見出し画像

JW107 出雲ふたたび

【懿徳天皇編】エピソード8 出雲ふたたび


出雲(いずも)に向かった、第四代天皇、懿徳天皇(いとくてんのう)こと、大日本彦耜友尊(おおやまとひこすきとも・のみこと)(以下、スッキー)。

出雲へ

皇太子の観松彦香殖稲尊(みまつひこかえしね・のみこと)(以下、松彦)たちを連れての旅である。

出雲行幸メンバー

そして、大臣(おおおみ)の磯城葉江(しき・の・はえ)と物部出雲色(もののべ・の・いずものしこ)(以下、イズモ)による『古今和歌集序聞書(こきんわかしゅう・じょ・ききがき)・三流抄(さんるしょう)』の解説が続くのであった。

葉江(はえ)「その名もズバリ、『古今和歌集(こきんわかしゅう)』の解説本ですよ。『古今和歌集』というのは、10世紀初頭に編纂(へんさん)された歌集のことなんですが、それには序(じょ)というものが書かれているんですよ。」

イズモ「まあ、いわゆる序文っちゅうヤツやな。」

葉江(はえ)「その序の解釈について、様々な説が出ておりまして、それについて書かれた書物が『聞書(ききがき)』というものです。」

イズモ「いろんな人が、いろいろ解釈して解説本を書きまくったみたいでな、その一つが『三流抄(さんるしょう)』やねん。」

松彦「解説本であることは分かったが、なにゆえ妄想であると考えられるのじゃ?」

葉江(はえ)「いろいろ書かれているということは、こっちが正しい、いや、こちらが正しいと持論をぶつけ合うことになるわけです。」

イズモ「せやな。そこで、こういう由来が有るんやでぇ・・・と、有ること無いこと書く奴が出てくるっちゅうわけや。」

ここで、スッキーの次男、武石彦奇友背命(たけしひこくしともせ・のみこと)(以下、たけし)が唸った。

たけし「か・・・完全に、詐欺じゃねぇか。」

葉江(はえ)「そうですね。有る有る詐欺ですね。」

そのとき、イズモの弟、物部出石心(もののべ・の・いずしごころ)(以下、いずっち)が叫んだ。

いずっち「出雲が見えてきたでぇ!」

スッキー「おお、ついに出雲に辿り着いたか・・・。」

そこに現れたのは、出雲の君主、櫛瓺前(くしみかさき)の息子、櫛月(くしつき)(以下、月)であった。

月「ようこそ、出雲へ!」

スッキー「おお、貴殿が櫛瓺前殿の御子息、櫛月殿か・・・。」

月「月(つき)と呼んでください。今回の行幸を機に、僕が君主になったのさ。」

スッキー「こ・・・ここで、代替わり報告を済ませようというわけだな。」

月「御明察! せっかく出雲に来るんだから、この機会を逃す手はないと思ったのさ。」

松彦「そ・・・それで、大王。出雲に来て、何をなされたのですか?」

スッキー「それがな・・・何もしておらぬのじゃ。」

松彦・たけし「は?」×2

いずっち「ど・・・どういうことでっか?」

スッキー「実はな・・・。何もしておらぬが、ある御方に会っておるのじゃ。」

松彦・たけし・いずっち「ある御方?」×3

月「その通り! 大王は、今回の行幸で、超重要な御方に出会ってるのさ。」

そのとき、雷鳴が轟き、稲妻と共に、ヒゲを豪快に生やした男が、疾風の如く出現した。

ヒゲの男「そげだ(そうだ)! 俺に会ったんだに!」

スッキー「あっ! あなた様が・・・。」

ヒゲの男「そげだ。その通りだっちゃ!」

松彦「だ・・・誰じゃ!?」

ヒゲの男「俺か? そう、俺が、俺こそが、素戔嗚(すさのお)だっちゃ! 今日は特別に『スーさん』と呼ばせてやるっ!」

一同「ええぇぇぇ!!!」×9

スッキー「ス・・・スーさん。お初にお目にかかりまする。」

スー「うむ。よく分からんが、鎌倉時代後期に書かれた『古今和歌集序聞書・三流抄』で、俺に会ってるそうだな?」

スッキー「そ・・・その通りにござる。そして、見送られる際に、スーさんが歌を詠んでおられるのです。」

スー「そげだ(そうだ)。名残を惜しんで、歌を詠んだのじゃ・・・。それでは聞いてください。」


立ち還る 道は山路の 遠くとも 尋ねば問はん 問ふと知るかも


いずっち「これが、人の世となって、初めて詠まれた和歌とされてるんや。」

たけし「そもそも、スーさんは、和歌の祖とされてるんだよな?」

スー「そげだ(そうだ)。俺が、俺こそが、和歌の祖なんだに!」

いずっち「神の世で、初めて詠んだ歌が、下記の歌やで。」


八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を


スー「よく勉強しておるのう。そげだ(そうだ)。」

そのとき、出雲の君主『月』が不敵に笑い始めた。

月「はっはっはっはっは(笑)」

いずっち「何がおかしいんやっ!」

月「どうも、初めてじゃないかもしれないんだよね。」

一同「はっ?」×9

月「実は、国立国会図書館蔵『古今和歌集序註(こきんわかしゅう・じょ・ちゅう)』に、ほとんど同じ説話が載っているのさ。」

笑う『月』に対し、磯城五十坂彦(しき・の・いさかひこ)(以下、イサク)が喰いつく。

イサク「どういう意味なんだよい!?」

月「実は・・・こちらの説話では、スーさんに会ったのは、三代目とされてるのさ!」

スッキー「な・・・なにぃぃ!!」

衝撃の展開。

いったい、どうなってしまうのか・・・。

次回につづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?