私のお薦め本(2)[読書で楽しく教養編]
お薦め本シリーズ、今回は個人的には一番書きたかった教養編です。なぜ一番書きたかったかというと、今回紹介する書籍は読んでいて楽しいなと思う本を中心に選書しているからです。なぜ、”楽しい”を基準に選書したかの理由は以下のとおりです。
読書で身に付く教養は人生を変える特効薬的なものではありません。長く続けることで、それまでの気づきが立体的なものとなり、結果的に豊かな発想が可能な人物になれるものと考えています。”楽しむ”ことを目的とすることで継続でき、結果、ありし日に期待した自分という存在になれるでしょう。だから”楽しい”を基準に選書しました。
今回、便宜的に章をわけましたが、教養は一つの分野に閉じず有機的に繋がっているので、ジャンル分けに違和感を感じることがあるかと思いますので参考程度に。
1.「歴史」「経済」に興味がある人向け
-『昭和史(半藤一利)』
戦前・戦後を生きた半藤さんによる授業形式の語り下ろし。我々世代が生まれるはるか前の記録を、解像度高くイメージできます。なぜ、日本は戦争に猛進したのか、高揚するムードはどのように作られたのか、敗戦後の日本の空気感はどのようなものだったのか。歴史は繰り返すと言います。本書が、より良い未来を後世に残すべく生きる我々社会人の糧となるでしょう。
-『人口と日本経済(吉川洋)』
日本のあけぼのから、本書発行にいたるまでの、日本人口の増加が経済動向へもたらす影響に関する”事実”を集めた本です。フェイクニュースが世界的に問題となる昨今、ファクトを見ることの重要性を理解できた気がします。それだけで本書は一読の価値はあるかと思います。サラッと読めます。
-『バブル(永野健二)』
バブル時代の日本の浮かれたムード、高騰する地価、ドロドロとしたお金の流れ、バブルと呼ばれた時代の空気感。当時を生きていない我々世代でも、これらを解像度高くイメージできました。楽しく読めました。
-『しんがり(清武英利)』
山一證券の経営破綻の前後を描くノンフィクションもの。バブル時代の象徴的存在として、同社社長が涙を流し会見する姿を見たことがある方は少なくないかと思います。当時の社員、経営幹部が、どのようにバブルを過ごし、翻弄され、経営破綻と向き合ったのかを窺い知ることができます。同社には不祥事があり、そこから何を教訓にするべきなのか、経営にコンプライアンスが重視される昨今、企業人として考えさせられます。
-『戦後経済史(野口悠紀雄)』
本書では、戦後の復興、高度成長、オイルショックへの対応、バブル発生とその崩壊、失われた20年、アベノミクスまでといった戦後の日本経済史が論じられています。論ずる際、本書で登場するキーワードが“1940年体制”。戦争のために、あらゆるヒト・モノ・カネを総動員することを可能とする国家主導の体制のことです。同体制は、戦後も解体されずに形を変えて生き残っているとし、1940年体制が戦後の日本経済に与えた影響とその弊害について言及しています。戦後の日本経済史の見方をUpdateしたい方におすすめです。
2.「人間」に興味がある人向け
-『失敗の本質(戸部良一)』
日本史上最も大きな失敗として、先の世界大戦での敗戦があります。これを題材に、組織がどうして失敗するのか?というテーマを考察しています。平和を享受する世代にとって、現実離れしていると思うかもしれませんが、本書で描写される当時の現場最前線と国の上層部とのやり取りや意思決定の様は、今なお我が国の各所で起きる出来事と相似して見えてゾッとします。集団の誰もが失敗するとわかっている意思決定を撤回できなくなるメカニズムを歴史から学びましょう。本書と『夜と霧』は「歴史」に含めてもよかったかもしれませんが、人間のメンタリティーに本質があると思い、あえてこちらに含めました。
-『夜と霧(フランクル)』
第2次世界大戦下で、ナチスの強制収容所に収容され、奇跡的に生きて帰った心理学者による、当時の経験の記録です。現地の凄惨な様子から、読者は平和の大切さを学ぶこととなるのは勿論ですが、本書が支持を受け続けているのは、”人生とは何か”を問うているからです。想像を絶する圧倒的な逆境下でも希望を持ち続けた筆者から、生きる目的を失いやすい現代を生きる我々が学べることがあるはずです。
-『嫌われる勇気(岸見一郎)』
過去のトラウマを否定し、人々が自分らしく生きる為の哲学「アドラー心理学」を、悩める青年とアドラー心理学に精通した哲人との対話形式で読者の腹に落ちるように構成されています。ついついできない言い訳をしてしまい辛い、誰からも必要とされていなく辛い、そんな気分のあなたは悩める青年でしょう。アドラー心理学派の哲人との対話をお楽しみください。定期的に読み返しています。
-『脳には妙なクセがある(池谷裕二)』
人間の行動や心の反応が、なぜ、どのように生じるのかを、脳科学の観点で、解説しています。読みやすいですし、興味深く読めます。
3.「美味しいご飯」に興味がある人向け
-『美味礼讃(海老沢泰久)』
辻調理師専門学校の創設者、辻静雄さんの生涯を描く伝記的小説。包丁さえ握れなかった辻氏が、ひょんなことをきっかけに、”本物”のフランス料理を現地で学び、日本に普及させていく姿がとにかく面白い。
今では「そんなものが?」と驚くような偽物のフランス料理が高級ホテルで振舞われていた時代背景があり、世の中の価値観を変える企業家の物語として楽しく読めます。私自身は単に美味しいご飯が好きで手に取ったので、グルメな方々にも単純に楽しく読めますし、本物とは何か?みたいなことを考えるきっかけにもなるかと思います。
総じてお薦めです。個人的には、おすすめな本を1冊だけと聞かれたらこの本を勧めています。本書のために、敢えてジャンルを1冊のために切り出しました。
4.その他のおすすめ本
-『本は10冊同時に読め(成毛眞)』
元マイクロソフト日本法人社長の成毛さんの著書。成毛さんの本は『2040年の未来予測』など、これまで10冊くらい手に取ったと思いますが、誰かに何か勧めるとしたら、まず本書をお勧めしたいです。本を10冊同時に読めとは、実際にそうしなさいという話も書かれていたと記憶していますが、抽象化すると、「幅広いことに興味を持って、インプット・アウトプットし続けましょう。それが結果的に豊かな発想をもたらしますよ」ということだと本書や成毛さんの他の本やSNSの投稿を読んで理解しています。成毛さん自身は読書は教養を目的としていないと発信されていますが、様々なことに造詣が深い方です。
-『じーじ、65歳で保育士になったよ(高田勇紀夫)』
元IBMの猛烈営業マンだった高田さんが、定年退職後、保育士資格を取得し、実際に保育士として活躍されるノンフィクションです。心温まる話というよりは、日本の保育に関する諸問題(保育所の不足、不足に伴う家庭への負担の増加、保育士の給与が相対的に低すぎる)を、ファクトをベースに描いています。読後は、命を預かり様々な苦労をされている保育士さんへのリスペクトが生まれました。また、幼稚園と保育園の違いも学べるなど、全ての子育て中やその前の世代も気づきが多いでしょう。なんにせよ、少子化に深刻に悩む日本人として、読むべき一冊だと思います。
-『働く君に伝えたい「お金」の教養(出口治明)』
”お金”に関する本をいろいろと読みました。お金を増やすことにフォーカスされている本を読むことは多いですが、本書は、そもそもお金とはからはじまり、使い方、守り方、増やし方をバランスよく語っているように思います。お金に最近興味をもったという方は、まずは、産学両方の世界で多様な経験を積んだ知の巨人に学ぶのがよいでしょう。
-『人生を面白くする 本物の教養(出口治明)』
教養シリーズは、本書で締めくくります。ライフネット生命を起業、古希で立命館アジア太平洋大学学長に就任するなどの華々しい経歴をお持ちの出口さんですが、読破した書物の数や諸外国の訪問実績数は、常人がなし得るレベルのものではありません。その教養溢れる知の巨人、出口さんが教養について語っています。教養とは何か?を学びたい、出口さんの本がたくさんありどれを読もうか迷っている、そういった方にまずおすすめの一冊です。
-おまけ:Kindle Unlimitedもおすすめ
上記リストから複数書籍が、Kindleの読み放題プログラムのKindle Unlimitedから読めるようです。
-おまけ:Kindle端末もおすすめ
スマホで本を読みついつい通知が気になり読書が止まる、お風呂で防水の端末で気兼ねなく読みたいという方はKindleの端末をおすすめします。読書しかできないゆえに読書がはかどります。
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