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JW84.6 草部に到着せり

【阿蘇開拓編】エピソード6 草部に到着せり


紀元前585年、皇紀76年(神武天皇76)夏、健磐龍命(たけいわたつ・のみこと)(以下、たつお)は筑紫(ちくし)に赴いていた。

筑紫とは、現在の九州のことである。

向かう先は、日子八井(ひこやい・のみこと)(以下、ヒコヤ)が住まう、奥阿蘇(おくあそ)の草部(くさかべ)である。

そして、大伯父、三毛入野(みけいりの)の八人の息子たち(タカチホズ)は、今回もゲスト出演するのであった。

タカチホズ「あのう? 『たつお』?」×8

たつお「ん? 何や? 伯父上たち。」

タカチホズ「我々は、阿蘇の馬見原(まみはら)に来たんやけど・・・。」×8

馬見原

たつお「じゃが(そうだ)。ようやくここまで来たじ。」

タカチホズ「前回の御嶽山(みたけさん)より、馬見原の方が手前にあるのは、どういうことっちゃ!?」×8

たつお「手前?」

タカチホズ「地図をよく見てくんない(ください)。我々は、宮崎県延岡市(のべおかし)から五ヶ瀬川(ごかせがわ)を遡り、草部に向かっちょるんやじ。やかい(だから)、御嶽山に途中で立ち寄ったち、おかしかこつになっちょるんや!」×8

草部へ2
御岳村(御嶽山)

たつお「なるほど。」

タカチホズ「それだけじゃないっちゃ! 更に、この馬見原も、よく見れば、草部とは逆方向なんやじ! 五ヶ瀬川を遡り過ぎちょるというか、とにかく、行き過ぎちょるんや!」×8

行き過ぎ

たつお「ああ、そうやなぁ。まあ、迷子なんて野暮な言い方はするもんじゃないっちゃ。」

タカチホズ「ちょっ! まこち(本当に)迷子なんやないか?」×8

たつお「こ・・・こいは、伝承紹介のため、致し方なき仕儀と相成りしことで、迷子とかではないわけで・・・。」

タカチホズ「そういうこつにするっちゃ。では、この地で、何をしたのか言ってくんない。」×8

たつお「この地に、天津神(あまつかみ)と国津神(くにつかみ)を祀(まつ)ろうと思い立ち、弊立神宮(へいたてじんぐう)を創建したんやじ。」

タカチホズ「二千年後の熊本県山都町(やまとちょう)の大野(おおの)にある神社やな。」×8

たつお「じゃが(そうだ)。」

幣立神宮1
幣立神宮2
幣立神宮3
幣立神宮4
幣立神宮鳥居
幣立神宮拝殿

タカチホズ「じゃっどん、なして、こんなところに神社を建てたんや?」×8

たつお「眺めが良かったからっ!」

タカチホズ「迷子の結果、災い転じて福と成す・・・みたいなことになったわけやな。」×8

たつお「さあ! タカチホズの発言は無視して、草部(くさかべ)に向かうっちゃ!」

こうして、たつお一行は草部に到着した。

草部へ

そこには、ヒコヤと妻の比咩御子(ひめみこ)、そして息子の天彦命(あまつひこ・のみこと)(以下、あまっち)の姿があった。

ヒコヤ「長旅、御苦労であった。」

比咩御子(ひめみこ)「お疲れでしょう。ゆっくりしていってくださいね。」

あまっち「たつお・・・元気そうやな。ちなみに、我は新彦(にいひこ)とも呼ばれちょるじ!」

たつお「伯父上、伯母上。お久しぶりっちゃ。『あまっち』も元気そうで何よりっちゃが。」

ヒコヤ「ところで『たつお』・・・。父上・・・もとい大王(おおきみ)のことは聞き及んでおるか?」

たつお「はい。まさか、おかくれになるとは・・・。」

比咩御子(ひめみこ)「急な報せで、未だに信じられませんねぇ。」

ヒコヤ「もう、お歳であったからな・・・。」

たつお「常世(とこよ)に行かれた、じいちゃん・・・もとい大王の為にも頑張るっちゃが!」

タカチホズ「じゃが(そうだ)。大王の御霊(みたま)を安んじめることにもなろう。」×8

ヒコヤ「ところで、次の大王についてじゃが・・・。今、中つ国では、弟たちとタギシの兄上が大王の位を巡って争っているらしい・・・。」

たつお「えっ!? 父上とタギシの伯父上が?!」

タカチホズ「そんげなこつになっちょるんか?!」×8

あまっち「心中お察しするじ。」

たつお「ま・・・まあ、仕方なか。遠い草部(くさかべ)で心配しても詮無きことっちゃ。我は、我の務めを果たすまで!」

ヒコヤ「そうじゃな。我らは我らの使命を果たさねば・・・。」

タカチホズ「では、ヒコヤ。我々は高千穂(たかちほ)に帰るじ。それと、我らの父上が、エピソード35.6で討伐した鬼八(きはち)を復活させたじ。」×8

ヒコヤ「鬼八を復活させた?」

タカチホズ「じゃが(そうだ)。このあとの伝承に登場するんで、復活させたんや。今は、家来になっちょるんで、近々、そちらに向かわせるっちゃが。」×8

ヒコヤ「わ・・・分かった。」

タカチホズ「ではな! 『たつお』も頑張るんやじ!」×8

たつお「任せてくんない(ください)!」

こうして、たつおの伯父たちは、高千穂に帰っていったのであった。

残った三人のもとに、一人の姫が駆け寄ってきたのは、そんな頃合いであった。

姫「伯父様たち、もう帰られたんやねぇ。」

たつお「えっ? 誰っちゃ?!」

ヒコヤ「ああ、紹介してなかったな。我が娘の阿蘇津媛(あそつひめ)じゃ。あっちゃんと呼んでくれ。」

たつお「あ・・・あっちゃん。」

あっちゃん「は・・・はい。」

たつお「結婚しよう!」

あっちゃん「はい!」

あまっち「こうして、我が妹と『たつお』は結婚したんや。」

比咩御子(ひめみこ)「新婚生活を送った地が、高森阿蘇神社(たかもりあそじんじゃ)ですよ。高森町高森にある神社です。これがいわゆる『いとこ婚』にございます。」

高森阿蘇神社1
高森阿蘇神社2
高森阿蘇神社3
高森阿蘇神社4
高森阿蘇神社鳥居
高森阿蘇神社拝殿

こうして、たつおは、あっちゃんと夫婦となり、阿蘇開拓に向け、邁進していくのである。

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