![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57973319/rectangle_large_type_2_1fbbec41c1a5b07b3a4d7613e8601651.png?width=1200)
JW25 兄の雄叫び
【神武東征編】EP25 兄の雄叫び
孔舎衛坂(くさえのさか)の戦いで、中(なか)つ国(くに)の軍勢に敗北を喫した、狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行は、盾津(たてつ)まで撤退した。
現在の東大阪市にある日下(くさか)周辺のことである。
![盾津1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57965757/picture_pc_9734f0db02eb9baa23f9294b102927d6.png?width=1200)
矢傷を負った、長兄の彦五瀬命(ひこいつせ・のみこと)(以下、イツセ)は重い容体となっていた
サノ「兄上・・・。御気分は如何(いかが)ですか?」
イツセ「まずまず・・・といったところや・・・。そ・・・それより、ここにいては、奴らから丸見えっちゃ。もう少し・・・移動するんや。」
サノ「分かりもうした。」
こうして、サノたちは、長髄彦(ながすねひこ)の追撃から逃れるため、大きな竹やぶに身を潜めた。
![竹やぶへ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57967191/picture_pc_68907fb264bd105730deaf79b40910cb.png?width=1200)
サノ「この竹やぶの中であれば、敵に見つかることはなかろう。」
イツセ「こ・・・ここでしばらく・・・よ・・・様子を見ようぞ。」
サノ「ここでしばらく・・・ということは、ここにも伝承が残っているのですな?」
サノのぼやきに対し、小柄な剣根(つるぎね)が返答した。
剣根(つるぎね)「その通りですぞ! その名も竹渕神社(たこちじんじゃ)にござりまする。現在の大阪府(おおさかふ)八尾市(やおし)竹渕(たけふち)にある神社にござる。」
![竹渕神社1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57967728/picture_pc_909ec37480022468bd87c587dc7b9b7b.png?width=1200)
![竹渕神社2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57968040/picture_pc_5e1562cf9d93c4e148a118b5ccc057cb.png?width=1200)
![竹渕神社3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57968068/picture_pc_05c21c3322f79db43bfb627115069d09.png?width=1200)
![竹渕神社4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57968096/picture_pc_06ee3ef5aaa47b82e821dc5c93acea05.png?width=1200)
![竹渕神社5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57968112/picture_pc_e652f4bccf3b6552cf0ccf565b64f636.png?width=1200)
![竹渕神社鳥居](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57968126/picture_pc_68f13b4c5254e6736775505f1f82fef4.png?width=1200)
![竹渕神社拝殿](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57968141/picture_pc_76fbd079ba352d565da211ba5752cc09.png?width=1200)
サノ「神社と地名の読み方が違うのか・・・。」
剣根(つるぎね)「御意。作者が、いろいろ調べたそうですが、理由は分からなかったとの由。」
剣根が自慢気に語っていた時、突然、ここにいてはいけない人物の声が轟(とどろ)いた。
長髄彦(ながすねひこ)(以下、スネ)である。
スネ「竹やぶに身ぃ隠しても、バレバレなんやっ。サノォ! 覚悟しぃや!」
サノたちは咄嗟に身を伏せ、息を殺した。
竹やぶの中へと突き進む長髄彦軍。
そのとき、彼らの眼前に大きな池が現れた。
スネ「ん? 深い渕(ふち)があるだけやないか。もしや、渕に飛び込んで隠れてるんやないか? おい! おまえら潜って調べて来いっ!」
兵士い「えっ? 嘘やろ?」
兵士ろ「潜って隠れるやつなんておるんか? ホンマ、勘弁してほしいわ。」
兵士は「せやな。潜水手当、出してもらわな、わてら納得しいひんで!」
スネ「なんや? おまえら、わての命令に従えん、言うんか?」
兵士いろは「いえっ、そんなまさかっ。喜んで!」×3
長髄彦軍の兵士たちは渕の中まで潜って捜索したが、結局、サノたちを見つけることはできなかった。
スネ「神の力でも借りたんか? しゃあない、コソコソ逃げ回る奴、相手にしても、何の誉(ほま)れにもならへんわ・・・。おいっ! おまえらっ、帰るで。」
サノたちは長髄彦軍に見つかることなく、難を逃れたのであった。
剣根(つるぎね)「このような伝承が残っておりまする。ちなみに、江戸時代に書かれた『竹渕郷社縁起(たこちごうしゃえんぎ)』の話にござりまする。」
サノ「とにかく助かった。それで、ここにしばらく滞在したゆえ、神社ができたということか・・・。」
ここで次兄の稲飯命(いない・のみこと)と三兄の三毛入野命(みけいりの・のみこと)(以下、ミケ)が説明を始めた。
稲飯(いなひ)「次に、わしらが辿り着いた場所が、茅渟(ちぬ)の山城水門(やまきのみなと)というところっちゃ。紀元前663年5月8日のことっちゃ。」
ミケ「この地は、山井水門(やまのいのみなと)とも呼ばれてるっちゃ。ちなみに、茅渟とは、現在の大阪府南部、昔で言う和泉国(いずみ・のくに)の海ってことやじ。」
稲飯(いなひ)「イツセの兄上や、傷ついた兵士たちが傷を洗ったことで、海の色が赤く染まったかい(から)、それにちなんで、血沼(ちぬ)となったみたいやな。」
![水門へ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57970359/picture_pc_c1a73f2bd9e89bc4653c800fc5c12fb8.png?width=1200)
イツセ「そ・・・それで、茅渟と書かれるようになったわけは、な・・・なぜだ?。」
ミケ「仏教が入ってきて、血が穢(けが)れとなったんでしょうな。それまでの我が国には、血に対しての穢れ感はなかったのやも・・・。」
サノ「兄上! それは納得できませぬ。穢れを祓(はら)う禊(みそぎ)は、神代(かみよ)の頃からあるのですぞ。」
ミケ「ま・・・まあ、諸説ありってところやな。ちなみに、チヌはクロダイの別名ともなっていて、大阪湾は古来より、クロダイの豊富な海なんや。それで、チヌの海と呼ばれてたという説もあるみたいやじ。」
![クロダイ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57970625/picture_pc_baf25b98ff7eae942824c92058a858fb.png?width=1200)
そのとき、長兄のイツセが雄叫びを上げた。
イツセ「慨哉(うれたかきや:残念だ)! わ・・・わしは・・・ますらおでありながら・・・卑(いや)しい賊の手にかかり・・・仇(あだ)も討てずして死ぬとはっ!」
サノ「あ・・・兄上!?」
稲飯(いなひ)「兄上が雄叫びを上げたので、この地は、男水門(おのみなと)とも呼ばれるようになったっちゃ。現在は天神の森とも呼ばれ、それを守護する目的で、男神社(おのじんじゃ)が建ってるっちゃ。」
ミケ「男神社は、今の大阪府は泉南市(せんなんし)男里(おのさと)にあるっちゃ。『おたけびの宮』とも呼ばれてるっちゃ。」
![男水門1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57971123/picture_pc_92708d3342375302f157587ab0ecc685.png?width=1200)
![男水門2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57971373/picture_pc_cb05a5b381092eabe302ce570246a9cb.png?width=1200)
![男水門3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57971720/picture_pc_7dfa99007588488b295bf5aafd5a968f.png?width=1200)
![男水門4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57971904/picture_pc_d3d0d3da6c56f74840a8e74a3336d53f.png?width=1200)
![男水門5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57972083/picture_pc_560c9bf3f8a907daa0cd7e02c058920f.png?width=1200)
![男水門6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57972313/picture_pc_5ff475b3b449beeeb7a8b6ed23ed6c98.png?width=1200)
![天神の森](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57972324/picture_pc_16f6f44d49df451b655c62ae2f67eb61.png?width=1200)
![画像19](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57972566/picture_pc_6c512eabd7425a42b9da98758d20b90c.png?width=1200)
![画像20](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57972732/picture_pc_7ebb14963e1259990eeabc0c39a8262c.png?width=1200)
![男神社鳥居](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57972825/picture_pc_fb4e966091e9d79ac84ee527efda7ee3.png?width=1200)
![男神社拝殿](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57972832/picture_pc_acac21d1a011b1e0d499efe43220e179.png?width=1200)
イツセ「そ・・・そういうことで、さらばだ・・・。」
サノ「あ・・・兄上?!」
イツセ「・・・ガクッ。」
サノ「あにうえぇぇぇ!!!」
彦五瀬命は、こうして息を引き取ったのであった。
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