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昔のブログ。


タップ。スワイプ。タップ。スワイプ。スワイプ。


今日も現実離れした世界がスマホの中では展開されている。スマホから顔をあげると、隣に座る人も、反対側に座っている人も、みんなスマホをいじっていた。同じ箱を持っていても、それぞれが見ている景色は違う。漫画もある。ゲームもある。映画もある。ニュースもある。SNSもある。なんでもある。時間感覚が狂っちゃうよなあ、なんて思う。電車内は雨に濡れた肌の匂いが充満していた。


一駅分、そうしてぼんやり過ごしていたが、特に景色は変わらなかった。つまらなく感じてしまう。だからまたスマホに目を落とし、昔書いていたブログを開いてみた。卒業文集を読むような懐かしさと恥ずかしさを覚え、ちょっと周りの目を気にしてしまう。誰とも目は合わなかった。


そこにいた自分は、今よりも素直に世の中を生きていた。正直、内容は意味不明だったけど、心のうちに沸いた言葉を率直に書いている気がした。スワイプの速度がいつもよりも遅くなった。読めば読むほどむず痒くなるし、本当に自分なのかと疑ってしまう。でも、そこにいたウチは、とても正直で信用できた。こめかみから水が流れる。車内は湿度で気持ち悪い暑さになっていた。いや、たぶん、この水は湿度のせいではないと思う。


中途半端に頭がよくなってしまったなあ。


スマホを閉じて目を閉じた。ゴン、と後頭部が窓にぶつかった。ガタンゴトンという電車の揺れが脳を揺らす。このまま脳内の全てをシャッフルしてくれたらいいのに。そんなことを考えていたら、頭がぼんやりしてきて眠くなった。シャットダウン。試合放棄って感じ。でも、隣の人に頭が倒れないようにと、無意識のうちに身体を操ろうとしている自分もいる。昔のウチだったら、「ごめんね」と呟いてから隣にある肩をふかふかの枕に変えていたと思う。


降車駅のアナウンスがされた。



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