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JW35 神と神

【神武東征編】EP35 神と神


熊野の神の試練を乗り越えた狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)の元に、高倉下(たかくらじ)という男が現れ、更には武甕雷神(たけみかづち・のかみ)(以下、タケミー)と天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)が現れた。

英虞崎楯ヶ崎

神々の説明は続く。

アマ「出雲(いずも)の大国主神(おおくにぬし・のかみ)に国を譲(ゆず)ってもらった時、タケミーを派遣したのじゃが、そのときも、いろいろ抵抗勢力がおったのじゃ。」

タケミー「まあ、そんな昔のことは・・・。それより、今回の話ですぞ。」

アマ「そうであったな。そこで、タケミーは、こう言ったのじゃ。」

タケミー「わしが参らずとも、国譲りの交渉に使った剣を下(くだ)せば、自(おの)ずと平(たい)らかとなりましょう。」

アマ「諾(うべ)なり。」

ここで、いきなり日臣命(ひのおみ・のみこと)が説明を始めた。

日臣(ひのおみ)「諾なり・・・とは、よかろう、という意味っちゃ。」

サノ「それで、高倉下の夢に現れたと?」

タケミー「そうじゃ。家の倉に置いておくゆえ、天孫のところに持って行き、献上しろと伝えたのじゃ。」

高倉下(たかくらじ)「倉の床に、さかさまに立っておりました。」

サノ「さかさま?」

タケミー「柄(つか)の部分が下で、刃の方が上になるように置いたのじゃ。」

ここで、博学の天種子命(あまのたね・のみこと)が問いかけた。

天種子(あまのたね)「なにゆえ、そのようなことを?」

タケミー「これを見れば、絶対に神の意志が働いていると、馬鹿でも分かるであろう?」

高倉下「ば・・・馬鹿ですか・・・。」

タケミー「い・・・いやっ、すまん。そういう意味では・・・。」

アマ「とりあえず、良かったではないか。狭野! もうひと踏ん張りぞ! 頑張るのじゃぞ!」

そう言って帰ろうとする二柱(ふたはしら)の神。

そのとき、サノの息子、手研耳命(たぎしみみ・のみこと)(以下、タギシ)が質問を投げかけた。

タギシ「天照様。なにゆえ、高倉下だったのでしょうか?」

アマ「それを決めたのは、タケミーじゃ。汝(いまし)が説明せよ。」

タケミー「さ・・・されど『記紀』には書かれておらぬこと。申してよいのかどうか・・・。」

アマ「許すっ!」

タギシ「許すっ!」

タケミー「調子に乗るなよ、タギシ。」

タギシ「さ・・・作者の陰謀にござる。」

タケミー「いいだろう。説明しておいてやろう。こやつは、熊野(くまの)の神邑(みわ・のむら)の住民ではない。饒速日(にぎはやひ)の息子じゃ。別名を天香語山(あまのかごやま)と言う。」

サノ一行「ええぇぇぇぇ!!!!」×11

高倉下(たかくらじ)「す・・・すみません。不器用・・・ですから。」

剣根(つるぎね)「饒速日殿の御子息が、敵対する我らを救って良かったのですか?」

高倉下(たかくらじ)「父は父、それがしはそれがし・・・。お許しくだされ。不器用・・・ですから。」

サノ「いっちゃが、いっちゃが(いいよ、いいよ)。汝(いまし)は汝ぞ。気にすることはない。」

高倉下(たかくらじ)「サ・・・サノ様・・・。」

タケミー「おお、そうじゃ! 他にも伝えておくべきことがあった。」

サノ「他にも重大な事柄があると?」

タケミー「熊野で常世(とこよ)に旅立った汝(いまし)の兄のことじゃ。」

サノ「兄上?」

タケミー「稲飯(いなひ)は鋤持神(さいもちのかみ)となった。農具の鋤(すき)のような鋭い歯を持つサメの神じゃ。」

サノ「サ・・・サメ?」

タケミー「そうじゃ。では、さらばじゃ。」

サノ「し・・・しばし、しばしお待ちくだされ!」

タケミー「何じゃ? 申すべきことは、全て申したぞ。」

サノ「我には、もう一人、兄がおりまする。ミケの兄上にござりまする。ミケの兄上は?」

タケミー「三毛入野(みけいりの)は生きておるゆえ、まだ神にはなっておらぬ。」

サノ「なっ!? ミケの兄上は生きておられると?」

タケミー「じゃが(そうだ)。」

タギシ「タケミーも高千穂の言葉を?」

タケミー「一度言ってみたかったんじゃ。それと、天照様以外は、タケミー禁止ぞ!」

タギシ「す・・・すみませぬっ!」

サノ「ミ・・・ミケの兄上が生きておられる。」

タケミー「ミケの話は、異国(とつくに)の言葉でいう、スペシャ・・・じゃない。スパイラ・・・じゃない。スペクタル?」

このとき、颯爽と日臣命の息子、味日命(うましひ・のみこと)が説明を補足した。

味日(うましひ)「三毛入野様の物語については、スピンオフにて紹介するっちゃ!」

タケミー「そうっ! それっ! スピンオフ!」

こうして二柱の神は高天原(たかまのはら)に帰っていった。

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