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光る君へ 第一回の感想 ~馬鹿の巧みな使い方~

第一回、観ました。


安倍晴明と同僚(付き人?)

冒頭の場面で、少しズッコケてしまいました。

安倍晴明が言います。

「紫微垣(しびえん)の天蓬(てんほう)の星が、いつになく強い光を放っている。」

初っ端から、意味不明な台詞。

紫微垣は、中国の最高神とも言うべき、天帝がいる星の領域。

天蓬の星は、北斗七星の第一星(北極星に一番近い星)です。

ようするに、天帝がいるところ=天皇のいるところ=朝廷となり、そこの一番近い星が強烈に光っている・・・というわけで、隣にいた同僚と思われる陰陽師が尋ねます。

「都に凶事が起きるのですか?」

いやいや、あんたも陰陽師の端くれでしょう?

部外者みたいな、まるでテレビリポーターみたいな質問しなくても・・・。

ここのどこが悪いかと言うと、同僚(お付きの方かも?)が、他人事のように尋ねてしまう事。

こうすると、視聴者にとっても、他人事になってしまうんですよね。

ここは同僚(付き人?)も「えっ!? 紫微垣の天蓬の星が!? な・・・なにゆえ、そのようなことに・・・。」

晴明「慌てるでない。」

同僚(付き人?)「されど、都に凶事が起きるやもしれませぬぞ。」

晴明「これが天の意志というのであれば、人である我らに、何が出来ようぞ・・・。」

同僚(付き人?)「左様ではございますが・・・。」

晴明「ん? 雨が・・・降るな・・・。」

同僚(付き人?)「えっ?」

こんな展開の方が、何かよく分からないけど、ヤバイ事が起きようとしている・・・と視聴者は思い、物語の世界に引き込まれたと思うのです。


為時の心情変化

このあと、ヒロインの家が紹介されますが、父親の為時(ためとき)さんのプライドが描かれていましたね。

大納言と接触できる機会があるというのに、自分を売り込まない人物。

公私の混同はいけないと思っている人物でした。

それに対し、同僚の宣孝(のぶたか)さんが忠告します。

「大納言に会いに行け。」

その後の場面で、為時さんが史記(しき)の始皇帝について書かれたところを読んでいましたね。

ちょうど「馬鹿」の語源となる部分を読んでいたわけですが、ここは素晴らしかったです。

ヒロインと道長が「馬鹿」について語らう場面が、後々出て来ます。

互いの人間性を知る「きっかけ」として活用されていました。

ただ、それだけでなく、為時さん自身の心の変化という意味でも、有効に活用されていました。

為時さんは、どうして、昼日向の縁側で、この場面を読んでいたのか・・・。

プライドの高さゆえ、なかなか任官出来ない自分に、もっと権力者に阿(おもね)るべきだと言い聞かせていたわけですね。

馬鹿の語源となる故事は、下記の通りです。

権力者の趙高(ちょう・こう)が、皇帝の前に鹿を連れて来て「馬です。」と言う。

「何を言っているんだ。鹿じゃないか。」と言った人々は排除され、「たしかに、馬ですね。」と言った人々は生き残りました。

「鹿じゃないか。」と言った事により、家族を路頭に迷わせた人々と自分を重ね合わせていたわけですね。

本当に秀逸な作りだと思いました。


源氏物語のオマージュ

また、ヒロインと道長の出会いも秀逸でしたね。

逃げた鳥を追いかけるヒロインを、たまたま目撃する道長。

これはまさしく源氏物語の若紫の件(くだり)のオマージュですね。

飼っていた雀が逃げたと泣きながら、縁側に飛び出して来た「紫の上」を「光の君」が目撃(というか覗き見)する件。

まるで今回の経験が、のちの物語設定に生かされたかのような描写に、思わず唸ってしまいました。


最後の場面

最後の場面は衝撃でしたね。

道兼・・・やっちゃった・・・。

どうする道兼。


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