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【本当に必要な事、大事な事は何か】 #35


”子どもと遊ぶ”が仕事の
小児の作業療法士ミキティです。

私には
”知ってもらいたい家族がいる”

私が関わる障がいを持つ
お子さんとその家族。
その家族のストーリーから
いつも沢山の学びがあります。

その一部を皆さんに
知ってもらいたくて綴っています。
(過去の投稿はコチラで読めます)

今回のテーマ:
一緒に乗り越える

1.冷静だった

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口唇顎裂
低位脊髄円錐
脊柱側彎症
運動発達遅滞

突然の破水、緊急帝王切開だった。

リナちゃんの最初の疾患
”口唇顎裂”を
知ったのは手術台の上。

突然の事が重なりすぎて
頭の中では理解が追いつかなかった。

しかしながら、
現実では物凄く冷静だった。
「口唇顎裂なんですね」

と、淡々と看護師と
話しているもう1人の自分がいる。

もう1人の自分は
ちょっと前に
初めて母となり
恐怖や不安におびえ
小さく震えている本当の自分の
代わりにそう答えてくれた。


2.怖くて調べられなかった

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術後の病室のベットの上。
リナちゃんは低体重で
NICUで保育器に入っている。

「これからどうなるんだろう…
どうしよう……」と悶々と考える。

1人の時間だけが
あり余るほど与えられた。

主治医に聞かなくても
ある程度は手元のスマホで
娘の疾患を
調べる事は簡単にできる。

でも、怖かった…
結局、調べる勇気はなかった。

だから、逆に
涙を見せる事や
弱音は吐かないと決めた。

もし、そうしてしまったら、
小さく震える
私を支える細い糸が
プツンと切れ
崩れて落ちてしまうと思ったから。

3.受け入れる


出産後、
憂鬱に過ごした病室を出て
初めて小さなリナちゃんを目にした。

保育器に入っていたリナちゃんは
搾乳した
母乳を飲むための栄養チューブ
酸素チューブ
呼吸・心拍モニター
酸素飽和度と脈拍を測定するセンサー
動静脈ラインなど
小さい体で幾つもの管に
繋がれて頑張っていた。

悶々と過ごした時間は
瞬時に消え去った。

”とても、とても、愛おしくて…
生まれてきてくれてありがとう”

心の中で何度も感謝した。

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4.多様性を認めてもらえる社会になったらいいな…

分かってはいても
社会に出ると大変な事もある。

ちょっとした言葉に
親子で傷ついてしまう事もある。

「みんなちがって みんないい」

今から100年近く前、
26歳で若くして
亡くなった金子みすゞさんの
「わたしと小鳥とすずと」
の最後の一編。

鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。

それぞれに良さある。

みすゞさんが他界してから
この詩は
国語の教科書に採用されるだけでなく
世界にも翻訳され注目を浴びた。

でも、
「みんな同じじゃないとダメ」
という風潮は、まだ、
ひしひしと感じられる。

「すぐに枠をはめようとせず、
多様性を認めて欲しい」

「違うという表面上だけを
見るのではなく、
その子の背景や
出来ない理由など
それらを想像できる人が
増えて欲しい」

そんな社会をリナちゃんの
お母さんは望んでいる。

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「ゆっくりだけど、
出来なかった事が
出来るようになった時、
こんなに嬉しいと感じる」

今も暗中模索しながら
リナちゃんの治療法を探し、
東京など遠方まで
足を運んでいる。

「当たり前が当たり前じゃなく
ありがたい事なんだ、と
教えてくれた娘に感謝している」

リナちゃんの家族、
小さな社会は
互いに支え合って
大きな社会の中にいる。


5.OTの私ができることは何だ?


脊柱側彎症のリナちゃんは
曲がっている背骨を
硬いコルセットで矯正している。

なぜなら、
背骨が曲がり続けてしまうと
見た目の問題や
そこからの心理的ストレスだけでなく

神経の束が入っている脊髄の損傷で
麻痺が生じる可能性や痛みもある

進行すると肺や心臓を包む胸郭にも
影響し息切れなども起こるからだ。

これらを予防しているのが
コルセット。

これを読んで頂いた方に
お願いがある。

ご自身のお子さんや
周りの子ども達に
側湾症とはどんな病気か、
お友達を見た時に
どう接すればいいのか、
伝えて欲しい。

側湾症に限らず
” 障がいを知る事 " とは
障がいをもった
子ども達やその家族が
理不尽な事で傷つく事を和らげ
生きやすくなる社会に
繋がっているから。

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今、リナちゃんは
春からの幼稚園に向けて
頑張ってリハしていることがある。

リナちゃんの両手は
左右同じ動きをしてしまう。
これを ” 連合反応 ” と呼ぶ。

大きく自分で肩甲骨を動かしたり、
手遊びなどを入れること

左右の分離を促すように
正中線を超える動きを
遊びに入れること

これらが左右の脳の連携し
動きを調整する訓練になる。

春からの幼稚園を
楽しみにしている
リナちゃん。

私は子ども達の世界で
たくさん遊べる事が
できるよう願って
今日も遊びという名の
リハをする。


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6.「かか」 から りなちゃんへ

あなたが色んなものを抱えて
生まれてきた時、
私はびっくりしました。

それまでの生活が一変し
困惑もしました。

でも本当に必要な事、
大事な事が何かを
知ることが出来ました。

今まで抱えていた
不必要なものを
手放す事が出来ました。

そして沢山の出逢いを
くれました。

いつでも
「かか、かか」と言って
私の後をついて回る
あなたが大変だけど、
とっても、とっても…
愛おしいです。

たくさんの手術や受診、
リハビリを頑張ってくれて
ありがとう。

これから人よりも
大変な壁や辛いこともあると思う。

でも、それ以上に沢山
楽しい思い出を作ろうね。

今の最高の笑顔が
ずっと続くように
支えていきたいと思います。

私たちの元に
生まれてきてくれて
ありがとう。

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撮影 福添 麻美

作業療法士(OT)は 実は子ども達のサポートも しているリハビリ職。 これらの記事が読んで頂いた方の 子育て・療育のヒントになればと思っています。 子ども達は今この瞬間が 生きてきた人生で一番成長している時。 記事を通してみなさんと 関わる事が出来たら嬉しいです✨