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JW119 王子と名乗る理由

【孝昭天皇編】エピソード10 王子と名乗る理由


皇子誕生記事から四年の歳月が流れた。

紀元前423年、皇紀238年(孝昭天皇53)のある日のこと。

久米佐久刀禰(くめ・の・さくとね)(以下、サクト)が、磯城一族(しき・いちぞく)の屋敷を訪れていた。

サクト「ん? そんな展開・・・聞いてないっすよ!」

そのとき、磯城葉江(しき・の・はえ)(以下、葉江)と甥の五十坂彦(いさかひこ)(以下、イサク)が出て来た。

葉江「今回も大王(おおきみ)不在で、解説をしようとの試みですよ。」

イサク「俺たちとサクトで解説するんだよい。」

サクト「唐突すぎるんすけど・・・。」

葉江「ついでに、久米氏の代替わり報告をしてしまえば良いと思いますよ。」

サクト「なるほど。この機会を見逃すな・・・ってことっすね。じゃあ、息子を紹介します。」

イサク「気になるんだよい。」

サクト「息子の味耳(うましみみ)っす! ウーマと呼んでほしいっす。」

ウーマ「俺がウーマっす。よろしくっす。」

葉江「しゃべり方が一緒なんですねぇ。」

サクト「仕方ないっす。作者の陰謀っすよ。」

イサク「じゃあ、磯城家からも新キャラを登場させるよい。」

サクト・ウーマ「えっ?! 磯城氏も?」×2

イサク「弟の大目(おおめ)だよい。大目に見てやってほしいんだよい。」

大目「大目じゃほい。大目に見てほしいんじゃほい。」

ウーマ「変なキャラ設定っすね?」

サクト「ウーマ、それは言っちゃダメなんだって!」

そこに、大倭武速持(やまと・の・たけはやもち)(以下、モチ)もやって来た。

モチ「エピソード102以来の登場やに。」

サクト「も・・・もしかして、モチも世代交代するつもりっすか?」

モチ「じゃが(そうだ)。息子の邇支倍(にきべ)を紹介するに。ニッキーと呼んでくんない。」

ニッキー「うちが、ニッキーやに。よろしくっちゃ!」

三人の新キャラ

葉江「よろしく・・・。では、解説を始めましょうか。」

大目「了解! 今年、紀元前423年(孝昭天皇53)、神社が創建されたんじゃほい。」

ウーマ「阿須賀神社(あすかじんじゃ)っすね?」

イサク「その通りだよい。和歌山県は、新宮市(しんぐうし)の阿須賀(あすか)に鎮座してるんだよい。御祭神は、事解男命(ことさかのお・のみこと)だよい。」

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阿須賀神社鳥居
阿須賀神社拝殿

サクト「事解男之命? 初耳っすね。」

ニッキー「伊弉諾尊(いざなぎ・のみこと)が、黄泉国(よみのくに)で伊弉冉尊(いざなみ・のみこと)と絶縁する際に、唾を吐いたんやが、その唾を掃きはらって生まれた神様やに。」

黄泉国

葉江「絶縁の印が、唾を吐くという行為なんですか?」

大目「伯父上、それは聞いてはいけないことなんじゃほい。」

葉江「要するに、よく分からないってことですね。」

ウーマ「ちなみに、熊野川(くまのがわ)の河口近くで、蓬莱山(ほうらいさん)という山の南麓に鎮座してるっす。もともとは、山を御神体として崇めてたんじゃないかと考えられてるっす。」

蓬莱山0
蓬莱山1

モチ「ところで、熊野といえば、熊野大社が浮かぶんやが、何か関係が有るんか?」

熊野大社0

イサク「その通りだよい! 熊野の神様も一緒に祀(まつ)られてるんだよい。」

大目「平安時代の熊野詣(くまのもうで)では、阿須賀神社参詣も必須とされていたんじゃほい。」

ニッキー「そういう理由で、熊野詣の最盛期だった、平安時代後期には、阿須賀王子(あすかおうじ)とも呼ばれていたんやに。」

葉江「王子? 王様の子供とは、どういうことです?」

ウーマ「最盛期だった平安時代後期は、たくさんの皇族や貴族が、熊野に詣でていたんすけど、当然、そんな人たちの先導者が必要となってくるわけで・・・。」

イサク「それを熊野の修験者(しゅげんじゃ)がやってたんだよい。」

大目「修験者とは、山伏(やまぶし)とも呼ばれる、熊野などの山岳信仰をもとに、山々で修行をしている人たちのことじゃほい。」

山伏

モチ「それと王子が、どう関係してくるんや?」

ウーマ「修験者を守る神仏は、童(わらべ)の姿で現れるという考えが有るんすよ! そこで、各地域の人々は『地元の神社は、熊野の御子神(みこがみ)である』と説明してたみたいっす。」

葉江「修験者を守る神仏が童の姿・・・。参詣者の道中を守る・・・ということですか?」

ニッキー「じゃが(そうです)。熊野と、ゆかりの有る神社だと宣伝してたんやに。」

モチ「それで、御子神ということで『王子』を名乗ったということか?」

イサク「その通りだよい! 熊野の神の御子・・・だから『王子』ってわけだよい。」

サクト「だけど、そんなことして、何か良いことでも有るんすか?」

ニッキー「大いに有るっちゃ! 熊野までの道すがらやかい(だから)、参詣者は、どうしても、そこを通るわけっちゃ。道中の神社が『王子』となれば、当然、参詣にやって来る。」

モチ「参詣・・・。そ・・・そうか!」

サクト「どうしたんすか? 参詣が、どうしたんすか?!」

モチ「参詣するっちゅうことは、お金が落ちるっちゅうことでも有るやろ?」

ニッキー「父上、御明察やに! 参詣者の庇護(ひご)を受けようとして『王子』を名乗り始めたみたいなんやに。」

サクト「山への信仰が、地域経済も相まって、熊野信仰と結びついたってわけか・・・。」

ニッキー「そう考えることもできるっちゃ。」

ウーマ「ちなみに、熊野川の河口からは、弥生時代から古墳時代にかけての集落遺跡が発掘されてるっす。広い範囲から出土されてるんで、大規模な集落だったみたいっすね。」

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復元竪穴式住居

モチ「その集落に住んでいた人々が、阿須賀神社を創建したんやろうなぁ。」

大目「そうだと思うんじゃほい。」

こうして、阿須賀神社の解説に成功したのであった。

つづく

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