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読書ログ_小説「紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人」

家にある本を整理していて、いくつか再読したいなと思う本がちらほらと。時間を置いて読むとまた違った面白さもあるものですね。
せっかくですし、noteに感想を綴っていこうと思います。

今回は「このミステリーがすごい!」大賞の2020年大賞受賞作。
”紙”の鑑定士が謎を解いていく×証拠品の手紙付きという部分にひかれて手に取った1冊です。

あらすじ

どんな紙でも見分けられる男・渡部が営む紙鑑定事務所。ある日そこに「紙鑑定」を「神探偵」と勘違いした女性が、彼氏の浮気調査をしてほしいと訪ねてくる。
手がかりはプラモデルの写真一枚だけ。ダメ元で調査を始めた渡部は、伝説のプラモデル造形家・土生井(はぶい)と出会い、意外な真相にたどり着く。
さらに翌々日、行方不明の妹を捜す女性が、妹の部屋にあったジオラマを持って渡部を訪ねてくる。
土生井とともに調査を始めた渡部は、それが恐ろしい大量殺人計画を示唆していることを知り――。

読んでみて

紙を専門に扱う仕事を生業にする男が主人公とはまた面白い視点だなーと。

実際に紙鑑定士というのはないみたいなんだけど、(紙営業士というのはあるみたい)、この小説に出てくる、紙の知識がまぁすごい。

「この本なんかも何の紙かわかりますか?」と言われて差し出された本についても

カバーとオビは同じ紙で”A2コート”という上位グレードです。銘柄は、グロスだから王子製紙の<OKトップコート+>か、日本製紙の<オーロラコート>。(中略)表紙は板紙ですから王子の<OKエルカード+>か、日本製紙の<F-1カード>、北越コーポレーションの<ハイラッキー>といったところです。


とにかく専門的な言葉が多く出てきて、途中ちょっとお腹いっぱいになるぐらい。笑

あと、この単行本自体も色々な種類の「紙」を使って作られているんです。

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写真の通り、本文も4種類の紙を使用しているんですよね。
さっぱり専門的なことはわからないけど、でも紙だけでもこんなに色合い、触り心地など違うものなのだなと感じさせてくれる楽しさをまず味わうことができました。

また、マニアックさと言えば、伝説のプラモデル造形家・土生井の存在も欠かせません。勘違いにより、探偵的な仕事を引き受けることになった主人公・渡部が問題を解決するために、土生井のもとを訪れることになったのですが、

この土生井。「伝説のプラモデル造形家」という肩書からもなんとなくわかるかなと思うのですが、とにかくプラモデルに詳しい。
渡部が持ち込んだ戦車のジオラマの写真を見るなり、


戦車が2台か。手前は”ヒトマル式”で、後ろは”メルカバ”だな。どちらもタミヤ製ですね。(中略)ヒトマル式は自衛隊の戦車ですよ。二〇一〇年に制式採用されたから一〇式と書いてヒトマル式と読むんです。メルカバはIDFすなわちイスラエル国防軍の戦車ですね。

すぐにわかるほどの知識量。ここも非常にマニアック。

正直な話、このマニアックさはついていけなかったけど。笑
でも、土生井は、観察力というか、プラモデルに関する知識だけじゃなくて、その知識だったり、そういうモノづくりをする人たちのちょっとした心理的な部分までを総合的に考えて、謎を解き明かしていこうとしていて、この洞察力にはちょっと驚かされるほどなんです。この土生井の頭脳と、渡部の行動力等々で次々と物語が展開していく様は読んでいてとても面白かったです。

「え、これ殺人絡んでない?!ってか、渡部もなんか急に殺されたりしないよね?!あれ、でもなんか警察から殺人犯に疑われてるけど・・・大丈夫!?」みたいないろんなスリルが味わえる展開も後半味わえます。笑

個人的には続編に期待したいな。渡部のもとにまた勘違いで謎持ち込まれないかなーってひそかに期待してみたり。笑

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