JW130 木国の潮動事件
【孝安天皇編】エピソード7 木国の潮動事件
前回、ついに磯城葉江(しき・の・はえ)が引退した。
そして、この物語のオリジナル設定として、甥っ子の磯城五十坂彦(しき・の・いさかひこ)(以下、イサク)が大臣(おおおみ)に就任したのであった。
イサク「大臣になったよい! 頑張るよい!」
意気込むイサクの傍らで、第六代天皇、孝安天皇(こうあんてんのう)こと、日本足彦国押人尊(やまとたらしひこくにおしひと・のみこと)(以下、ヤマ)が呟いた。
ヤマ「まあ『おりじなる設定』ってヤツだから、特に活躍することはねぇんだけどよぉ。」
イサク「そんなこと言ってほしくないんだよい!」
ヤマ「仕方ねぇだろ。」
そんなやり取りをしている時、中臣伊香津臣(なかとみ・の・いかつおみ)(以下、イカ)が慌てた様子で駆け込んできた。
イカ「大王(おおきみ)! 大変なことにあらしゃいます!」
ヤマ「おお、イカか。どうした?」
イカ「潮動(うしおや)! 冠水(かんすい)! 木国(き・のくに)っ! 潮動(うしおや)!」
ヤマ「ちょっと待てよ。落ち着けって。何があったんだ?」
イカ「き・・・木国で、潮動があったそうで・・・。平野部が、平野部が冠水したのであらしゃいますよって、田畑が・・・。田畑が・・・。」
ヤマ「潮動ってことは、津波が起きたってことか!?」
イカ「津波というより、川が氾濫(はんらん)したようにあらしゃいます。」
イサク「大王! どうするんだよい!」
ヤマ「どうするって言われてもなぁ。とにかく、木国の民に食い物を送らねぇと・・・。」
イカ「これは神の祟(たた)りではあらしゃいませんか?」
ヤマ「えっ? なんで、そうなるんだよ!?」
イカ「我々の時代、自然災害の原因は、全て神様なのであらしゃいます。」
ヤマ「ってことは、今回の潮動を引き起こした神がいるってことだよな?」
イカ「そうなりますなぁ。」
ヤマ「よぉし、こうなったら、ちょっくら禊(みそぎ)をして、寝ることにするぜ。」
イサク「寝るって、どういう意味だよい!」
ヤマ「身を清めて、心を安んじめて、それで寝たら、だいたい神様が教えてくれるんだよ!」
イサク「し・・・信じられないんだよい!」
ヤマ「大丈夫だ。汝(いまし)が信じていようと無かろうと、出てくるモンは出てくんだ。」
こうして、ヤマは寝たらしい。
そして、夢の中で神託を受けたのであった。
伝承では、具体的な記述がないので、今回は天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)が登場したことにしたい。
アマ「ヤマ・・・。寝るとは・・・汝(いまし)にしては、上策であるぞ。」
ヤマ「汝(いまし)にしては・・・って、そんなこと言わなくてもいいだろ?」
アマ「それより、木国の潮動のことが気がかりなのであろう?」
ヤマ「わ・・・分かってんじゃねぇか。」
アマ「ヤマ・・・。サノは、そのような言葉遣いではなかったぞ!」
ヤマ「ご・・・御初代様も、似たようなことを? と・・・とにかく、さっさと教えろよ!」
アマ「そのような、口の利き方をするのなら、わらわは何も教えぬぞ!」
ヤマ「す・・・すみませぬ。ど・・・どうすれば良いでしょうか?」
アマ「安心致せ。瀛津世襲(おきつよそ)に速秋津彦命(はやあきつひこ・のみこと)と速秋津姫命(はやあきつひめ・のみこと)を祀(まつ)らせよ。」
ヤマ「なんで、そうなんだよ!?」
アマ「ん?」
ヤマ「い・・・いえ、なぜそうなるのでしょうか?」
アマ「速秋津彦と速秋津姫の御指名じゃ。とにもかくにも、そうすれば、災厄から逃れられるぞ。」
ヤマ「か・・・かしこ、かしこまりまして、かしこ!」
翌日、ヤマは津守瀛津世襲(つもり・の・おきつよそ)(以下、オキツ)を呼び出した。
ついでに、傍らには武角河依(たけつぬかわより)(以下、河依)という人物も来ていた。
ヤマ「おお、オキツ。汝(いまし)に木国に行ってもらいてぇんだ。」
オキツ「速秋津彦命と速秋津姫命を祀るんだぜ!」
ヤマ「分かってんじゃねぇか。」
オキツ「紙面の都合だぜ!」
ヤマ「それで、そこの武角河依(たけつぬかわより)・・・・・・。誰だ?」
河依「我(われ)にも答えられませぬ。伝承に登場しているとしか・・・。」
オキツ「一緒に派遣されてるんだぜ。だから、連れてくんだぜ!」
ヤマ「よし! 行けい! オキツ! 河依!」
こうして、二人は木国に派遣された。
そして、神託の通りに速秋津彦命と速秋津姫命を祀ったのであった。
オキツ「これが鳴神社(なるじんじゃ)の起源と言われてるぜ。」
河依「二千年後の和歌山市(わかやまし)は鳴神(なるかみ)に鎮座している神社ですな?」
オキツ「その通りだぜ!」
そこに、木国の住民がやって来た。
木国の住民(甲)「ホンマおおきに。助かりました。」
オキツ「気にしなくていいぜ。」
木国の住民(乙)「せやけど、なんで『オキツはん』が選ばれたんや?」
河依「さあ、なにゆえであろうか?」
オキツ「そ・・・それは、我(われ)が教えてほしいくらいなんだぜ!」
木国の住民(丙)「そないなことより、今回で『オキツはん』、クランクアップらしいで!」
オキツ「初耳だぜ! それじゃあ、そういうことで、お別れだぜ!」
河依「ええぇぇ!!」
こうして、木国の潮動騒動と共に、オキツは引退したのであった。
つづく
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