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夏の匂いと情景

家の近くに坂になっている小道がある。帰路の途中、その小道を登っていく。暑いくらいの日差しを浴びながら坂の途中で見上げる風景がなんとも古き良き景色で、蝉の声と相まって夏感を醸し出す。

クーラーにやられっぱなしの外出から自宅に戻り、窓を開ける。夕方なので幾分涼しくなった風が窓から忍び込む。夏といえば、お線香。その図式が出来上がった大人になった。お線香の白い一筋の煙が、まっすぐ天井に向かって伸びていく。その匂いに、これまた窓から届くひぐらしの鳴き声が相まって、夏感を見せつけてくる。この感じが好きだ。

いつもは朝8時ごろに通る交差点。朝なのに短くはない信号待ちをしていると、ジリジリと日差しが肌を焼いてくる。逃れるように手前の日陰に溜まる人たち。その交差点を、用事があり早朝5時半に通った。車の通りも静かで、いつもは太陽燦々な交差点が、完全なる日陰だった。夏とは思えない涼しさに、これから日が昇ると暑くなるんだろうな、とぼんやり明けた空を見ながら青信号を待つ。

夏だな、と感じる瞬間は気温の高さも多分にあるけれど、個人的には匂いと音、時間によって違う情景がより意識させる。

とどのつまり、私は夏が好きなんだと数十年生きてきて、初めて気付いた連休最終日。紛れもない夏。


【本日のプレイリスト】(というかブックリスト)

KFCの店内BGM、『ニッポン男性アイドル史』(青弓社 著:太田省一)





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