見出し画像

【読書感想】官僚たちの冬

官僚って普段どんなことをしているんだろう
想像もつきません

まあタイトルから冬というくらいだから
あまりいい現状ではないんでしょう




〇概要

本書は元財務省官僚が書かれたものです
情報としては信用できるものだと思います

本書は政治体制や組織体制、諸外国との比較
など様々なことが書かれていましたが
官僚組織の問題点を一言で言うと
『大企業病』
です

以下2つに分けてお話します

〇専門性の低下


2年以内に異動

官僚は1~2年程度で異動をします
一般の平官僚から課長、部長、事務次官までが
わずか1~2年で異動します
事務次官という官僚組織のトップでもそうです
民間の会社で言うなら
毎年社長が変わっていくようなものです
これは大問題ですよね

現場にしても2年以内に異動してしまうと
仕事を覚えてだんだんわかってきたかな~
という時に異動

これでは専門性は身に付きません

私の以前いた自動車メーカーでもそうでした
会社は少ない人数で多くの仕事に対応するために
『多能工化』を唄い毎年異動させていました

私自身毎年部署異動していました
そのたびに上司や仕事も変わり習熟度は上がりませんでした

会社のいう『多能工化』
本当に何でも一人前に出来るなら素晴らしいですが
Aの仕事、Bの仕事も、Cの仕事も一人前!は非現実的です

現実では誰もが経験が浅くなり
専門性は下がり質が低下していたと思います


話を本書に戻します

財務省の理財局など官僚組織の中でも
主ではないとされている組織には
理財局で一度も務めた経験の無い人が局長に就任します
記憶に新しい森友学園の土地売却に関する
公文書改ざんを指示した局長も現場経験の無い人でした

分析よりビジョン

官僚は政策実施するけど
分析はあまりしないそうです

よく聞く政府設置の〇〇会議の報告書
著者曰く
数百ページあるものもありますが
ほとんどがこれからの政策しか書かれていないそうです

過去の政策の振り返りがほとんどなされていなく
どこが上手くいったのか
どこが上手くいかなかったのか
より上手くいくために今回の政策でどこを工夫したのか
が一切書かれていないそうです

これも私の会社でありました
毎年部署の目標は立てていましたが
去年の結果の分析はしない
とりあえず今年はこの目標でやろう!
と官僚組織と全く同じ
分析なしのビジョン志向でした

やはりどの仕事においても
PDCAは大事なんだと再認識しました

官僚の政治家化

これも先ほどの話から繋がっています
官僚は関係者の利害調整業務が多いそうです
関係者とは政治家、業界団体などです

そうなると利害調整が優先され
正しく過去の分析をし対策するより
調整で決まったビジョンを打ち出すだけになるのです

×過去の分析→政策
〇関係者の利害関係→政策
となってしまっています

任用官僚と政治官僚の曖昧さ

これは日本の官僚組織制度の問題です
官僚は2種類あり
任用官僚:中立的に政策を分析、立案
政治官僚:大臣の意向で動く直属の部下
があります

海外では役割が分かれているのですが
日本では曖昧です
現状では政治官僚が主になっています

政治主導は各国で行われていますが
政策のプロが立案し、判断は政治家がする
という組織になっています

一方日本は明確な区分がないため
中立的立場で政策を立案するプロがいません

〇組織改革の副作用


目的意識が共有できない

橋本内閣の中央省庁再編で合体した弊害があり
・組織が大きくなりすぎてガバナンスが難しいこと
・組織の共通目的が持てないこと
が指摘されています

例えば総務省
電波や地方自治体、消防、郵政など
全く違う分野の仕事があり
組織の共通目的が持てず一つにまとまれていません

超超年功序列

想像以上の年功序列で驚きました
事務次官は年次順です
ほぼ毎年交代し1つ下の後輩に譲る決まりです

一例ですが
2020年の事務次官 1987年入省の人
2021年の事務次官 1988年入省の人
2022年の事務次官 1989年入省の人
2023年の事務次官 1990年入省の人
と1年おきに民間でいう社長の座を後輩に譲っています

これでは組織改革をしようと思い人はいません
なぜなら改革しても1年で後輩に譲る運命にあるからです
改革して波風立てるくらいなら
何もせず前例踏襲して1年やり切る
というのが現状です

こんな恐ろしいことが行われているとは知りませんでした
この人事なら頑張らずに年を重ねるのを待つ方が
生存戦略として優れています
だから組織が硬直化していくんだと思いました

〇全体の感想

本書を読んでいて私のいた会社と
重なる部分が多くありました
大きくて古い組織は硬直化するのが
世の常なのかもしれません

そうならない為に常に新しいことに挑戦や
知識を吸収していかなきゃなと勉強になりました


私の生き様を綴った魂の一冊です
キンドルアンリミテッドだと無料で読めます
よかったら手に取ってみてください


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?