先回りして自分を傷つける人。
傷つくのがイヤでバカにされるのもイヤで、失敗したと思われるのもイヤだ。心が痛むから。なので人間はその痛みを中和するため、あらかじめ自分を攻撃して痛めつけておく。
先手の自傷行為である。
たとえば取引先との飲み会で、いきなり挨拶を振られたとする。「ここはイトー係長! ひとことお願いします!」「え、あー、えーと、まぁ、いきなり振られたので特に何も用意してないのですが〜」というこれ。これが先手の自傷行為。
日常のいたるところにあります。
男性に裏切られた過去を持つ女性がいたとして、少しだけいい仲になるかもしれない人に対して言う。「あたし、人を信じるまでに時間がかかるタイプなんだよね」。
なんらかの芸術作品を作ったことはないのだけれども作りたい。でも作ったことがないのだから、他人からどんな評価をされるかが不安。「いやぁ、ちょっと微妙だとは思うんですけど」。
先手で自分を傷つける気持ちもわからないでもない。自己防衛だ。この防衛策は他人が傷つかないようにするためのものとは少し違う。とにかく自分が傷つかないようにするためのもので、ある意味のエゴである。
わざわざ書くまでもないが、先手の自傷行為をしがちな人は総じて自信がない。自信のなさの裏返し。
それから、この自傷行為、他人から見れば意味のないものであることに気づいていない。
そう、先手の自傷行為は自分が傷つかないようにする自己完結のものであり、他人から見ると全く意味のない、むしろ邪魔な行為になる。
話をいきなり振られて「いきなり振られたので何も用意してないんですけど」も、いい人に対して「信じるまでに時間がかかる」も、評価が怖い創作に対しての「微妙だとは思うんですけど」も、他人から見れば1ミリも関係がない。興味がない。意味がない。
自分かわいさのその防衛本能は、
他人に向けてあげたほうがいい。
先回りして自分を傷つける必要は全くない。
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