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大江千里さんの富ジャズライブに行って来ました〜NY旅行記

 私は日本から遠く離れた南半球の国ブラジル、サンパウロ市に住んでいます。海外居住歴24年。特別なことがない限り2年に一回のペースで里帰りを果たして来ました。今年は前回の帰国から丁度2年目。帰国出来る事はこの上なく幸せな反面、「準備が面倒」と言う気持ちも働いて、帰国予定の7月を1ヶ月後に控えても重い腰を上げることが出来ずにいました。

 そんなある日、思いがけない朗報が入りました。いつもは6月中旬から月末いっぱいの2週間は中学生の息子の定期試験です。しかし今年はサッカーのW杯のスケジュールに合わせ、試験の日程が繰り上がり早めに冬休み入りすると言うではありませんか!自国のチームが試合中に仕事をしたり勉強するなんて有り得ない、そんなお国柄ゆえのことです。学校の通知によると試験が終わるのは最終週の火曜日です。(自国の試合は水曜日の午後でした。)

 それがなぜ朗報かといいますと...…私はジャズピアニストの大江千里さんの大ファン。千里さんはほぼ毎月、最終木曜日の夜にNYの富ジャズという日系のジャズバーでライブをされています。私たちファンにとって富ジャズは憧れの聖地。このスケジュールだと、息子の試験終了を確認してその晩に飛行機に乗れば、翌日水曜日にはNYに着けるのでは?一瞬のうちに私の頭の中に架空のフライトスケジュールが駆け巡りました。今回はNYを経由して帰ろう!そして富ジャズに行ってみよう!

 海外に住んでいる私には、これから先の帰国中に千里さんのライブに参加出来る保証はありません。居住している国でのライブとなったら更に可能性も低いでしょう。はやる気持ちを抑えながら富ジャズのホームページに行ってみると、カレンダーの6月28日の欄には果たして千里さんのお名前がありました!これは人生最大のチャンスかも⁉︎早速家族の承諾も得て、便乗して来た娘と旅のプランを練り始めました。

 まずは富ジャズのホームページからライブの予約をしなければ。予約フォーム(英文)に必要事項を記入すると、すぐにメールでの返信を頂きました。

「ご予約をありがとうございます。キャンセルか変更がある場合は速やかにご連絡下さい。又、このメールに確認の返信がない場合ご予約は完了しませんので、お席の保証は致しかねます。当日は15分遅刻された場合、予約は取り消されます」

という内容でした。すぐに返信。これで予約は完了です。9時から1時間と10時半から1時間の2ステージのライブのうち、私たちは9時からのライブを予約しました。

※当時18歳の娘が入店出来るのか気がかりでしたが、何ら問題はありませんした。(ブラジルでは成人ですが、飲酒は控えました。)21歳以下のアメリカでの未成年者もOKとのこと。18歳以下の場合は、親など大人の付き添いが必要だそう。

 あとは飛行機とホテルの手配です。人間やる気を出したらサクサクと出来るものですね。富ジャズから徒歩圏内の日系のホテルと、NY経由のフライト(正確にはNYのお隣のニュージャージーのニューアークの空港に着く便)と、その先の日本までのフライト、それから帰りのフライト(シカゴ経由)をおさえることに難なく成功しました。今までに何度となくNYを経由して帰国した経験はあるものの、空港から外に出たことはありませんでしたので実質初NY‼︎いったいどんな旅が待ち受けていることでしょう。どんどん夢が現実になってきてドキドキしてきました。

 そして迎えた出発当日。定期試験を終えた息子は私たちの見送りより友達との映画を選び、学校から直接ショッピングモールに行ってしまいました。まぁいいや。。そして。。

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ニュージャージー州、ニューアーク・リバティー国際空港を出たところのバスターミナル。

 9時間半のロングフライトを経て無事にニューアークの国際空港に到着。長蛇の列の入国審査をクリアした私たちは、空港からバスに乗りマンハッタンのグランドセントラルターミナルへ向かいました。宿泊先のホテルは駅から徒歩10分くらいの距離にあり、駅に到着後難なく見つける事が出来ました。その時点で朝の8時。チェックインの時間は15時です。私たちはブラブラとマンハッタンの街を散策してみることにしました。

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グランドセントラル駅
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名物の屋台。

 あんな風景、こんな風景、私たちには全てが物珍しく、完全にお上りさん状態でした。でも目的の場所もしっかり見つけました!

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大江千里さんファンにとってのジャズの聖地、富ジャズ。

 写真では幾度となく目にしていたものの、この店構えを実際に目の当たりににすることが出来るとは!これが夢にまで見た⁉︎富ジャスの看板です。そして同じ通りには床屋さん、日本食レストラン、ゴーゴーカレーがあることまでめざとくチェック。千里さんも行かれることがあるのかな。。などと色々妄想してしまいました。

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富ジャズのすぐそばにあった床屋さん。

 到着したその日は曇りがちで肌寒く、

「NYの夏はこんなものなのかなぁ。そういえば以前立ち寄ったロンドンもこんな感じだったなぁ。」

 とほぼ完徹の頭で(機中では全く眠れなかったので)散策の間にぼんやりと考えておりました。

一旦ホテルに戻るも、チェックイン時間(15時)はまだまだ遠い。


 でも、本当に大変だったのはむしろその後です。その日の晩は、娘の希望でブロードウェイミュージカルの「オペラ座の怪人」を鑑賞したのですが、睡眠不足が祟り何度となく椅子から転げ落ちそうになる私。せっかくの名作なのに、ストーリーが切れ切れにしか頭に入って来ない始末。観劇後ヨレヨレになりながらホテルに辿り着き、ハードな1日を終えたのでした。

眠らない街。煌びやかな街。
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 NY滞在第2日目。朝起きたら、昨日の天気が嘘のように晴れていました。

ホテルの部屋からの眺め。メイン通り(パーク街)に面していなくて残念に思っていたのですが、エンパイアステートビルがよく見えました♡

 この日のメインイベントは何と言っても夜の富ジャズでのライブ参加です。私たちは夕方早めにホテルに戻る計画で、朝から地下鉄に乗って観光に出かけました。気になる天気は、滞在中の4日間で唯一の雷雨の予報でした。本当に天気が急変する事があるのかなぁと、朝の時点では半信半疑でした。

グランドセントラル駅構内。
天井画の星座。


観光はおなじみのこんな場所に。。

ブルックリン橋。橋の長さは2kmほど。

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自転車も通ります。
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ビルとビルの間に見えるマンハッタン橋。

 Brooklyn Bridge Park。(メリーゴーランドが見えますか?)

https://vimeo.com/784840364

(動画が開かない場合はこちらからどうぞ↑)


 ブルックリン橋を歩いて渡って昼食、引き返している途中から予報通り天気が怪しくなり始めました。そしてあっという間にまさかの土砂降りの雨!慌てて橋の真ん中あたりで持参した折りたたみ傘を開きました。(あとで気づいたのですが、激しい雨に打たれた挙句の果てに、橋に傘の袋を落とすというオマケ付き。)9.11メモリアルに着く頃には雨は止んだのでホッ。。

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ワールドトレードセンター駅付近にあるオキュラス(商業施設)
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グラウンド・ゼロ。911メモリアル。ツインタワーの跡地に掘られた四角い、巨大な2つの池で慰霊碑。滝の水が絶えず流れ、中央の深い穴に吸い込まれていきます。滝を囲むブロンズには同時多発テロの犠牲者の方々のお名前が彫られています。
911メモリアルミュージアムでは、当時の様子を歴史として学ぶのみだった18歳の娘が、展示物を熱心に見て回っていました。インタビューの音声で、身に詰まる思いがしたようです。事件当時2歳前だった彼女は、繰り返し映し出される映像に目が釘付けでしたが、もちろんそのことを覚えてはいません。
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Love is Love    by Hektad

 911メモリアルを見学後、地下鉄に乗ってグランドセントラル駅に到着すると、また激しく降る雨が出迎えてくれたのでした。やっとの思いでホテルに到着。早めの夕飯のサンドイッチを食べ終わる頃には雨はもう止んでいました。

 いよいよ富ジャズに向けて出発です。15分遅刻をすれば予約はキャンセルされてしまいます。遠路遥々来て、今までの計画が全て水の泡になっては堪りません。時間には余裕を見て出ましたが、自然に速足でガシガシ歩き、着く前にはすでに大汗をかいていました。

 富ジャズに向かう道すがら、ビルとビルの合間に沈む美しい夕日を撮影する男性を目撃。横断歩道の真ん中で撮影していました。NYの街では車優先なので危ないですし、見ていてハラハラしました。そしてとうとう夢の富ジャズに到着‼︎

(後から知りましたが、これはライブ直前の千里さんインスタ投稿です。calm…。)

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夜の装いとなった富ジャズの看板に再会。
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趣きのある灯りと、呼び鈴。

 通りから階段を降りると、灯りの斜め下に千里さんが「House Keeping」の曲紹介でよく話される呼び鈴がありました。呼び鈴を押すと店の方が現れて、

「まだ別のミュージシャンの方のライブが終わったばかりでお客様が残られているので、呼ばれるまで引き続きお待ちください。」

と仰いました。私たちは早めに到着したので、その時点では待たれているお客様はいらっしゃいませんでしたが、それからほどなくして続々とお客様が到着されていました。この日のライブを予約したお客様の殆どが日本の方だったようです。

 そして再び扉が開きいざお店の中へ。。

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この階段を上がったところの控室に千里さんがいらっしゃる??と何度も見てしまいました。
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この日のライブのフライヤー。素敵な笑顔です☺︎
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これがあのアップライトピアノ!

 これが富ジャズの店内です。入ってすぐに千里さんが演奏されるピアノが目につき、そばに予約席が整えられていました。確認したところ12席あり、予約の段階で既に席が決まっている感じでした。

 娘は千里さんと背中合わせの席(あとで手を伸ばせばタッチ出来たくらい近かったと言っていました)、私はその真向かいにそれぞれ着席しました。その時点では千里さんはまだお見えになっていない様子。席も埋まり(その日の予約席は満席でした)、待つこと数分?いよいよ千里さんのご登場‼︎賑やかにいらっしゃるのかなぁと思いきや、緊張されているのか真顔。

 楽譜を配置されたりした後、お客様にお声をかけていらっしゃいました。私たちが伺うこともご存知で、マネージャーのKayさんと、

「いつも温かいコメントをありがとうございます。遠くから大変でしたね。今日は楽しんでくださいね。」

 という様なことを言っていただき、ただただ感激。演奏が始まる前にお隣のお客様が写真撮影をご依頼になったのに便乗して、娘と3人で写真を撮っていただきました。遠慮する娘にも、千里さんが「おいで!」とお声かけしてくださいました。

 いよいよライブ開始。演奏中は写真撮影や録音は禁止ですので、演奏は目に耳に心に焼き付けないといけません。日本人以外のお客様もいらっしゃるのでMCは全て英語でした。マイクを使って話されていたので、予約以外のカウンターのお客様も聞くことは出来たと思います。

 おなじみの自己紹介(HenryのHをSにしてSenriと覚えてね)や、「House Keeping」は富ジャズの呼び鈴をモチーフに誕生した、などのお話がありました。千里さんは赤ワインを飲まれていて(ワイングラスででなく、マイタンブラーで?)、演奏前?MCの時?にお客様全員と乾杯をしにまわられていました。私と娘はソフトドリンクで乾杯を。サービス精神旺盛な千里さん♡


その日のセットリストは

1. House Keeping
2. You and me
3. Room Hydrangea
4. 10 People,  10 Colors (十人十色)
5. Rain
6. Scribble
7. 雨降り
8.Tommy who knew too much
9. You
10.Fried Green Tomato
11.The Adventure of Uncle Senri
12.Akiuta
13.Without any Moon or Rain

でした。注目の第一曲目は、私が大好きなHouse Keeping、ボサノバでした。それだけでもう胸がいっぱいに。。そしてやっぱり雨にまつわる選曲がありました!この日ならではの【千】曲。

 今年は大江千里さんのデビュー35周年に当たる記念すべき年です。この富ジャズライブの後、8月の初めにはご自身のポップス時代の曲をジャズにアレンジしたアルバムBoys &Girlsがリリースされることになっていたので、そのアルバムから3曲ご披露がありました。(4.5.9.)

 私はRain、十人十色は既に聴いていましたが、Youは初めてでした。メロディーを追っていくと

「この曲は知っている!何だっけそうだ、Youだ!」

 あの時の感動は良く覚えています。ポップス時代の曲がjazzyに生まれ変わって新しい楽曲に変身していました。

 ライブの中盤になるとお店の方が「アーティストにチップをお願いします」と回って来られました。これがカバーチャージというものですね。そうこうしているうちに楽しい時間も終わりです。最後に自分たちの会計を済まし(アメリカはタックスやチップがありややこしいですね。お店の方に教えて頂きながら支払いを済ませました。)、CDと本を購入してサインをして頂きました。最後に握手をお願いして恐る恐る?手を差し出したところ、千里さんはぎゅっと手を握って下さいました。温かくて大きな手でした。感激♡忘れられない思い出です。

 席に戻って帰り支度をしていたところ、お隣に座られていたお客様(アメリカ在住のお嬢さんを訪ねて来られたとのことでした。うちと同じ母娘ペア。)に、

「もう何度もいらしているのですね!すごいですね〜!」

と話しかけられました。

「いえ、今日が初めてです。」

「えっ⁉︎」

と信じられない様なお顔をされてしまいました。テンションが上がって挙動不審なおばさんだったかも、と後になって恥ずかしくなりました。これが私たちの富ジャズでの体験です。

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千里さんのエッセイ本にサインしていただくという、この上なく幸せな瞬間。気を効かせた娘が撮影してくれていました。感謝!

 その後私たちは更に二泊し、5日目の早朝にNYを後にして日本に向かいました。結局私はほとんど富ジャズの予備知識がないままライブに参加してしまいましたが、今回のレポートを参考にして下さり、よりたくさんのお客様がライブを観に行かれるようになったら良いなぁと思っています。本当におススメです‼︎


【追記】
 note登録後、2年の年月を経て初めて投稿した記事に、加筆修正いたしました。あれから早4年。自分史上で、今でも1番大切に思っている記事です。
(2022年12月)










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