![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69167437/rectangle_large_type_2_a9e5f1d919c28eb01947abb38d1b51c5.png?width=800)
JW85.1 鬼八は二度死ぬ
【阿蘇開拓編】エピソード10 鬼八は二度死ぬ
紀元前577年、皇紀84年(綏靖天皇5)。
一人の男の子が産声を上げた。
磯城津彦玉手看尊(しきつひこたまてみ・のみこと)(以下、タマテ)である。
父親は第二代天皇、綏靖天皇(すいぜいてんのう)こと神渟名川耳尊(かんぬなかわみみ・のみこと)(以下、ヌンちゃん)である。
皇子(みこ)の名前についての解説の最中、奥阿蘇(おくあそ)から天彦命(あまつひこ・のみこと)(以下、あまっち)が来訪したのであった。
あまっち「今回はスピンオフということで、阿蘇(あそ)の物語を紹介するっちゃが。」
ヌンちゃん「な・・・なにがあったんや?!」
あまっち「それは・・・。」
ここで、舞台は阿蘇に移る。
それは、阿蘇の開拓が順調に進んでいる頃であった。
健磐龍命(たけいわたつ・のみこと)(以下、たつお)は、開拓の合間をぬって、弓矢の鍛錬にいそしんでいた。
たつお「よぉし! 往生岳(おうじょうだけ)から約10㎞離れた、あの石に向かって矢を放つっちゃ! 周囲20m、高さ10mを越える巨石やじ。良い鍛錬になるはずっちゃ。」
![往生岳と阿蘇神社](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69160640/picture_pc_6a9f322bcfe1a428428903486efa1318.png?width=800)
![矢の練習](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69160649/picture_pc_efddd01d72f476ca938c00881f3d6c21.png?width=800)
![大きな石](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69160761/picture_pc_2038c1834afe0a4af34e02852b89b3cc.png?width=800)
そこに家来の鬼八(きはち)がやって来た。
鬼八(きはち)「往生岳は『どんべん岳』とも呼ばれてるっちゃ。」
![どんべん岳](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69160868/picture_pc_e9abdccae08aa7cd49612371171cdd60.png?width=800)
たつお「じゃが(そうだ)。ここから、あの遠く離れた石に矢を放つんや。それでは行くじ!」
勢いよく放たれた矢は、見事、石に突き刺さった。
鬼八(きはち)「お見事!」
たつお「よし。では、鬼八よ。取って参れっ。」
鬼八(きはち)「へ? 一本しか無かと?」
たつお「どうもそうらしいっちゃ。なして、一本しかないのか・・・我(われ)にも謎やじ。」
鬼八(きはち)「じゃ・・・じゃっどん、ここから10㎞も離れちょるじ。冗談やろ?」
たつお「何を言っちょるんや! 汝(いまし)は徒健(はしりたける)とも呼ばれるほどの健脚の持ち主やろ? 何も問題ないっちゃが。」
鬼八(きはち)「ええっ?!」
こうして、鬼八は、何度も山を下り、矢を拾っては、山を登るを繰り返した。
その回数はなんと・・・99回にも及んだ。
![鬼八99回](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69160987/picture_pc_113ed165ea127c79524aafe8e791704f.png?width=800)
そして、記念すべき100回目。
鬼八(きはち)「も・・・もう体力の限界やじ。こ・・・こんげなこつ、するために復活したわけやない。完全に詐欺やろ・・・(´;ω;`)ウッ…。」
たつお「お~い! 早く取って来い!」
たつおの呑気な声を聞いて、ついに、鬼八の堪忍袋の尾が切れた。
鬼八(きはち)「こんなこつなら、ミケの旦那に討ち取られ、封印されちょった方がマシやったじ! もうやめたっ! こんげなモン、こうしてくれるっちゃが!」
鬼八は、100回目の矢を拾わず、足のつま先で蹴り上げた。
たつお「なっ! 何をするっちゃ!」
それを見て『たつお』も激怒。
二人の追いかけっこが始まった。
走りながらの解説である。
鬼八(きはち)「あの石が語源となって、周辺地域は的石(まといし)と呼ばれるようになったじ。二千年後の阿蘇市(あそし)にある地名っちゃが!」
![的石地区](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69161643/picture_pc_36abe79ba978b1b13b41c7d7146eb25f.png?width=800)
たつお「的石そのものも残っちょるじ!」
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69161443/picture_pc_222265bfebf76efe23dc18026af6c06a.png?width=800)
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69161744/picture_pc_89d14fa85e07c832369db7e054ecb724.png?width=800)
![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69161885/picture_pc_81850b99e2d20512630aa337c36a295f.png?width=800)
![的石登り口](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69161912/picture_pc_04e60a158a29b60c21563c6ff2e64aac.png?width=800)
![的石入り口](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69161918/picture_pc_70f8a105387ed2fa9c913d01b4fab28a.png?width=800)
![大きな石](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69161941/picture_pc_446d6f93c5e2e0131def0c4054dc5f03.png?width=800)
鬼八(きはち)「わしは、それから、根子岳(ねこだけ)の方に逃げたんや!」
![根子岳](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69162396/picture_pc_e614dc419d5eb9381025eeec871ba256.png?width=800)
たつお「そして、熊本県高森町(たかもりちょう)の穿戸(うげど)に逃げたんやな!」
![穿戸1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69163118/picture_pc_9578fb6bfce6183ec3d71048a613d2bf.png?width=800)
![穿戸2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69163387/picture_pc_debfe0e9efa409070964129c4840be60.png?width=800)
鬼八(きはち)「じゃが(そうだ)。岩を蹴破ったち、伝承が残っちょるんや! ちなみに、岩の名前は鬼八岩(きはちいわ)と呼ばれちょるじ!」
![穿戸3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69163626/picture_pc_d8380fbf2161ffe246b7d807eb5180d8.png?width=800)
たつお「汝(いまし)が穴を開けた岩の中に、1707年(宝永4)、武田吉右衛門尉永勝(たけだ・きちえもんのじょう・ながかつ)という御仁が、羅漢像(らかんぞう)を安置したんやじ。」
そこに、時空を超えて、武田永勝がやって来た。
永勝「オル(わたし)が佐賀産の石を使って作ったとです。16体の羅漢像と阿弥陀如来(あみだにょらい)の座像と、観音菩薩(かんのんぼさつ)の座像を安置したとです。」
鬼八(きはち)「穿戸羅漢山(うげどらかんさん)の解説御苦労! じゃっどん、羅漢って何や?」
![穿戸羅漢山1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69163796/picture_pc_3966a23ebe597e99c088b8b165ca9a5b.png?width=800)
永勝「16人のブッダの弟子の事たい。 そいじゃ、お二人とも、きばりなっせ(がんばってね)!」
![穿戸羅漢山2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69163860/picture_pc_483038ce457f13cc0758e230ce9a8531.png?width=800)
![穿戸羅漢山入り口](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69163999/picture_pc_64fc64706c95fd4e3ae74ed688a65c15.png?width=800)
![穿戸羅漢山の中1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69164019/picture_pc_f4f0fdd62a92155d30535a2d08abdfa7.png?width=800)
![穿戸羅漢山の中2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69164044/picture_pc_885c8bfd33bcb66d5e7e1d97eec25793.png?width=800)
こうして、永勝は去っていった。
たつお「永勝に気を取られ過ぎたようやなっ! 覚悟っ!」
鬼八(きはち)「ここで角を切り落とされたようで、穿戸羅漢山の入り口には角宮(つのみや)が有るじ。『津の宮』とも呼ばれちょるんや! 覚えておいてくれよな!」
![角宮1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69164395/picture_pc_362073a736caee0c73c328fda0440156.png?width=800)
![角宮2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69164528/picture_pc_07059740ed2f02b0199d2d39e51ea882.png?width=800)
![角宮3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69164654/picture_pc_3a624485fd17fe33b2e929f8baee35b2.png?width=800)
![画像25](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69164764/picture_pc_8b6641486073d282f309f676ac2feda5.png?width=800)
![角宮正面](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69164781/picture_pc_630b0b5bb114a7a1887d19f2e178f3ec.png?width=800)
たつお「解説に気を取られ過ぎたようなやなっ! これで終いや! 鬼八、捕らえたりぃぃ!!」
鬼八(きはち)「わしは捕らえられた時に屁を八回こいたんや。そこで、八屁(やへ)となり、矢部(やべ)という地名になったんや。二千年後は山都町(やまとちょう)の矢部になっちょるじ!」
![画像27](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69165239/picture_pc_457f8fc25157fd6532add34d0c12b1d8.png?width=800)
![画像28](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69165535/picture_pc_ef61b9bff3eed98ca71db72489f9e8fd.png?width=800)
![画像29](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69165548/picture_pc_3b0e182b82d8714fb694a19c8cae5d39.png?width=800)
たつお「そして、我は、屁をこいたことに驚いて、鬼八を逃してしまったんやじ。」
鬼八(きはち)「じゃが(そうだ)。まだまだ捕まりません。」
たつお「こうして鬼八は、高千穂(たかちほ)の窓の瀬(まどのせ)まで逃げたんや。そして、この地で、最終決戦がおこなわれたんやじ!」
![壮大なる追いかけっこ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69166373/picture_pc_6f02201408fd73329d51d7edec64efa8.png?width=800)
鬼八(きはち)「じゃが(そうだ)。最後は因縁の地、高千穂で決めるっちゃ。二千年後の高千穂町三田井(みたい)にある川岸の地名っちゃ。窓の瀬ダムが有るじ!」
![窓の瀬1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69167261/picture_pc_609ea5c11ed83a32a225763cd3f7a1bd.png?width=800)
![窓の瀬2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69167269/picture_pc_942f11186e48fefe7fbdf443f40e7dea.png?width=800)
![窓の瀬2.5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69167284/picture_pc_20fe1aa8b550381cd8328acd3ede681d.png?width=800)
![窓の瀬3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69167293/picture_pc_3f7fd7e8aa8cc769763c62e579c94802.png?width=800)
![窓の瀬3.5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69167305/picture_pc_fb30f5749d5db1643a9e62b1dcbaf326.png?width=800)
たつお「解説御苦労っちゃ! 復活せぬよう、バラバラにするっちゃが! 覚悟っ!」
鬼八(きはち)「なんとぉぉ! こ・・・これで、終わらないっちゃ・・・。ま・・・末代まで、祟ってやるじ・・・。ガクッ。」
たつお「何とか討ち取ったな・・・。」
そこに『たつお』の妻、阿蘇津媛(あそつひめ)(以下、あっちゃん)と息子の速瓶玉命(はやみかたま・のみこと)(以下、パヤオ)がやって来た。
あっちゃん「旦那様・・・。なんてことを・・・。」
パヤオ「そうたいっ。そぎゃんこつして、鬼八が、むぞかぁ(可哀そうだよ)。」
たつお「仕方なか。こんげな伝承が残っちょるんや。じゃっどん、祟りって何やろ?」
それから、阿蘇の地で不可解な現象が起こるようになった。
次回につづく
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