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「結晶になっていく彼らたち」

白いTシャツを着た少年少女は寝ている時に3つくらい宇宙をまたいで旅しているから、戻ってくるのに少しばかり時間がかかる。 

夢の途中で目覚めようものならば、頭だけは地球で目覚めた意識は遠い惑星の中だから、身体の中にかっちりと戻ってくるまでに、早くても0.8秒は要する。

このコンマ8秒が永くてキツい。もしかしたらずっと戻って来れないんじゃない?って焦り出した瞬間、肉体に戻ってくるんだ。

今私はここにいるけど、あの見えない惑星の中にもいて、みんなが光を選ぶのかの実験中。

結晶は経験をかけて純化されるという。

この地球の中で生命をやるのはとても困難だ。毎朝身体に戻って起き上がるためには、重力と理由が必要になる。
そして時々、誰かの頭脳にある理想を証明しようと躍起になる。その「誰かの欲望」ってのに、終わりは永遠とやって来ない。

なぜ世の中の難問は難問たり続けるのか?
「それは新しい意識がまだ加わっていないから。全てのことは究極的にシンプルである」と、知ったかぶりのマスターは言う。
私は他者に寛容なのに何故私を許せていないのだろう。
この謎は誰が解く?

『私が生まれてきた意味は、今までの人生を全て統合し、解放することです。彼らの声を聴き、光を照らす。出会った人たちは千の過去かもしれません。経験を味わい人間を理解すること。そして最後の今はそれを楽しむの』と堂々と言い切ったみーちゃんを、初めて苦手だと思った。そしてそんな感情を抱いた自分に、深く傷ついていた。

みーちゃんは、誰にでも優しい、立派な人なのに。

忘れていた世界に再び加わる。透明な身体を折り曲げて大きな固いベッドで眠る。

魂は今、どこで休んでいるのだろう。DNAの中に小さく折り畳まれて次元があるのかな。そうだとすれば、二次元平面の中で生きるフラットランドの人たちは高さの美を知らない。上と言われたって見えている世界はどうしても点と線なのだ。

私の中からびょうびょうと溢れた水は蓄えきれずに落下する。
淵で抗っている私を(わたし)が観ている。「ただ流れればいいよ」と告げてみる。痛みも折れた鎖にしまわれているなら、過去を見るように取り出すことも簡単だった。争いや泣きわめきから、ふとオールを手放した。

私が光を許すから結託は解かれて闇の間に、水がいよいよ澄んでいく。


連絡をくれない君はあくまで自分の自由の中で生きたいみたいだ。

会話のキャッチボールのテンポは君任せになり、私だっていよいよ球を投げるかわからんぞと思うと返信が来たりする。

薄緑に光る色に、君がくれた画像を開く。
それは一枚の地球の写真だった。

地球も離れて見ればこんなに美しいのだから、人間もずっとずっとその姿が透明になるまで離れて見れば誰もが結晶のように美しいに違いない、と私は思った。

「どんな造形も地球にはかなわないよね」と送ってくる君の造形が、すき。





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