JW111 五代目即位
【孝昭天皇編】エピソード2 五代目即位
紀元前475年、皇紀186年(孝昭天皇元)1月9日、皇太子こと日嗣皇子(ひつぎのみこ)の観松彦香殖稲尊(みまつひこかえしね・のみこと)(以下、松彦)が、ようやく即位した。
第五代天皇、孝昭天皇(こうしょうてんのう)である。
4月5日には、先代の大后(おおきさき)を皇太后(おおき・おおきさき)と尊んでいる。
そして、7月には、遷宮(せんぐう)がおこなわれたのであった。
これを掖上池心宮(わきのかみ・のいけごころ・のみや)という。
ここで、武石彦奇友背命(たけしひこくしともせ・のみこと)(以下、たけし)が声を上げた。
たけし「異議あり!」
松彦「前回と同じ展開になっておるではないか!」
たけし「ちょっと違いますよ。今回は、宮について、異議があるんです。」
松彦「宮についてじゃと?」
たけし「池心って、おかしいでしょ?!」
松彦「どういう理由か分からぬが、そう書かれておるのじゃ。仕方なかろう。」
たけし「それは『日本書紀(にほんしょき)』の方ですよね?」
松彦「ん? どういうことじゃ?」
そこに、大臣(おおおみ)の物部出雲色(もののべ・の・いずものしこ)(以下、イズモ)と、その弟、出石心(いずしごころ)(以下、いずっち)がやって来た。
イズモ「たけし様の仰る通り、少しおかしいんやで。」
いずっち「池っちゅうところが、おかしな点や。」
松彦「おかしい? 池が、どうしたというのじゃ?」
たけし「兄上・・・実は、池なんて、無いんですよ。」
松彦「何じゃと?!」
いずっち「その通り! 池は、我々の時代より千年後の西暦613年、皇紀1283年(推古天皇21)の11月に作られてるんや。その名も、掖上池(わきのかみ・のいけ)やで。」
たけし「その池を基にした名前と考えられてるんだよな?」
イズモ「せやで。せやから、池心という名前は、本来、有り得へんのや。」
松彦「で・・・では、なにゆえ『日本書紀』の編者は、このような名前を付けたのじゃ?」
いずっち「大王(おおきみ)に先見の明があると、言わせたかったのかもしれまへんなぁ。」
松彦「わしが予言をしていた・・・みたいなことか?」
いずっち「そんな感じやで。」
たけし「ちなみに『古事記(こじき)』の方では、葛城掖上宮(かずらき・のわきのかみ・のみや)となってるんで、こっちの方が正しいんじゃねえかと思うんだけど、どうでしょ?」
松彦「どうでしょうと言われても、わしには答えられぬ。」
イズモ「とにもかくにも、遷宮が無事におこなわれたんや。それで、ええやないですか。」
いずっち「ちなみに、奈良県御所市(ごせし)の池之内(いけのうち)周辺と言われてますぅ。石碑も立っておりますぅ。」
たけし「だけどさぁ。やっぱ、おかしくないか?」
松彦「次は何じゃ?!」
たけし「葛城(かずらき)だよ。」
松彦「葛城とは、葛城一族の本拠地であったな。」
たけし「その通り! これまで磯城(しき)の人たちと血縁関係を結んでたわけだけど、宮は、磯城から離れたところに遷(うつ)ってるんだよなぁ。」
するとそこに、松彦たちの母、飯日媛(いいひひめ)(以下、いっちゃん)と泉媛(いずみひめ)(以下、イズミ)がやって来た。
いっちゃん「そうなんだよぉ。もしかしたら、磯城一族の勢力が弱まってきてたのかもしれないんだよぉ。」
松彦「母上?! そうなのですか?」
イズミ「〽いくつぅ、淋しいぃ、季節が来ても、ときめき、抱きしめていたいぃ♪」
松彦「母上? 淋しい季節が来たと?」
たけし「葛城さんの勢力が強くなっちゃったかな?」
松彦「まあ、あくまで作者の妄想であろう? 気にすることはない。」
そこに、葛城久多美(かずらき・の・くたみ)(以下、クタ)が息子を連れてやって来た。
クタ「大王! ようこそ葛城へ!」
松彦「お・・・おう。よろしくな。」
クタ「では、葛城に来た記念に、息子を紹介致しまするぞ!」
松彦「ここで、息子の紹介か・・・。」
クタ「息子の加豆良支根(かずらしね)にござる。カズと呼んでくだされ。」
カズ「カズです。よろしく御願いします。」
松彦「う・・・うむ。よろしく頼むぞ。」
たけし「じゃあ、クタは、今回でクランクアップってことか?」
クタ「残念にござりまするが、致し方なきことかと・・・。」
いっちゃん「お疲れ様だよぉ!」
イズミ「〽ゴールは近付いてるぅ♪」
たけし「母上? ゴールって、常世(とこよ:あの世のこと)って意味じゃねえよな?」
松彦「と・・・とにもかくにも、遷宮も無事に済んだというわけで、次は大臣(おおおみ)の任命じゃ。『いずっち』よ! 汝(いまし)を大臣に任じる。」
いずっち「えっ? わてが?」
イズモ「せや。わても、歳を取ったんで、汝(なれ)に譲るんや。」
いずっち「せやけど、あにさんには、息子がおるやないけ。」
イズモ「まだまだ若いからなぁ。こんな大任を任せるわけには、いかんのや。」
いずっち「そ・・・そういうことなら、頑張らせていただきますぅ。」
松彦「うむ。頼んだぞ。」
こうして、遷宮も完了し、作者の妄想による、代替わりなんかも進められたのであった。
次回につづく
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