絶対音感を駆使♬「譜起こし」ー後編
こちらの記事には前編があります。
是非そちらもご覧いただけると嬉しいです(*^^*)
マーチングバンド譜起こし
依頼主は親友
DTM作曲家として活躍している親友がいます。
かれこれ20年以上の付き合いなのですが、実は彼女とユニットを組んで活動していた時期がありまして、ライブハウスに出たことも何度か。
当時から彼女が作曲(なぜか)私が作詞をして、バイオリンも弾くという、異色のユニットで(笑)ただ、彼女は楽譜が好きではなく、いつも私が耳コピをして、バイオリンのメロディは即興で作る、という形でした。
音楽高校を出ておきながら、楽譜がない&即興という状況を楽しめたのは、<前編>にあったソルフェージュを頑張った成果です。
よかった~
数年でユニット活動はやめ、私は念願の音大へ。彼女はDTM作曲の道に進み、今では結構有名な作曲家です。
彼女がとある仕事で、マーチングバンド編成の曲を作ったものの、困った事態になった、と連絡がありました。
当初はBGMとして流すだけの予定が、演奏したいとクライアントさんから申し出があり、楽譜にしなければいけなくなった、とのことでした。
おさらいです。
彼女は楽譜が好きではありません。
DTM作曲はPCで行う作曲で、五線譜作曲のスタイルではありません。
そして、彼女は緻密に計画して作曲する派ではなく、その時の感性で作曲、即興するタイプですので、楽譜にするのが困難な状況でした。
ある日の夜、彼女から電話がかかってきました。
「Michika、助けて」
未知の領域に踏み込んだ理由
いくら音楽大学を出ているとはいえ、専門はバイオリン、ジャンルは(一応)クラシック音楽。ピアノや管楽器ソロであれば、自信があるのですが、10種類以上の楽器編成と聞いて、正直迷いました。
管楽器は【移調楽器】が多く、音部記号から調べないといけない
ドラム譜は未経験
自信が弦楽器のため、そもそもマーチングバンド自体したことがない
仕事として引き受ける以上、「やっぱりできなかった」は許されません。
友人だからこそ、この境界線はハッキリさせておかないといけないと考えています。
そこで、彼女に聞いてみました。
「なぜ、私に頼もうとしたのか」
彼女にはDTM界隈の知人がいるでしょうし、譜起こしができる方もいるだろうと思ったのです。そして、彼女は「友達だから」という理由で、仕事を依頼する性格ではありません。それは、私たちが「プロ」だからです。
そうすると、彼女はこう答えてくれました。
すごく嬉しかったです。
彼女は楽譜が好きではない、とは言え、絶対音感はありますし、ソルフェージュ能力は私とは反対の「天才肌」の持ち主です。
その彼女が私のソルフェージュ能力を買ってくれていると知ったとき、ある言葉が思い浮かびました。
「頼まれごとは引き受けた方がいい」
そう、頼まれごととは、「第三者が自分では気づいていない能力を買っている」ことに気づくチャンスなんです。
ソルフェージュは私にとって、劣等感から始まった分野です。
だからこそ、人の何倍も努力をしてきたのですが、それを、親友でありプロの作曲家が認めてくれていた、そのことが本当に嬉しかったです。
この譜起こしが難航することはわかっていましたが、私は快諾しました。
納期との闘い
依頼があった日から納期まで10日間
しかも、1曲ではなく全7曲
それでも引き受けたからには、やり遂げることは絶対条件です。
その日から、久しぶりの「不規則生活」になりました。
普段は指定難病の膠原病が悪化しないよう
規則正しい生活
ストレスをかけない
体調に異変があれば安静
以上を遵守しているのですが、私は音楽には命を捧げると決めています。
他の仕事を疎かにしているのではなく、音楽に関しては何があっても、死ぬと言われてもやり遂げるというベクトルなのです。
移調楽器に戸惑い、各楽器の音域に戸惑い、チューバとかは低すぎて、可聴音域ギリギリ(笑)そして、最大の難所はドラム・・・。
ドラム譜のルールを叩き込み、何度も何度も聴きなおして、採譜。
この時は、眠っていても曲が流れてきて、ノイローゼになりそうでしたww
努力は実り、納期前日に納品!!
依頼主の友人も納得のクオリティだったようで
この瞬間、すべての疲労が吹っ飛びました!!
後日談
不規則な生活はきちんと検査結果に現れ、医師に注意を受けました。
でも、医師に私の人生の重きは音楽であることを話し、今後は病気と共存しながら、多少の無理をするときは予め相談する、ということに。
先生、ごめんなさい(-"-)
思わぬ収穫
自分の研究分野にドラムが参入
ドラムは音楽のイニシアティブを握っています。
ドラムが一定のリズムで刻んでいるから、他のパートが揃うんです。
そして、ドラムのリズムによって、BPM(テンポ)が変わっていないのに、前のめりな曲調になったり、ゆったりに聴こえたり・・・
この仕事以降、私は生徒に渡すデモ音源に、簡単なドラムを入れるようになりました。メトロノームだけでは想像しにくい、内在するリズム。それをドラムを使えば表現できることに気づいたんです。
生徒はクラシック音楽よりも、Popsや洋楽、ボカロ曲などをよく聴いていますので、メトロノームよりドラムの方が親しみがあり、わかりやすいのかもしれません。
バイオリンの無伴奏ともなると、テンポ維持も一人で行わなければならず、大曲になると、これがいかに大変なことか痛感します。
特に、早いフレーズではなく、二分音符や全音符など、一見停滞するようなところこそ、テンポを意識しておかないと、間延びします。
私は学位取得研究が「無伴奏楽曲」だったこともあり、今でも研究を続けています。バッハや、プロコ、イザイなどの無伴奏曲の楽曲分析に、ドラムを取り入れたらどうなるか、現在チャレンジ中です。
「得意」分野に気づく
マーチングバンドの譜起こしを通して、友人という第三者から
「あなたはソルフェージュが得意だよ」
と指摘されたことになります。
まさか、劣等感の塊だった分野を、プロに認めてもらえるとは思ってもおらず、自分のことは、案外自分が一番わかっていないのかも、と思いました。
そういった意味でも、「頼まれごとを引き受ける」のは、人生に迷ったとき、仕事に迷ったときにはお勧めです。
自分の居場所を再確認した
15年の会社員人生の中で、私は3度倒れています。
1度目は風邪から重度の咳喘息になり、呼吸困難で意識混濁
2度目はメニエール病からパニック発作が起こり、電車内で倒れる
(終着駅で倒れたため、幸いダイヤに影響はありませんでした)
3度目は追い詰められた結果、妊娠したことを報告できず流産
いずれも、ストレスと過労からきたものです。
特に流産は心身ともに打ちのめされ、精神崩壊。
急に涙が溢れたり、生きる意味を探し始めたり、本当に最悪の状態になってしまいました。
ストレスの原因は2つ
私が察しが良く、空気を読みすぎてしまうこと(カウンセラーからエンパスだと言われたこともあります)
何事も120%全力投球→「余計なこと」と判断されることが多かった
5歳から音楽界で鍛えられた私は
「練習の時から100%以上の努力が必要」
「プラスアルファは当たり前」
と、教え込まれましたし、実際プロの世界はこれがデフォルトです。
しかし、会社員は組織人として協調が求められ、私の全力は「自我が強い」「承認欲求が強い」と見えてしまい、逆効果でした。
流産のあと、全力で生きることをやめてみようか、と悩みましたが、いまさら生き方を変えるのは難しいと気が付きました。
そもそも、全力でやるから楽しいのだとも気づいたんです。
だからこそ、思い切って会社員という働き方を辞め、フリーランスの音楽家として生きていく決意をしました。
マーチングバンドの譜起こしを全力でやったことで、納期前日に納品、ミスなしという結果になり、次の仕事に繋がりました。
私が心地よいと感じるのは
「常に全力が求められる」場所だと再認識しました。
何でも屋のバイオリニストとして生きる
バイオリン演奏を生業にしている方はたくさんいらっしゃいます。
そして、私よりスキルがあり、輝かしい受賞歴をお持ちの方もたくさんいらっしゃいます。
その競合のなかで生きていくには、私にはオプションが必要なんです。
結局、音楽家として生きていくには「音楽界でどのスキルが発揮できるか」が大きなカギだと思います。
どのお仕事も、「この人であれば一気通貫で完結する人」にお願いしたいですよね?
楽器演奏をすべてすることは不可能ですが、PCの力を借りて、今後も考えられる限り何でもやります!なバイオリニストで生きていきます(*^^*)
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