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JW109 逝って参る

【懿徳天皇編】エピソード10 逝って参る


出雲(いずも)への行幸(ぎょうこう)は無事に終わった。

ちなみに、行幸とは、天皇が外出することである。

そして、ヤマトに戻った、第四代天皇、懿徳天皇(いとくてんのう)こと、大日本彦耜友尊(おおやまとひこすきとも・のみこと)(以下、スッキー)には、もはや記事が一つしか残されていないのであった。

紀元前477年、皇紀184年(懿徳天皇34)9月8日、スッキーに崩御(ほうぎょ)の時が迫ってきていたのである。

そこに、大臣(おおおみ)の磯城葉江(しき・の・はえ)(以下、葉江)と物部出雲色(もののべ・の・いずものしこ)(以下、イズモ)がやって来た。

葉江「大王(おおきみ)。今日で、最期と聞きましたが・・・。」

イズモ「悲しいことやでぇ。」

スッキー「し・・・仕方ない。台本通り・・・というヤツじゃ。」

するとそこに、皇太子こと、日嗣皇子(ひつぎのみこ)の観松彦香殖稲尊(みまつひこかえしね・のみこと)(以下、松彦)と、弟の武石彦奇友背命(たけしひこくしともせ・のみこと)(以下、たけし)がやって来た。

松彦「父上。もうお別れなのですな・・・。」

たけし「悲しいけど、仕方ねえよな。」

スッキー「汝(いまし)らは、兄弟仲良く、国のために尽くしていくのじゃぞ。」

松彦「ははっ。」

たけし「おいらは、ちょっと答えられないなぁ。」

スッキー「な・・・なにゆえじゃ?!」

たけし「やっぱり、末子相続じゃないってところが、気になってましてね。」

スッキー「もう、これ以上、詮索するでない。『記紀』には、何も書かれておらぬのじゃ。」

たけし「そう思いきや、そういうわけでも、ないみたいなんで・・・。」

松彦「なっ!? それはどういうことじゃ?!」

たけし「それは、ちょっと、今、言うってのは・・・。」

スッキー「そうか・・・。一悶着あるのか・・・。我(われ)が逝ったあとにしてくれ。」

次に、スッキーの兄、息石耳命(おきそみみ・のみこと)(以下、トコッチ)が、大后(おおきさき)の天豊津媛(あまとよつひめ)(以下、トヨ)と共にやって来た。

スッキー「あ・・・兄上。生きておられましたか・・・。」

トコッチ「勝手に死人にするな! 弟より長生きする兄がいても、不思議ではなかろう。」

松彦・たけし「おじい伯父上!」×2

スッキー「そ・・・そうであった。兄上は、息子たちから見れば、伯父でもあり、祖父でもあったのじゃな・・・。」

トヨ「そして、息子たちは、わたくしの従弟でもあるんですよ。」

日嗣皇子決定

松彦「母上。御安心くだされ。従姉と思ったことなど、一度もありませぬゆえ・・・。」

たけし「おいらも、そんなこと考えたこともなかったなぁ。」

スッキー「系図的にも、心情的にも複雑じゃ・・・。」

次にやって来たのは、他の大后、飯日媛(いいひひめ)(以下、いっちゃん)と泉媛(いずみひめ)(以下、イズミ)であった。

いっちゃん「悲しいんだよぉ。つらいんだよぉ。」

スッキー「汝(いまし)が言うと、そう聞こえぬな・・・。」

いっちゃん「ホントだよぉ。そんなこと言ったら、激おこプンプン丸だよぉ!」

スッキー「す・・・少しだけ、汝(なれ)の想いが伝わったぞ・・・。」

イズミ「〽負けないで♪ ほぉら、そこに、ゴールは近付いてるぅ♪」

スッキー「相変わらずじゃな。『負けないで』の意味が、よく分からぬが・・・。」

イズミ「〽どんなに離れてても、心はそばにいるわ♪」

スッキー「いついつまでもな・・・。」

松彦「父上。母上たちも、こう見えて悲しんでおられるのです。」

たけし「そうか?」

スッキー「他者が見れば、そんな風には見えぬかもしれぬが、そうでないことくらい分かっておる。汝(なびと)らよりも、付き合いが長いゆえな・・・。」

トヨ・いっちゃん・イズミ「大王・・・・(´;ω;`)ウッ…。」×3

スッキー「で・・・では、兄上。息子たちの後見を御願い致しまする。」

トコッチ「それは・・・出来ぬな。」

スッキー「なっ!? 兄上は、太上天皇(だじょうてんのう)的な存在だったはず・・・。」

トコッチ「まあ、そうなんだが、実は、わしも今回でクランクアップなのじゃ。」

トヨ「えっ?! 父上も?」

トコッチ「うむ。それゆえ、後見は出来ぬというわけじゃ。」

スッキー「そ・・・そんな・・・。」

葉江「御安心ください。私たちが、ちゃんと補佐して参ります。」

イズモ「我が物部一族も、しっかりと御支えして参りますよって。」

スッキー「た・・・頼んだぞ。」

松彦「わしも、懸命に務めて参りまする。『たけし』との相続問題も、さっさと解決致しまする。」

たけし「そう簡単に行くかなぁ~?」

トヨ「どういうことです?」

いっちゃん「すごく気になるんだよぉ。」

イズミ「〽どうにかなるサと、おどけてみせるの♪」

スッキー「頼むから、どうにかしてくれ。」

松彦・たけし「御意!」×2

スッキー「では、そろそろ逝って参る・・・。ガクッ。」

松彦・たけし「父上ぇぇ!!」×2

トヨ・いっちゃん・イズミ「我が君ぃぃ!!」×3

トコッチ「弟よぉぉ!!」

葉江・イズモ「大王ぃぃ!!」×2

こうして、四代目天皇、懿徳天皇ことスッキーは崩御したのであった。 

つづく

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