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JW134 旅先でも解説を

【孝安天皇編】エピソード11 旅先でも解説を


山陰地方で横行している賊を退治し、水稲耕作を普及するため、そして、出雲(いずも)に対し、ヤマト王権に服属するよう交渉するため、大日本根子彦太瓊尊(おおやまとねこひこふとに・のみこと)(以下、笹福(ささふく))は旅立った。

紀元前321年、皇紀340年(孝安天皇72)のことである。

また、この物語のオリジナル設定として、笹福の兄、大吉備諸進命(おおきびのもろすすみ・のみこと)(以下、ススム)も共に向かうこととなった。

そこに、一人の男が駆けつけてきた。

笹福とススムの叔父、和邇日子押人(わにのひこおしひと)(以下、ひこお)である。

系図1(ひこお)

ひこお「皇子(みこ)! 拙者(せっしゃ)も付いて参りまするぞ!」

笹福「えっ? 叔父御(おじご)も?」

ひこお「姉上に頼まれたのじゃ。」

ススム「姉上? 誰のことじゃ?」

ひこお「阿呆! 汝(なびと)らの母御前(ははごぜ)、押媛(おしひめ)様に決まっておろう!」

笹福「母上の弟だったのですか?」

ひこお「この物語では、そういうことになってしもうた。どっちが年上なのか、全く記載されておらぬからなぁ。」

系図2(押媛)

ススム「まあ、登場順でいけば、母上の方が先に登場しておりまするゆえ、それで良いのではありませぬか?」

ひこお「そ・・・そういうことにしておいてくれい。」

笹福「ところで、兄上? これから我らは、どういった経路で向かうのですか?」

ススム「うむ。まずは、淡海(おうみ)を経由して、気比(けひ)に向かう。」

ひこお「淡海(おうみ)とは、琵琶湖(びわこ)のことじゃな?」

ヤマトと淡海(琵琶湖)の位置関係

ススム「左様。更には、淡海国(おうみ・のくに)という地域としても呼ばれておりまするぞ。そして、伝承では、そこを経由して、気比(けひ)に向かったと書かれておるのじゃ。」

気比と淡海の位置関係

笹福「それで・・・気比とは?」

ひこお「気比は、福井県敦賀市(つるがし)のことじゃな?」

ススム「左様。我らの時代は、角鹿国(つぬが・のくに)と呼ばれておりもうした。」

笹福「角鹿? 気比という名は、どこにいったのでござる?」

ススム「気比とは、角鹿に鎮座する気比神宮(けひじんぐう)のことを指すのじゃ。」

笹福「気比神宮?」

ひこお「去来紗別命(いざさわけ・のみこと)という神様を祀った神社じゃな? たしか、別名が気比大神(けひのおおかみ)なのじゃ。食物の神様と言われておるぞ。」

気比神宮の大鳥居
気比神宮(外拝殿)

ススム「左様。いつから鎮座しているのか分かりませぬが、我らの時代には存在していたはずでござる。」

笹福「はず・・・というのは?」

ススム「伝承において、気比に向かったと記述されておるのじゃ。そう考えるのが自然であろう?」

笹福「とにもかくにも、そこから山陰地方へと進んでいくのですな?」

旅の経路

ススム「そういうことになるのう。海岸に沿って進んでいったのであろうな。」

笹福「では、気比を目指し、淡海を進んで参りましょうぞ!」

こうして一行は、淡海を進んだ。

その道中で、ひこおが叫ぶのであった。

ひこお「皇子! 滋賀県東近江市(ひがしおうみし)に辿り着きましたぞ!」

笹福「東近江市? いったい何を言っておるのじゃ?」

ひこお「この地で、神社が創建されたのでござる。その名も、建部神社(たてべじんじゃ)にござりまする。」

ススム「祭神は、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)であったな?」

ひこお「その通りにござる。二千年後の地名で言えば、五個荘伊野部町(ごかしょう・いのべちょう)にござりまするぞ。この地の箕作山(みつくりやま)の麓に鎮座されたのでござる。」

建部神社(鳥居)
建部神社(拝殿)

笹福「で・・・伝承と関係ないのでは?」

ひこお「伝承とは全く関わり合いがありませぬが、大王(おおきみ)の御世に創建された神社にござりまするぞ! 紹介しておかねばなりますまい。」

ススム「実は、父上から頼まれておってな・・・。」

笹福「大王から?」

ススム「せっかく淡海を通過するんだ。ついでに神社紹介しとけよっ! と申されてな。」

笹福「ち・・・父上らしい。」

ススム「ちなみに、その後、もう一柱(ひとはしら)が合祀(ごうし)される予定じゃ。」

笹福「それは、どのような神様なのですか?」

ススム「それは言えん!」

笹福「な・・・なにゆえ?」

ひこお「まだ生まれてないからにござる。」

笹福「まだ生まれていない?」

ひこお「左様。日本武尊(やまとたける・のみこと)にござるゆえ!」

笹福「だ・・・誰じゃ?」

ススム「叔父御ぉ。言ってはならぬことを・・・。」

ひこお「つ・・・つい、うっかり、勢いで言ってしまった・・・。」

笹福「き・・・聞かなかったことにすれば良いのじゃな?」

ススム「そうしてくれい。汝(いまし)の昆孫(こんそん)などと、口が滑っても言えぬわ。」

笹福「兄上・・・言っておりまするが・・・。」

ひこお「まあ、昆孫などと言われても、読者も笹福も、ピンと来ぬであろうし、良いではないか。遠い先の世の話よ。」

ススム「そうじゃな。十二代目の息子と言った方が分かりやすいかもしれぬが、どうせ言っても分からぬであろうしな。」

笹福「ですから、兄上、言っておりまするが・・・。」

こうして、山陰地方に向けての旅は続くのであった。

一行は、無事に気比(けひ)に辿り着き、そして、次回は山陰地方を旅することができるのであろうか・・・。

つづく

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