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JW84.9 阿蘇の国から

【阿蘇開拓編】エピソード9 阿蘇の国から


宮の地を定める為、手野(ての)の地から、勢いよく矢を放った健磐龍命(たけいわたつ・のみこと)(以下、たつお)。

その姿を妻の阿蘇津媛(あそつひめ)(以下、あっちゃん)と家来の鬼八(きはち)が見守るのであった。

手野とは

たつお「矢が落ちたじ! ここが阿蘇市(あそし)一の宮町(いちのみやちょう)の宮地(みやじ)になるんや! そして、矢が落ちた地には神社が創建された。矢村社(やむらしゃ)やじ。矢村神社とも呼ばれちょるじ。」

手野から矢村へ
矢村社1
矢村社2
矢村社3
矢村社4
矢村社鳥居
矢村社拝殿

あっちゃん「私と旦那様が新婚生活を送った、高森阿蘇神社(たかもりあそじんじゃ)にも、矢が落ちたという伝承が残っちょるじ! なので、昔は矢村社と呼ばれてたんやじ。御矢石(みやいし)という、矢が刺さった石も有るっちゃ。」

高森阿蘇神社1
高森阿蘇神社2
高森阿蘇神社3
高森阿蘇神社4
高森阿蘇神社鳥居
高森阿蘇神社拝殿
高森阿蘇神社5
高森阿蘇神社6
御矢石
御矢石近景
御矢石標識
御矢石本隊

たつお「じゃが(そうだ)。明治になって、宮地にも矢村社があるので、高森阿蘇神社に改名したんや。我(われ)はどっちも矢村で良かち思うんやが・・・。」

鬼八(きはち)「じゃっどん、なして矢を放ったんや? 手野に宮を作れば良かち思うんやが・・・。」

たつお「手野は、少し辺鄙(へんぴ)なところだったかい(から)、他の地に移ろうち、考えちょったんや。そして、ここに、あの神社が創建されるんや。」

あっちゃん「阿蘇神社(あそじんじゃ)っちゃね?」

たつお「じゃが(そうだ)。古代からの豪族、阿蘇氏(あそ・し)が大宮司を務め、二千年後も務めを果たしちょるじ!」

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阿蘇神社拝殿

あっちゃん「矢村社の周辺には、人々が集住し、村が作られていったんやじ。」

たつお「今できた村・・・今村! 西にできた村・・・西村! 西にできた町・・・西町!」

鬼八(きはち)「阿蘇神社には、旦那様と奥方様、それに御子息のパヤオこと、速瓶玉命(はやみかたま・のみこと)が祀(まつ)られちょるんですね?」

あっちゃん「旦那様が一宮、私が二宮、パヤオが十一宮っちゃ。」

系図1

鬼八(きはち)「十一?」

たつお「それだけじゃないんやじ。我が孫、健渟美命(たけぬみ・のみこと)と妻の若比咩(わかひめ)も祀られちょるんや。健渟美が五宮で、若比咩が六宮っちゃ。」

あっちゃん「ちなみに、健渟美は、彦御子(ひこみこ)とも、阿蘇惟人(あそ・の・これひと)とも呼ばれております。」

系図2

鬼八(きはち)「三世帯住宅みたいな感じやな・・・。じゃっどん、三、四、七、八、九、十が抜けちょるじ。」

そのとき、日子八井命(ひこやい・のみこと)(以下、ヒコヤ)が、草部(くさかべ)からやって来た。

妻の比咩御子(ひめみこ)と息子の天彦命(あまつひこ・のみこと)(以下、あまっち)を同伴している。

草部から阿蘇へ

たつお「こ・・・これは、ヒコヤの伯父上! 比咩御子伯母上に、あまっちも・・・。もう来たんですか?」

ヒコヤ「うむ。我が三宮で、比咩御子が四宮、そして『あまっち』が七宮じゃ。」

系図3

鬼八(きはち)「これで、一、二、三、四、五、六、七・・・。うん? 八から十までがいない?」

あまっち「残りは、我が妻と子供たちなんや。紹介致します。我が妻、彌比咩(やひめ)っちゃ。」

彌比咩(やひめ)「妻の彌比咩です。十宮です。」

あまっち「そして、我が娘、新比咩(にいひめ)やじ。」

新比咩(にいひめ)「新比咩っちゃ。八宮っちゃ。」

あまっち「そして、我が息子、若彦(わかひこ)っちゃ。」

若彦(わかひこ)「若彦です。九宮です。子孫は、阿蘇神社に奉仕する家になりました。」

鬼八(きはち)「これで、全員揃ったわけやな。一、たつお。二、あっちゃん。三、ヒコヤ。四、比咩御子。五、健渟美。六、若比咩。八、新比咩。九、若彦。十、彌比咩。十一、パヤオ。以上!」

系図4

たつお「なして、呼び捨てなんや! 汝(いまし)は家来やろ?!」

鬼八(きはち)「さ・・・作者の陰謀やじ!」

比咩御子(ひめみこ)「たつお殿。本当に十一で終わりなのですか?」

たつお「じ・・・実は、十二宮がおられます。ただ、金凝神(かなこりのかみ)という金属加工の神様のようなので、まあ、別にいいかなと・・・。」

そのとき、たつおの息子、パヤオが初めての台詞を吐いた。

パヤオ「父上、知らんとですか? 十二宮は、オル(わたし)の大叔父ばい!」

たつお「パヤオ・・・初の台詞で、衝撃発言やないか! 大叔父って・・・。」

そこに、ここにいてはいけない人物がやってきた。

第二代天皇、綏靖天皇(すいぜいてんのう)こと神渟名川耳尊(かんぬなかわみみ・のみこと)(以下、ヌンちゃん)である。

ヌンちゃん「せやで! わてのことや!」

たつお「こ・・・これは、大王(おおきみ)。わざわざ、阿蘇(あそ)までお越しで・・・。」

ヒコヤ「ヌンちゃん! 久しぶりじゃのう!」

ヌンちゃん「ヒコヤにいやん! 会いたかったでぇ!」

あっちゃん「じゃっどん、まさか、十二宮が大王だったなんて・・・。」

ヌンちゃん「汝(いまし)が『たつお』の嫁で、ヒコヤにいやんの娘か? びっくりしたやろ?」

あっちゃん「驚いたっちゃ。」

系図5

ヌンちゃん「ホンマに、なんで大王のわてが、最後の十二番目なんや? おかしいやろ?!」

たつお「そんげなこつ、言われても、仕方ないっちゃが。だいたい、大王は、阿蘇の開拓に関わってないやないか!」

ヌンちゃん「ま・・・まあ、それを言われると・・・・・・せやな。」

ヒコヤ「ヌンちゃん。タギシ兄上との一件、聞き及んでおる。断腸の思いであったであろう。」

ヌンちゃん「それもありますが、カンヤにいやんのことも・・・。たつおは、親の死に目にも会えず、阿蘇の開拓に尽力してたんかと思うと・・・(´;ω;`)ウッ…。」

たつお「これも定めやじ。父上も、常世(とこよ)で喜んでくれてるはずっちゃ。」

ヌンちゃん「せやな・・・・・・。せやけどな、スピンオフにしては、長すぎたんやないか?」

たつお「そ・・・そこは勘弁してほしいちゃ。開拓は大変な事業だったんやじ。」

ヒコヤ「それより、汝(いまし)は大王の務めを果たせ!」

ヌンちゃん「ほな、次回は、舞台を中つ国に戻しまっせ。」

こうして、阿蘇神話編の第一部が完結したのであった。 

つづく





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