キルスイッチ松岡

「物語」ではなく、「記録」という意識で書いていきます。 「何が伝えたいの?」と質問が飛…

キルスイッチ松岡

「物語」ではなく、「記録」という意識で書いていきます。 「何が伝えたいの?」と質問が飛んできそうですが、もうこれについては「発表すること」がこのnoteのテーマです。なんだ発表すること、って。いやどんだけレベル低いんだよとお思いのそこの貴方!僕もそう思っています。

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「泣いたって何ひとつ変わらないよ」

『私、お酒飲めないんです』 店に入るなりいつものように彼女の分を含めてドリンクを注文しようと「生で良い?」と尋ねると彼女はそう答えた。 「…へー。じゃあソフトドリンクだね」 『クリームソーダで』 「キミね。良い年の女が居酒屋に入るなりメロンソーダにアイスクリームを載せた飲み物を頼むなんて不相応だよ。烏龍茶とかにしなよ」 『きかないんですか?なんでお酒を飲めないか』 「体調悪いの?」 『違います』 その理由なんか簡単に分かっていた。 それが分からない程私は世間

    • ブリキ、冬

      「昔なんかのドラマでね、不良役の市原隼人が少年院から帰ってくる場面があって。お母さんとそのまま近所の定食屋にご飯に行くんだけど"オムライス2つ"ってお母さんが勝手に注文するの。大好きなオムライスよね?って。すると市原隼人がすかさず”勝手に決めてんじゃねえよ!”ってブチ切れるんだ。それをきいてお母さんが”じゃあ何が食べたい?”って尋ねると市原隼人が即座に”オムライス”って言うんだよ。それで出てくるオムライスをむさぼりつくように食べるんだ。あの時の小気味の良いスプーンが皿にカンカ

      • 色即是空です

        暗転。 約10秒程の暗闇の沈黙。 明転。 約2分間に渡り、常田大希がステージ各所で火炎パイロが上がる中で高らかにギターを奏でる。 私は会場の2階の奥のほうにいるというのに、その火炎の熱をはっきりと体感できる。 これがいったい、何の曲のアレンジなのか、あるいは前振りになっているのかはわからない。 再び暗転。 1〜2分くらいだろうか。 暗闇の中で微かに何かが準備される物音が、よりこの時間を長く思わせる。 そして明転。 青白いライトが照らした舞台の真ん中に、椎名

        • パチンと弾けて

          新年から仕事で東中野へ行く機会があった。 正直東中野で降りる…というより電車が停車すること自体が大学生以来である。 というのも東中野は中央線が停車しない。 千葉方面に住む私にとっては西東京に行くには間違いなく東京駅、あるいは御茶ノ水駅で中央線を利用するため、東中野は意識して総武線でひたすら鈍行しなければ辿り着けない場所となっていた。 約15年振り。 その時は当時付き合っていた彼女の卒論用にとポレポレ東中野でバックドロップ・クルディスタンという映画を観た。 それは私

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        「泣いたって何ひとつ変わらないよ」

          錆びた剣が光出した

          『行方不明になった相方を探しにいこうよ!探そう!』 小峰遥佳は左手でウーロンハイを傾け、右手を私の膝に置きながら上機嫌に言った。 「そんなこと言われても…向こうが望んでないのかもしれないし」 『そんなの関係ないよ。会ってちゃんと謝ってもらって。そこから考えなくちゃ』 「でも思うんだ。あれからずっと。俺が悪かったのかな、俺があまりにも相方を思いやれなかったからかな、って。だから本場当日にいなくなったんじゃないかって」 7杯目の赤玉パンチですっかり酔っ払ってしまった私は

          錆びた剣が光出した

          よければ一緒に

          少し前のことだが、名アーティストたるKanさんが亡くなった。 それが私にはあまりにもショックで、しばらくまともに生活することが嫌になってしまうほどだった。 私が人生で初めて買ったCDはポルノグラフィティのアポロであり、初めて親に買ってほしいとねだって買ってもらった曲は玉置浩二の田園だったわけだが、この歌はめちゃくちゃ最高だと初めて感じた曲も明確に覚えていて、それがKanさんの愛は勝つである。 故に思い入れは強い。 そしてap bank フェスで、桜井和寿と共に歌ったa

          赤いはんてんの唄

          僕が一番好きな季節って、いまくらいの時期なんですよ。 よくね、怖い話は真夏だ、真夏の夜だって言われますよね。 たしかに真夏の怪談、これは本当に良いですよね。 けれどね、今くらいの時期。 昼は夏の暑さが残り、太陽の光が照りつける。 でも夜は、まるでそんなことなかったかのように、暗く、そして涼しい風が吹く。 少しだけ、寒さを感じる。 そういう時期がね いちば〜ん、怖いんですよ。 ◯ 稲川淳二が年齢的なことを考えてもそう長くはないであろうとすると、見れるうちに生

          赤いはんてんの唄

          蝸旋

          「こっちはネタを作ってこうしてほしい、ああしてほしいって言っても、相方は"うん"しか言わない。それどころかクスリとも笑わない。一番身近な相方が笑わないんだったら、それって俺と組む意味あるのかな?ってなります」 以前マルコポロリのトリオ芸人特集で、キングオブコント決勝常連のGAG福井がそう吐露した瞬間があり、それは私の価値観も大いに揺るがすものだった。 その通りだな、と思った。 私達漫才師セイブアスは、基本全て私のネタをやっているが、相方の丸島はプライドがあるのか、必ず毎

          Ray

          20年前に動画サイトでBUMP OF CHICKENがダイヤモンドを歌っている映像を観た。 目が前髪で完全に覆われたボーカルが柔らかく、且つ、力強く「何回転んだっていいさ」と歌いあげる姿は色気に溢れていて、またあの頃友人関係も部活も勉強も何もかも中途半端だった私の耳に、その曲は応援歌として深く残った。 調べるとドラマの主題歌であった天体観測を歌っているバンドだとわかる。 クラスのカースト上位がどれだけ毎週のように口ずさんでもその天体観測がダサくて仕方なかったのは、おそら

          黒毛和牛上塩タン焼き680円

          『野中さん、奥さんと離婚したみたいですよ』 中村さんは興味なさそうに私に教えてくれた。 「なんで?あんまり覚えてないけど子ども生まれたばっかりじゃなかったっけ?」 『もう1年くらい前じゃないですかね。生まれてます』 「不妊治療とかめっちゃしてなかった?あの人。嫁って元同僚でしょ?」 『してましたよ。野本さんずっと子どもできなくて悩んでましたし。そう。社内恋愛です』 「待望の一子なのに離婚て。不倫かなんか?」 『いや。多分いざ子どもできたら旦那いらないってなったん

          黒毛和牛上塩タン焼き680円

          三文小説編

          この状況を迎えることをなんとしても避けたかったのに、それが不可避となったことに私は絶望していた。 「もう定時過ぎてるんだから帰りなよ」 『いや会社に戻ります』 「残業になるよ。やめなよ」 『でも戻らないとなんで』 後輩の砂川は頑として譲らなかった。 結果として私と砂川は約30分に及ぶ電車内共存を強いられることとなった。 いやマジで他の電車乗ってよ… 4月の部署異動にあわせて一部案件も別部署へ移管しなくてはならないものが何個もあり、そのうちのひとつで私はこの砂川

          騎士団長生かし

          吉沢明歩の欲情温泉旅行淫猥の旅一泊二日、が大好きだ。 もうかなり前の作品だが、現在もエース級に観てしまいます。 〇 というわけで日帰りで温泉に行ってきた。 特に行く理由はなかったが、最近ストレスが非常に溜まりやすく、それを解消する上で一番の方法は温泉に浸かることであるという持論を持っているからだ。 滋養強壮。これはバカにならない。 なんとか近所の健康ランドで騙し騙しストレスを解消してきたが、いよいよそれも効果がきれたのでやむなく本物の温泉地に行くことにしたのだ。

          しばらく走ると僕は硬いシートに居心地が悪くなって女の話に相槌打つのも嫌になって眠ったふりをした

          つい最近気が付いたのだが、どうやらいま住んでいるところの最寄駅付近に世界的に有名な大手メーカーのオフィス兼研修所があるようで 出勤時間に駅にいくとその方向へと向かう初々しいリクルートスーツを着た社会人達とすれ違う。 あんな大企業に勤められるなんてすごいなあなどと最初は考えていた。 しかしここ数日に至っては、この大企業に入るために勉強しかしてこなかったような顔と体格の男の子数人が、朝から駅で大騒ぎしながら道に広がり 通行の邪魔となってきているのでストレスが溜まる。 な

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          シザースタンド・ライク

          ネルソン・マンデラという人物をご存知だろうか。 南アフリカの元大統領でアパルトヘイトを撤廃した人物、と言えばピンとくる方も多いのではなかろうか。 こんな話がある。 2013年にこのネルソン・マンデラが亡くなったというニュースが世界中を駆け巡った。 これを観た世界中の多くの人が、こう思ったそうだ。 「あれ?マンデラ大統領って1980年代に獄中で亡くなったんじゃなかったっけ…」 このように、現実の出来事と過去の記憶が乖離してしまったように感じる現象。 これを"マンデ

          シザースタンド・ライク

          マイノリティトラベラーて

          別サイトでの話になってしまい恐縮だが、ある女性と日記で勝負をすることとなった。 このような書き方をすると語弊があるかもしれないが、たとえばそれはなんらかのトラブルでその成敗方法を第三者に任せる、とかそういうネガティブなものでなく、純粋に同じテーマで日記を書いてどちらがいいねを多く獲得できるかを競い合うものだ。 彼女、仮に彼女を"白"としよう。 白の書く文章はとても透明感があり、起承転結がしっかりなされながら自分の意見を述べた上で絶妙に立ち位置を暈す、言わば読んでいて心地

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          踊り続けさせて、ねえDJ

          以前の日記にも書いた寿退社川崎の送別会が行われた。 結婚し、地方の大手旅館に嫁ぐ彼女の未来はイバラそのものだろう。 実際会社を辞めた翌日から何をするのかと訊くと、『1週間休んでから1年間の修行に入ります』といまにも倒れそうなか細い声で言っていた。 大変そうだ。 そんな川崎ではあるが、送別会にはたっての希望で、自分の教育係だった武田を呼ぶことを拒否した。 武田と川崎の関係を説明すると、新入社員として配属された川崎の教員係として白羽の矢が立ったのが良きパパであり愛妻家と

          踊り続けさせて、ねえDJ