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【障がい児のきょうだい】 #34

”子どもと遊ぶ”が仕事の
小児の作業療法士ミキティです。

私には
”知ってもらいたい家族がいる”

私が関わる障がいを持つ
お子さんとその家族。
その家族のストーリーから
いつも沢山の学びがあります。

その一部を皆さんに
知ってもらいたくて綴っています。
(過去の投稿はコチラで読めます)


今回のテーマ:
「きょうだいの気持ち」

1.双子のイチロとボクは少し違ってた

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5歳のボクは双子のおにいちゃん。
今、弟は、
手足が上手に動かなくって
考えたり、おしゃべりもゆっくり。
生まれた時は
ボクよりも小さかった。

でもその時、弟の事は、
お医者さんが
「1500g 以上あれば
障がいが残ることはほとんどない」
って言ってたから、
ママは小さく生まれたから
成長は遅いけど、
いずれは出来るようになると
信じていたんだって。

でも、ボクがお座りが出来た頃…
”どうして
イチロはお座りしないんだろう?”
って 少し、気になってきた。
ママは1人で色々調べ始めたんだ。

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2.イチロの障がいがわかった

発達が遅いと言われて
MRIで検査した時は
特に異常はなかった。

でもママは数ヶ月後の診察で
何も言わなかったお医者さんに
勇気を出して聞いたんだ。

「脳性麻痺ですか?」って。

お医者さんは
「そうですね…」って。

ママは帰り道、ずっと、ず〜っと
泣きながら車を運転して帰った。

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3.ママのこと

ママにはとっても好きな言葉がある。

”真実一路”
(しんじついちろ)
これは誠実を貫くこと、
うそ偽りなく、
ひたすら真心で尽くし通すこと。

っていう意味らしい。

そこからボクたちの名前は決まったんだ。

ボクは「真実(マサミ)」
弟は「一路(イチロ)」

ママはイチロの障がいを
受け入れ、
今、この言葉の通り
ひたすらボクたちを
真心で尽くしてくれている。

4.ボクはママを応援してる

ママはイチロの為に”これは良い”
と聞くと、ボクをおばあちゃんちに預けて
東京や大阪の病院まで行ったり、
一緒にしばらく入院もしてた。

だから、本当は
ちょっと…
いや沢山…
寂しい事もあったけど
ママがとっても
一生懸命だったから
ボクも頑張ってた。

ボクはイチロが病気だって
わかるから、
おもちゃを取られたり、
叩かれたりしても
なるべく我慢できるようになった。

それに時々だけど
ママがボクとの
2人だけの時間も
作ってくれるんだ!

最近はイチロの着替えを
お手伝いできるようになって
ママがとっても喜んでくれて
ボクすっごく嬉しいんだ。

そんなボクとイチロは
ママのことが
この世でイッチバン大好き。

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5.OT の私が出来る事は何だ?

ここからは筆者に変わる。

ある文献を読んだ。

「障がい児のいるきょうだいは
健常児の兄弟を持つこどもには
ない特有の悩みを持っている」

障がい児の親は
きょうだいに対して
「きょうだいとして手助けをしてくれる」
「障がいを理解してくれている」
であることに嬉しさを感じている。

一方、障がい児のきょうだいは
「障がい児を介護中の母親と遊べない」
「子どもながらに自らの感情や欲求を
我慢し、ため込むことに慣れ、
過度のストレス・悩み・不満を抱え込む」
とプラスにとれない思いがある。

また成長するにつれ
以下のように変化するともあった。

・小学生
お友達との比較や
自分の行動上の違いに気づき、
友達に障がいの兄弟について話す
ことをためらうようになる

・中学生
障がいの受け入れの
努力を試みるようになるが、
”からかい”などに憤りを感じ
やるせなさを抱く事もある

・高校生
障がいをもつ兄弟に対する
葛藤のピークを迎え、
兄弟の障がいを隠すことへの
自己嫌悪や話せない後ろめたさを抱く

・大学生
障がいをもつ兄弟の
障がいのことを話せる環境や
存在等の条件が揃うことで
話ができるようになり、
気持ちの整理ができていく

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ここで私が皆さんに
気付いてもらいたいことは

きょうだいは、もがきながらも
成長していく。

そして、
その現実に最初に
向き合い寄り添っていくのは
家族であること。

そこには、
理不尽なことや辛さを
乗り越える
よかったこと、嬉しかったことが
たくさんある。

・一般家庭ではできない経験ができた
・視点/視野を広くできた
・家族が良い意味で賑やかだった
・家族の仲が深まった
まだまだたくさんあるだろう。

”障がいをもつきょうだいの話題に
ふれないようにしておこう”

と、いう消極的な面が
多いように感じるのは
私だけではないはずだ。

障がいを持つきょうだいにも目を向け
関わる環境を作ること。

OTとして
今の私が出来る事である。

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6.ママから2人へ

障がいがあると
近所の公園でさえも
遊びずらい。

障がいがあっても
健常児と変わらず、
保育園・幼稚園・学校等…
たくさん選択肢が欲しい。

と、思うところはある…

でも、2人でおしゃべりしながら
遊んでいるのを
見ると、双子でよかったなぁ…と


・真実(マサミ)へ
いろんな先生からも
褒められる位、
一路や他のお友達思いで
優しい子に育ってくれて
ありがとう

・一路(イチロ)へ
いつもリハビリを楽しく
笑顔で頑張ってくれてありがとう。
ずっとこれからも
”ママ大好き”って
言ってね

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撮影 福添 麻美

参考文献
三重大学教育学部研究紀要 第68巻
障害児のきょうだいと健常児の兄弟の違い
〜障害児に対する見方との関連〜
伊藤 美咲・栗田 季佳 





作業療法士(OT)は 実は子ども達のサポートも しているリハビリ職。 これらの記事が読んで頂いた方の 子育て・療育のヒントになればと思っています。 子ども達は今この瞬間が 生きてきた人生で一番成長している時。 記事を通してみなさんと 関わる事が出来たら嬉しいです✨