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美容室でシャンプーされてるときに。

美容室へ行き、髪の毛を切った。いつも思うが、私は自分の髪型の正解が分からない。

最近、ちょっと忙しくって、いつも切ってもらっている美容師さんとの時間が合わなかった。なので、この日はいつもと違う方に髪の毛を切ってもらおう、そう思って美容室に来た。


椅子に座る。

知らない美容師さんが質問してくれる。

「どのようにしましょうか?」

と聞かれたんだけど、正直なところ特に決めないで来てしまった。自分の髪型の正解がわからないから、希望を伝えられない。

「う〜ん、どうしようか迷ってまして」


と、私が言うと、男性美容師さんは一瞬だけ「おや?」と困惑した表情を浮かべたので「これはいかん!」と反省する。

「全体を2センチくらい切っていただければ!」と伝えた。ほんと申し訳ないなり。


いつも担当してくれる美容師さんは、それはもうおしゃべりで、なぜか毎度私がインタビュアーを担当する。旅行の話や食べ物の話、社会情勢について思うところを約30分間、私のインタビューのもと、彼はいつも楽しそうに喋るんだけど、この日は違った。


新しい美容師さん、話しかけてこないのである。

ちょ、ちょうどいい。



美容室で会話をしない、ということがこんなにも心地のいいものなんだねぇと気づく。



ふと、となりのとなりの席を見てみると、いつも担当してくれる男性美容師さんがお客さんの髪の毛を切っていて、それはもう大きな声で会話をしている。

心の中で「同じ空間にいると気まずいなぁ、申し訳ないなぁ」と思ったり。


……


髪の毛を切り終えて、美容師さんが一瞬どこかへ行ってしまった。床に散らばった髪の毛を掃除するためのホウキを取りに行ったんだろう。

そのタイミングでとなりのとなりからいつもの男性美容師さんがやってきて話しかけてきた。


「イトーっさぁん、タイミング合わずですいません」

「あ、い、いやいやいや! 私も少し忙しくて、今日しか時間がなかったんですよねぇ」

「ぜんっぜん大丈夫です! また指名お願いしますね!」

私は「えへへ〜」と苦笑いである。


……


髪の毛の確認も終わって、シャンプー台への移動を促された。髪の毛を切ったらシャンプーをする。

そういえば、むかし音声配信でmorii otoさんと話したときに彼女が言っていたことを思い出す。


「本当に腕のいい美容師さんはシャンプーが上手らしいんです」

シャンプーー

moriiさんが言ってたなぁ。元気にしてるかなぁと思いながらシャンプー台に移動する。

椅子に座り、顔に白い布をかけられてセット完了。椅子が後ろに倒れる。


(この美容師さんはシャンプー上手かなぁ)


うまかった。



シャンプーのすすぎの終わりぎわに、いつもの人はやってくれない頭皮マッサージまでしてくれた。


おぉ、これは……極楽浄土。





と、思ってすぐ、
私の中の何かがむずむずしてきた。

あれをやりたい。


顔面には厚めの白い布。私から美容師さんは見えない。ということは美容師さんからも私の顔は見えない。

やりたい。あれだ。


変な顔だ。


いつもとは違う頭皮マッサージ。行ったことはないけど極楽浄土にいるような感覚。顔面には白い布。


よし……やるか。


布一枚を隔てて、こんな顔をしてみた。





「……シーーーーーーーーン」



渾身の赤マムシが美容室に炸裂。

だが、

全然バレない。

なぜなら顔に布があるから。クソー。極楽浄土にいるこの感覚を全力で表現したい。なんなら全身で表現したい。表情のみでしかあらわすことができないこの状況が悔やまれる。



この顔、最初は1秒だけやってみた。

が、全然バレない。



よし、と思って2秒、3秒と続けてみる。


チッ、チッ、チッ、チッ。



「……シーーーーーーーーン」


やっぱりバレない。



男性美容師さんは「では席に戻りましょう」と言って私を誘導してくれた。表情は真顔に戻っている。



思ったのは、

「いつもの美容師さんだと赤まむしは炸裂しないけど、この美容師さんは炸裂するなぁ。気まずいけど、担当者を変更しようかなぁ。でもなぁ、できないなぁ」

う〜む、悩ましいが、きっと変えない。

次回の私はまたインタビュアーだ。


<あとがき>
子どものころ、研ナオコさんの「赤まむし」と「生卵」でお腹がちぎれるほど笑わせてもらった記憶があります。大人になってから見るとそんなにおもしろくないよなぁと思っていたのですが、今日この記事に貼り付けた画像を見ると、やっぱりおもしろい顔でした。今日もありがとうございました。

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