キルスイッチ松岡

「物語」ではなく、「記録」という意識で書いていきます。 「何が伝えたいの?」と質問が飛…

キルスイッチ松岡

「物語」ではなく、「記録」という意識で書いていきます。 「何が伝えたいの?」と質問が飛んできそうですが、もうこれについては「発表すること」がこのnoteのテーマです。なんだ発表すること、って。いやどんだけレベル低いんだよとお思いのそこの貴方!僕もそう思っています。

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「泣いたって何ひとつ変わらないよ」

『私、お酒飲めないんです』 店に入るなりいつものように彼女の分を含めてドリンクを注文しようと「生で良い?」と尋ねると彼女はそう答えた。 「…へー。じゃあソフトドリンクだね」 『クリームソーダで』 「キミね。良い年の女が居酒屋に入るなりメロンソーダにアイスクリームを載せた飲み物を頼むなんて不相応だよ。烏龍茶とかにしなよ」 『きかないんですか?なんでお酒を飲めないか』 「体調悪いの?」 『違います』 その理由なんか簡単に分かっていた。 それが分からない程私は世間

    • 私は青木を許さない

      「ごめん、俺もう眠くて無理だ…なんも考えられない」 『私も。ちょっと幸せすぎたな…』 小峰遥佳と久々に会い、前々から予定していた高級マッサージを二人で受けにいったわけだが、その内容があまりにも気持ち良すぎて私たちの思考は全て奪われていた。 「俺はね、オッドタクシーの田中革命の回がめちゃくちゃ好きなんだ。だからその回は何度も観て、文字起こしまでしたんだよね。覚えてる?田中革命」 『いや…忘れた…』 「オッドタクシーめちゃくちゃ好きって言ってたじゃん…」 『もうかなり

      • 雨燦々

        九段下駅で電車に乗り、乗車ドアの近くに立ちながら発車を待っていると、ドアがまさに閉まる直前に女子高生が駆け込み乗車をしてきた。 必然的に彼女の真後ろに陣取ることになった私は、距離が近いこともあり、両手で持っていたカバンを左手だけで持ち、右手は意味もなく携帯電話を取り出して画面を見ることにした。 私も中年であるし、見た目も小汚いため、ちょっとした仕草でたとえば痴漢だとか盗撮だとかを疑われても仕方ないし、また真後の見えないJKに対してもそれなりの安心を見せなければならない。

        • 今だからこそ、ズッコケ男道を歌いたい

          出勤すると同時に資料を見て、且つ自分のスケジュールを確認しながら思わず自問自答してしまう。 間に合うのか、今日中に。 地方業務の入札の資料提出が今日中。 到底間に合わない。資料はまだ一部業務が未確定のため完成に至っていない。 「大丈夫です。まだ1日ある。ギリギリまでやりましょう」 年下の上司からのその一言はつまり、今日という日が23:59まで続くということに他ならなかった。 「はい。ギリギリまでやります」 私は心の動揺を悟られぬように精一杯力強くそう答えた。 こ

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        「泣いたって何ひとつ変わらないよ」

          スーパーシューター

          「2014年11月、南海本線の泉大津駅にて16時頃、走行していた空港急行なんば行きが駅に差し掛かろうとした時、ホームにいた女性が奇声を発しながら線路へ飛び込んだ。だが不思議なことに、女性の遺体はおろか、血痕や電車への衝突跡も何一つなかった。この話知ってる?」 『知らないかもです!』 「駅員は"たしかに飛び込むのを見た"と言い、運転士は"目の前に人が現れ、そして消えた"と証言している。つまり確実に存在し、線路へ飛び込んだはずの女性が、忽然と姿を消したんだ。舞ちゃん、このパタ

          スーパーシューター

          ブリキ、冬

          「昔なんかのドラマでね、不良役の市原隼人が少年院から帰ってくる場面があって。お母さんとそのまま近所の定食屋にご飯に行くんだけど"オムライス2つ"ってお母さんが勝手に注文するの。大好きなオムライスよね?って。すると市原隼人がすかさず”勝手に決めてんじゃねえよ!”ってブチ切れるんだ。それをきいてお母さんが”じゃあ何が食べたい?”って尋ねると市原隼人が即座に”オムライス”って言うんだよ。それで出てくるオムライスをむさぼりつくように食べるんだ。あの時の小気味の良いスプーンが皿にカンカ

          色即是空です

          暗転。 約10秒程の暗闇の沈黙。 明転。 約2分間に渡り、常田大希がステージ各所で火炎パイロが上がる中で高らかにギターを奏でる。 私は会場の2階の奥のほうにいるというのに、その火炎の熱をはっきりと体感できる。 これがいったい、何の曲のアレンジなのか、あるいは前振りになっているのかはわからない。 再び暗転。 1〜2分くらいだろうか。 暗闇の中で微かに何かが準備される物音が、よりこの時間を長く思わせる。 そして明転。 青白いライトが照らした舞台の真ん中に、椎名

          パチンと弾けて

          新年から仕事で東中野へ行く機会があった。 正直東中野で降りる…というより電車が停車すること自体が大学生以来である。 というのも東中野は中央線が停車しない。 千葉方面に住む私にとっては西東京に行くには間違いなく東京駅、あるいは御茶ノ水駅で中央線を利用するため、東中野は意識して総武線でひたすら鈍行しなければ辿り着けない場所となっていた。 約15年振り。 その時は当時付き合っていた彼女の卒論用にとポレポレ東中野でバックドロップ・クルディスタンという映画を観た。 それは私

          錆びた剣が光出した

          『行方不明になった相方を探しにいこうよ!探そう!』 小峰遥佳は左手でウーロンハイを傾け、右手を私の膝に置きながら上機嫌に言った。 「そんなこと言われても…向こうが望んでないのかもしれないし」 『そんなの関係ないよ。会ってちゃんと謝ってもらって。そこから考えなくちゃ』 「でも思うんだ。あれからずっと。俺が悪かったのかな、俺があまりにも相方を思いやれなかったからかな、って。だから本場当日にいなくなったんじゃないかって」 7杯目の赤玉パンチですっかり酔っ払ってしまった私は

          錆びた剣が光出した

          よければ一緒に

          少し前のことだが、名アーティストたるKanさんが亡くなった。 それが私にはあまりにもショックで、しばらくまともに生活することが嫌になってしまうほどだった。 私が人生で初めて買ったCDはポルノグラフィティのアポロであり、初めて親に買ってほしいとねだって買ってもらった曲は玉置浩二の田園だったわけだが、この歌はめちゃくちゃ最高だと初めて感じた曲も明確に覚えていて、それがKanさんの愛は勝つである。 故に思い入れは強い。 そしてap bank フェスで、桜井和寿と共に歌ったa

          赤いはんてんの唄

          僕が一番好きな季節って、いまくらいの時期なんですよ。 よくね、怖い話は真夏だ、真夏の夜だって言われますよね。 たしかに真夏の怪談、これは本当に良いですよね。 けれどね、今くらいの時期。 昼は夏の暑さが残り、太陽の光が照りつける。 でも夜は、まるでそんなことなかったかのように、暗く、そして涼しい風が吹く。 少しだけ、寒さを感じる。 そういう時期がね いちば〜ん、怖いんですよ。 ◯ 稲川淳二が年齢的なことを考えてもそう長くはないであろうとすると、見れるうちに生

          赤いはんてんの唄

          蝸旋

          「こっちはネタを作ってこうしてほしい、ああしてほしいって言っても、相方は"うん"しか言わない。それどころかクスリとも笑わない。一番身近な相方が笑わないんだったら、それって俺と組む意味あるのかな?ってなります」 以前マルコポロリのトリオ芸人特集で、キングオブコント決勝常連のGAG福井がそう吐露した瞬間があり、それは私の価値観も大いに揺るがすものだった。 その通りだな、と思った。 私達漫才師セイブアスは、基本全て私のネタをやっているが、相方の丸島はプライドがあるのか、必ず毎

          Ray

          20年前に動画サイトでBUMP OF CHICKENがダイヤモンドを歌っている映像を観た。 目が前髪で完全に覆われたボーカルが柔らかく、且つ、力強く「何回転んだっていいさ」と歌いあげる姿は色気に溢れていて、またあの頃友人関係も部活も勉強も何もかも中途半端だった私の耳に、その曲は応援歌として深く残った。 調べるとドラマの主題歌であった天体観測を歌っているバンドだとわかる。 クラスのカースト上位がどれだけ毎週のように口ずさんでもその天体観測がダサくて仕方なかったのは、おそら

          黒毛和牛上塩タン焼き680円

          『野中さん、奥さんと離婚したみたいですよ』 中村さんは興味なさそうに私に教えてくれた。 「なんで?あんまり覚えてないけど子ども生まれたばっかりじゃなかったっけ?」 『もう1年くらい前じゃないですかね。生まれてます』 「不妊治療とかめっちゃしてなかった?あの人。嫁って元同僚でしょ?」 『してましたよ。野本さんずっと子どもできなくて悩んでましたし。そう。社内恋愛です』 「待望の一子なのに離婚て。不倫かなんか?」 『いや。多分いざ子どもできたら旦那いらないってなったん

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          三文小説編

          この状況を迎えることをなんとしても避けたかったのに、それが不可避となったことに私は絶望していた。 「もう定時過ぎてるんだから帰りなよ」 『いや会社に戻ります』 「残業になるよ。やめなよ」 『でも戻らないとなんで』 後輩の砂川は頑として譲らなかった。 結果として私と砂川は約30分に及ぶ電車内共存を強いられることとなった。 いやマジで他の電車乗ってよ… 4月の部署異動にあわせて一部案件も別部署へ移管しなくてはならないものが何個もあり、そのうちのひとつで私はこの砂川

          騎士団長生かし

          吉沢明歩の欲情温泉旅行淫猥の旅一泊二日、が大好きだ。 もうかなり前の作品だが、現在もエース級に観てしまいます。 〇 というわけで日帰りで温泉に行ってきた。 特に行く理由はなかったが、最近ストレスが非常に溜まりやすく、それを解消する上で一番の方法は温泉に浸かることであるという持論を持っているからだ。 滋養強壮。これはバカにならない。 なんとか近所の健康ランドで騙し騙しストレスを解消してきたが、いよいよそれも効果がきれたのでやむなく本物の温泉地に行くことにしたのだ。

          騎士団長生かし