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<連載小説>昨日のような、明日を生きよう

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連載小説のまとめです。 1話あたり2、3分で読めるようになってます。 ほのぼの家族の代わり映えしない日常の、ほんの少しずつの変化を描いていきます。
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2021年2月の記事一覧

<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<21>

<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<21>

猫についていく 公園からの帰りに、猫を見つけた。
「あ、にゃあだ」
 綾は猫のことを「にゃあ」と呼ぶ。慌てて近づいても逃げられることを知っている彼女は、猫を刺激しないようにそっと近づいていく。なるべく視線を下げるようにして、屈んで、よちよちと歩き、声を出さないで。
 猫は敵意が無いことを分かっているのか、それともただ人懐こいだけなのか、綾が近づいても逃げることなく待っていた。
「にゃー」
 猫が鳴

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<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<20>

<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<20>

晴太のほっぺ 綾は暇さえあれば、晴太のほっぺたを突いている。
 とても気持ちがいいそうだ。
 そんなに力いっぱい、ではなく、優しく沈み込んでいく綾の指。
 晴太はそれを疎ましく思っているのか、面白く思っているのか、わずかに身じろぎする。
 僕と宮子はその様子を後ろから眺めていた。
 宮子がそっと綾と反対側に寝そべる。
 そして、綾とタイミングを合わせてほっぺたを突いた。
「う~、う~あ~~~」
 

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<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<19>

<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<19>

再び、日常 宮子も晴太も家に戻ってきた。
 ベビーベッドは綾のおさがり、おくるみとかは新調、哺乳瓶は使い回しだけど、乳首は買い直した。サイズ小さいのとか無かったからね。
 おむつも新生児用は買わないとだし、布団も綾がまだ小さいのを使っているから新しく買い足した。
 あ、おむつは早速おむつケーキ送ってくれた友人がいたので非常に助かりました。
 そんな感じで数日は準備や足りないものを揃えるのに忙しく、

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<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<18>

<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<18>

名前を呼ぶ「あかちゃん、かーいーね」
 綾はずっと眺めている。ほっぺたを突いてみたり、手足を触ってみたり、キスしてみたり。まるでペット扱いではあるけど、これはこれで可愛い。
「綾、赤ちゃんの名前は晴太くんだよ」
「せーた、くん?」
「そう、天気が晴れるに太いで晴太。晴れ晴れと図太く生きて欲しい、と思ってね」
 綾に由来を説明してみると、首を傾げた。まだ漢字の概念が無いもんな。
「決めたんだね、そっ

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