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【赤ちゃんは生きようとして生まれてくる】 #25

”子どもと遊ぶ”が仕事の
小児の作業療法士ミキティです。

私には
”知ってもらいたい家族がいる”

私が関わる障がいを持つ
お子さんとその家族。
その家族のストーリーから
いつも沢山の学びがあります。

その一部を皆さんに
知ってもらいたくて綴っています。
その他の家族のお話はこちら

今回のテーマ:お腹の赤ちゃんが
障がい児だとわかったらどうしますか?

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1.イチカちゃんの異常に気付いた時

妊婦3ヶ月検診で
NT(首の後ろのむくみ)が見られた。
検査の結果、主治医から
ヒグローマがあると告げられる。

妊娠22週以降は母体保護法により
日本での中絶手術は認められていない。
母体の生命の危険を救う為の
緊急避難行為以外は…


2.もし人工中絶を選んだら…


これは筆者の私が考えた事だ。

例えば3ヶ月位で
早くに異常がわかって
人工的に陣痛を誘発をして
産声のない、静かなお産をしたとする。

小さな小さな体にも関わらず、
しっかりと人間の形をした
赤ちゃんを
手の中にそっと抱いて
記念に写真を撮る。

丁寧に綺麗な柔らかい布に
大切にくるみ、
火葬場に行き、
空に昇っていくのを見守る。

そんな事が心穏やかに出来るだろうか。

きっと自分が決断したことを
生きている間、
何かのタイミングで思い出したり、
又はずっとずっと
背負っていくのではないか。

そんな事を考えるだけで
心が苦しくなっていく。

だからこそ、こうして、今
触れ合える奇跡に感謝せざるを得ないのだ。


3.「無事に産めて良かった」

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ちょうど1年前、
イチカちゃんはこの世に
無事に誕生してくれた。

これはママの言葉。

「生まれた時はとりあえず
”無事に産めて良かった”」

「生まれてすぐに胃管が
付けられているのを
見てショックでしたし、
何より、こんな小さな体での
手術が不安だった」

術後低酸素虚血性脳症後遺症
大動脈離断症候群
脳性麻痺

これらはイチカちゃんの疾患名。
これを見ると
誰しも不安になるだろう。

体重が増えたら
心臓の手術をする予定もある。


4.これからのイチカちゃん

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先日1歳の誕生日を迎えた。
いつも首の後ろの筋肉の緊張が強くて
お顔が横を向いてしまう。

まっすぐ正面を向けるように、
クッションと両足で固定して
イチカちゃんの両手を
握りながら話しかけて遊ぶ。

ここ最近、
目と目が合うと
笑ってくれる事が増えた。
うつ伏せで首を持ち上げる事も
出来るようになった。

少しずつ、少しずつ
成長している。

それに、なんといっても
ママが楽しそうにしていると
不思議と何故かイチカちゃんも
笑顔になることが本当に多い。

ママと赤ちゃんの心は
見えない糸で繋がっているようだ。

そんなイチカちゃんは
もう少しでお姉ちゃんになる。

これから、家族で乗り越える事が
色々あるだろう。
でもきっと大丈夫。
神様は乗り越えられない事は
与えないから。

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5.読んでくれたみなさんへ


一般的に妊娠してお腹が
大きくなり胎動を感じると
これからママになる気持ちが強くなり、
お腹の赤ちゃんへの”話しかけ”や
”さする”などの行動が出てくる。

これが、障がいがあると
診断されてからの胎動の自覚は
一般と少し異なる。

”我が子から励まされ、支えられ、
お腹の赤ちゃんの為に、
自分も頑張ろうとする
相互作用と一体感が生まれる
重要な意味が含まれている”
そうだ。

『我が子から教えられ、
自分自身が成長する』

それはみんな共通しているのでは
ないだろうか。

6.ママからイチカちゃんへ

「生まれてきてくれてありがとう。
ずっと貴方を待っていました。
家族全員で幸せに暮らして行こうね」

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参考文献:日本助産学会誌 第17巻第2号
「妊娠中期以降に胎児異常を診断された妊産婦の経験」

撮影:福添 麻美
写真:freepik

作業療法士(OT)は 実は子ども達のサポートも しているリハビリ職。 これらの記事が読んで頂いた方の 子育て・療育のヒントになればと思っています。 子ども達は今この瞬間が 生きてきた人生で一番成長している時。 記事を通してみなさんと 関わる事が出来たら嬉しいです✨