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絶対音感を駆使♬「譜起こし」ー前編


コンプレックスが私を突き動かした

呆然としたクラス分け試験

音楽高校進学を決めたのが中学校3年生のとき。結構ギリギリでしたし、地方からのチャレンジでしたので、とにかくバイオリン実技に必死でした。
音楽高校によって受験科目は異なりますが、基本的には以下の科目です。

  • 専攻実技(私の場合はバイオリン:スケール、エチュード、課題曲)

  • 副科(ピアノ/ピアノ専攻の受験生は声楽を選ぶことが多い)

  • 楽典

  • 聴音

  • 新曲視唱

  • コールユーブンゲン

  • 普通科目(英語、国語、数学など)

一番比重がおかれるのが、専攻実技です。これが受験学校の水準に達していなければ、他の科目が優秀であっても合格できません。
私が合格するには、バイオリンのスキルを上げることが第一でした。
ですので、「バイオリン以外の準備や勉強が足りなかった」という事態が起こり、結果やったこともない難易度の曲がバシバシ出題されたクラス分け試験では、音を採ることすらできず、呆然としてしまいました。

最下クラスからAクラスへ

私は5クラス以上に分けられたなかで、一番下のレベルでした。

同じクラスには、絶対音感を持っていない生徒が多い管楽器、打楽器、声楽の生徒ばかりで、弦楽器やピアノ専攻の生徒はおらず、私は自分が「バイオリン専攻の生徒の中で一番ソルフェージュができない」という現実を突きつけられました。

ただ救いだったのは、ソルフェージュ分野はきちんとした指導と、努力をすればある程度スキルアップすることが可能だということです。
私の場合は絶対音感があったため、その使い方を指導していただいたことで、絶対音感を活かすことを覚えることができました。
2年生時にはAクラス(最高位)に上がることができ、とても嬉しかったのを覚えています。

聴音はとにかく数をこなすことが大切

努力は裏切らない

そう感じることがきたことは、音楽家としてだけではなく、人として大きな財産になりました。当時の自分に「よく頑張った!」と褒めたいです(笑)

それでも未だに劣等感がある、だからこそ

15歳の私にとって、ソルフェージュクラス分けで突きつけられた事実は衝撃的だったのでしょう。その時に覚えた劣等感は今もあります。
しかし、劣等感=悪いとも思っていません。
劣等感があるからこそ、私は今もスキルが落ちないよう、定期的にソルフェージュテストを受けています。そして、私の努力を評価してくださった方々が、譜起こし(採譜)の依頼をしてくださるようになったのです。

初めての譜起こしはレッスンの教材用だった

生徒がやりたい曲の楽譜にバイオリン編曲がなかった

これはあくまでも私の指導方針ですので、賛否あるかもしれません。
思うところがあっても、そっとしておいていただけると幸いです。

私はまずバイオリンを教えるうえで、生徒に目標を持ってもらいます。
ほとんどの生徒が【あの曲を弾きたい】といった、具体的な曲名を挙げてくれます。クラシック音楽のこともありますし、流行りの音楽や、ボカロ曲、洋楽やK-popなどを挙げてくれますので、私はジャンル指定はしません。

ただ、ひとつ問題が

バイオリン用の楽譜がないことが多い

習い始めの生徒が知っているクラシック音楽は、バイオリン曲ではないことも多々あります。たまにバイオリン編曲の楽譜が販売されていることもあるのですが、生徒のスキルとは異なる難易度であることも・・・。

でも、本人が弾きたいと思っている曲は、弾いてほしい、そしてそれがモチベーションになるはずだと私は考えていますので、手段はひとつ

自分で編曲して、楽譜にする

こうして、今まで数え切れないほどの曲を、その生徒のスキルに合わせた調やポジショニングで編曲し、楽譜に起こしてきました。
今思えば、これが採譜の始まりです。

採譜がきっかけで、部屋がサウンドクリエーター仕様になっていきました(笑)

記譜ソフトの登場

20年前はノートパソコンが持ち運べるサイズではありませんでしたし、家にパソコンがあることも珍しい時代です。
記譜ソフトも今ほど普及していませんでしたので、手書きでした(;^_^A

私より生徒の方が楽譜を読むのに時間がかかるわけですから、
【見やすく】【綺麗に】【確実に】
を心がけて、まるでカリグラフィーのような感覚で記譜していました。

今では様々な記譜ソフトが登場し、無料版でも十分な機能が備わっています。代表的なソフトは、フィナーレ、シベリウス、ミューズスコアあたりでしょうか。記譜ソフトは今もアップデートが頻繁に行われ、その度に使いやすく、初心者の方でもできるような直感的デザインになってきています。

編曲譜の作成~デモ音源の作成まで

記譜ソフトが便利なのは、綺麗な楽譜をつくる点だけではありません。
楽譜を「鳴らす」機能があり、それをMIDIやMP3などでデータ化することが可能です。
この機能を使えば、記譜のミスが防げます。

何より、私の生徒には必ずレッスン曲のデモ音源を渡していますが、その音源データは記譜ソフトで作成しています。

というのも、私が演奏したものはもちろんですが、どんなに有名なバイオリニストが演奏したものでも、人には「癖」があります。

楽譜からの情報をすべて汲み取り、自分のスタンスを決めたうえで、他人の演奏を聴いて参考にするのはとても良いことだと思います。
しかし、楽譜を読む前に、しかもアイディアもなく、誰かの演奏を聴いてしまうと、トレースしてしまいます。
演奏家の「癖」には理由があります。それはその演奏家の思想、アイディアがあり、その部分はAIでもマネできない表現分野です。

誰かのトレースをしてほしくない
でも、参考音源がない中で、楽譜だけ読め!というのも酷

トレースをするな、というのは私の師匠からの教えでもあり、私もそう考えています

たどり着いた答えが
あえて無機質なPC音源(癖がない音源)で、デモを作ることでした

今まで、何十曲も記譜ソフトで譜起こしをし、音源化をしてきましたが、ここまでは全て、自分と生徒のためだけのスキルに過ぎませんでした。

マーチングバンドの譜起こしが転機に

これはある意味では「地獄を見た」経験なのですが、音楽家としての転機となった経験でもあります。

この時は悩んだ、というより行き詰った感覚がありました

後編へつづきます

このまま綴ると、5000文字を超えそうですので、前後編に分けることにしました。それくらい採譜のことだけで、いくらでも語れてしまいます。
あれだけコンプレックスを持っていた分野に、これだけ肩入れしている自分に少々驚いていますが、採譜には魅力があります。
と、同時に気を付けなければならないこともあります。

そういった部分も後編でお伝えできればと思います。

後編もお読みいただけますように・・

プロットはできあがっておりますので、明日にはご覧いただけると思います。どうか、見離さずお付き合いのほどよろしくお願いいたします(*^^*)


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