こだわりポイントその2。「も」を使った並列は、最後を「さえも」にする。単純に「も」が続くとカッコ悪いから変化を付けるというのもあるが、こうすることで並列でも最後だけは強調できる。
そして迎えた本番。
「いつか会えたなら ありがとうって言いたい
遠く離れてる君に がんばる ぼくがいると」
2番のサビは全て沢井さんが弾きながら独唱した。その間だけ僕は指揮棒を彼女に向けた。一瞬だけ笑顔を見せてくれた。
あれれ? 本番における「合唱」に関する描写が無い。クラスメイトどこ行った。
言えるわけないよ。「月が綺麗」ならいくらでも言えるけど、どうせバレるだろうし。
「月が綺麗」使われすぎ問題は前回も指摘した通り。ただ私はこれで二度と使えなくなり、新たな表現を開拓せざるを得なくなるので、結果的にはこれで良いことにする。
以上、添削終了。
3.文章表現の総合的な反省
3-1.心が足りない問題
前回書いた通り。もっとキャラクターに愛情を込めて書きたい。
3-2.情景描写力弱すぎ問題
私は情景描写が大の苦手である。これが原因で昨年12月に再開するまで6年間も小説を書いてこなかったと言えるくらい。
そもそも本作に情景描写は3回しか出て来ていないし、いずれも無理矢理捻り出している。
(1)黒塗りのトムソン椅子に腰かけ右手でドミソ、ドファラ、シレソと和音を一つずつ試しに弾く沢井さん
(2)カーテンを揺らすそよ風の細やかな音と共に聞こえる沢井さんの弾き語り
(3)中秋の名月を見上げながら沢井さんは言った
ちなみに情景描写が無くても意味は伝わる。(1)は【ピアノを弾く沢井さん】だけで問題ないし、(2)は太字部分が丸々不要だし、(3)なんて後の【月が綺麗】を言いたいが為に無理矢理入れたようなものである。
しかし、このような情景描写が無いとただの「日記」になってしまう。日記だとまだ聞こえが良いので私は「報告書」と呼んでいる。報告書にしない為に時々でも暗号のような情景描写を入れなければならない。
とはいえ、ただ単に情景描写を入れれば良いというわけでもなく、ちゃんと主文(主語)を活かす副文にしなければならない。そういう意味では「沢井さん」という主語を活かしている情景描写は(1)くらいである。(2)も(3)もそんなに上手くはない。
しかし、この世には私がこれだけ悩んで捻り出している情景描写を自然に導き出せる人も居るようなのだ。おそらく素晴らしい感性の持ち主なので小説を書くのにとても向いている。
3-3.台詞が状況説明している問題
最後はみょー様の持論。これは実際に書いてみれば気付く。
キャラクターの台詞を借りて状況説明するととても楽で効率的なのだ。地の文を減らせるし、前述の情景描写も最小限に抑えられる。
楽というのは裏を返せば初心者の逃げ道ということにもなってしまう。これに頼っていては技術的な向上は見込めないと察した。
ちなみに、みょー様的には例外もあるようなので、記事の該当部分を引用しておきます。
セリフはキャラクターの見せ場です。必要な情報はセリフではなく、他の部分で見せるべきです。
あくまでキャラクターのためにセリフは使いましょう。僕はキャラクターが何かを説明する時だけ、例外的に長いセリフ&説明をOKとしています。それ以外はキャラクターに状況を説明させようという作者のエゴ&小賢しさだと、厳しくムチを打ちました。僕のかわいいおしりに(諸説あり)
4.こだわりポイント追加
4-1.「ら抜き」「い抜き」は絶対に避ける
例えば「食べれる」ではなく「食べられる」、「してる」ではなく「している」。これはプロの作家でも出来ていない人がチラホラ居る(わざとなのだろうが)。
「らを入れると可能(できる)か受動(される)か見分けがつかなくなる」と思う人も居るだろうが、それは前後を読めば判別可能なはずである。
「地の文ならまだしも台詞なら『ら抜き』『い抜き』で良いだろ。特に台詞に『い』を入れると確実に不自然になる」と思う人については、私は少しでも美しい文章を目指しているので、としか言いようがない。
4-2.「ですます調」「タメ口」の違いで誰の台詞かを明確にする
台詞は一目見ただけで誰の発言か分かるようにしておけば「~が言った」を省略できるなどメリットだらけである。今作であれば主人公を「ですます調」、ヒロインを「タメ口」にするだけで解決できた。ちなみに男子が2人居れば「僕」と「俺」、女子が2人いる場合は語尾に「わ」「のよ」を付ける人、付けない人で差別化できる。語尾に「わ」を付ける女子なんて絶滅危惧種だが、文学界ではこの為に今も生き残っている。
4-3.台詞の前後は一行空ける
これは製本された書籍ではあり得ないのだが(ページ数がかさむ)web上ではこのほうが断然読みやすく、多くの人が実践している。
4-4.カットしたいところで時系列を変える
例えば今作の場合、リフティング100回達成の瞬間はカットし、時系列がコンクール当日に飛んでいる。そして本番の合唱に入る直前に「100回達成後」に時を戻している。その後も合唱の様子はほぼカットされている。
カットしたかった理由だが、必要ないと思って削ったわけではなく単に美しく描写する自信が無かった、つまり逃げただけなのだが、結果的にはこの構成で良かったような気がする。
5.おわりに
ここまで読んできて、「自力でここまで気付けるのに何でUPする前は気付かないの?」と思う人も居るかもしれないが、単純に推敲が足りなかったのだろう。
今回は難産の末に完成させた喜びが先走り、推敲1回だけでUPしてしまった。といってもちゃんとWordに貼り付けて明朝体に変えて印刷した紙をじっくり読んで推敲したつもりではある
(↑ここ何気に大事よ。画面上で推敲すると目が疲れるから気付かないこと多いよ。家にプリンターが無いなら仕方ないけど、私はわざわざ漫画喫茶に行って印刷した時期もあったよ)。
思うに推敲は最低3回必要。1回目は誤字・脱字が無いかのチェック、2回目は文章表現のチェック。完成直後は興奮状態になりがちなので少し休んで(場合によっては一晩寝る)クールダウンし3回目の最終チェック。
とはいえもう疲れたので、私はこの記事を推敲することなくUPするのであった……。
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