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JW107 出雲ふたたび
【懿徳天皇編】エピソード8 出雲ふたたび
出雲(いずも)に向かった、第四代天皇、懿徳天皇(いとくてんのう)こと、大日本彦耜友尊(おおやまとひこすきとも・のみこと)(以下、スッキー)。
![出雲へ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/72344552/picture_pc_b360e48e4d2d9aaf51666041e11a6d72.png?width=800)
皇太子の観松彦香殖稲尊(みまつひこかえしね・のみこと)(以下、松彦)たちを連れての旅である。
![出雲行幸メンバー](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/72344564/picture_pc_ab49efc12173e7d9028a5c69693248ac.png?width=800)
そして、大臣(おおおみ)の磯城葉江(しき・の・はえ)と物部出雲色(もののべ・の・いずものしこ)(以下、イズモ)による『古今和歌集序聞書(こきんわかしゅう・じょ・ききがき)・三流抄(さんるしょう)』の解説が続くのであった。
葉江(はえ)「その名もズバリ、『古今和歌集(こきんわかしゅう)』の解説本ですよ。『古今和歌集』というのは、10世紀初頭に編纂(へんさん)された歌集のことなんですが、それには序(じょ)というものが書かれているんですよ。」
イズモ「まあ、いわゆる序文っちゅうヤツやな。」
葉江(はえ)「その序の解釈について、様々な説が出ておりまして、それについて書かれた書物が『聞書(ききがき)』というものです。」
イズモ「いろんな人が、いろいろ解釈して解説本を書きまくったみたいでな、その一つが『三流抄(さんるしょう)』やねん。」
松彦「解説本であることは分かったが、なにゆえ妄想であると考えられるのじゃ?」
葉江(はえ)「いろいろ書かれているということは、こっちが正しい、いや、こちらが正しいと持論をぶつけ合うことになるわけです。」
イズモ「せやな。そこで、こういう由来が有るんやでぇ・・・と、有ること無いこと書く奴が出てくるっちゅうわけや。」
ここで、スッキーの次男、武石彦奇友背命(たけしひこくしともせ・のみこと)(以下、たけし)が唸った。
たけし「か・・・完全に、詐欺じゃねぇか。」
葉江(はえ)「そうですね。有る有る詐欺ですね。」
そのとき、イズモの弟、物部出石心(もののべ・の・いずしごころ)(以下、いずっち)が叫んだ。
いずっち「出雲が見えてきたでぇ!」
スッキー「おお、ついに出雲に辿り着いたか・・・。」
そこに現れたのは、出雲の君主、櫛瓺前(くしみかさき)の息子、櫛月(くしつき)(以下、月)であった。
月「ようこそ、出雲へ!」
スッキー「おお、貴殿が櫛瓺前殿の御子息、櫛月殿か・・・。」
月「月(つき)と呼んでください。今回の行幸を機に、僕が君主になったのさ。」
スッキー「こ・・・ここで、代替わり報告を済ませようというわけだな。」
月「御明察! せっかく出雲に来るんだから、この機会を逃す手はないと思ったのさ。」
松彦「そ・・・それで、大王。出雲に来て、何をなされたのですか?」
スッキー「それがな・・・何もしておらぬのじゃ。」
松彦・たけし「は?」×2
いずっち「ど・・・どういうことでっか?」
スッキー「実はな・・・。何もしておらぬが、ある御方に会っておるのじゃ。」
松彦・たけし・いずっち「ある御方?」×3
月「その通り! 大王は、今回の行幸で、超重要な御方に出会ってるのさ。」
そのとき、雷鳴が轟き、稲妻と共に、ヒゲを豪快に生やした男が、疾風の如く出現した。
ヒゲの男「そげだ(そうだ)! 俺に会ったんだに!」
スッキー「あっ! あなた様が・・・。」
ヒゲの男「そげだ。その通りだっちゃ!」
松彦「だ・・・誰じゃ!?」
ヒゲの男「俺か? そう、俺が、俺こそが、素戔嗚(すさのお)だっちゃ! 今日は特別に『スーさん』と呼ばせてやるっ!」
一同「ええぇぇぇ!!!」×9
スッキー「ス・・・スーさん。お初にお目にかかりまする。」
スー「うむ。よく分からんが、鎌倉時代後期に書かれた『古今和歌集序聞書・三流抄』で、俺に会ってるそうだな?」
スッキー「そ・・・その通りにござる。そして、見送られる際に、スーさんが歌を詠んでおられるのです。」
スー「そげだ(そうだ)。名残を惜しんで、歌を詠んだのじゃ・・・。それでは聞いてください。」
立ち還る 道は山路の 遠くとも 尋ねば問はん 問ふと知るかも
いずっち「これが、人の世となって、初めて詠まれた和歌とされてるんや。」
たけし「そもそも、スーさんは、和歌の祖とされてるんだよな?」
スー「そげだ(そうだ)。俺が、俺こそが、和歌の祖なんだに!」
いずっち「神の世で、初めて詠んだ歌が、下記の歌やで。」
八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を
スー「よく勉強しておるのう。そげだ(そうだ)。」
そのとき、出雲の君主『月』が不敵に笑い始めた。
月「はっはっはっはっは(笑)」
いずっち「何がおかしいんやっ!」
月「どうも、初めてじゃないかもしれないんだよね。」
一同「はっ?」×9
月「実は、国立国会図書館蔵『古今和歌集序註(こきんわかしゅう・じょ・ちゅう)』に、ほとんど同じ説話が載っているのさ。」
笑う『月』に対し、磯城五十坂彦(しき・の・いさかひこ)(以下、イサク)が喰いつく。
イサク「どういう意味なんだよい!?」
月「実は・・・こちらの説話では、スーさんに会ったのは、三代目とされてるのさ!」
スッキー「な・・・なにぃぃ!!」
衝撃の展開。
いったい、どうなってしまうのか・・・。
次回につづく
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