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20代で知っておきたいコーチング理論。

コーチングという言葉が世間一般に浸透して、もう何年が経つのでしょう。コーチングとはいわばコミュニケーションの技術みたいなもので、対義語はティーチングと呼ばれる。

例えば「スキルの上達に悩むサッカー少年」がいたとする。仮に選手が、できるだけ遠くに、美しいスピンをかけてボールを蹴ることが苦手だとして。

一般的な指導者ならば、彼のキックフォームをみて、直すべきところを指導する。

右手の位置が低いのでもう少し高く上げよう。

フォロースルーがよくないので、もう少し止めるようなイメージで。

だとか、そういう風に伝える。


で、これはコーチングではなく、
ティーチングであるらしい。

指導者から見たときの、よくない点を指摘し、それを修正するように指導する。それがティーチング。よくあるやつ。


では、同じようにサッカー少年に指導する場合、コーチングはどのようなコミュニケーションをおこなうか。これが正解、というわけではないが、一例として書いてみよう。



おそらく、まずは選手にボールを蹴ってもらう。

ついでにその様子をカメラで撮影する。

何に満足がいっていなくて、理想の状態がなんなのかを、選手に尋ねる。

映像を見て、確認する。

理想の選手のフォームと何が違うのかを一緒に考える。

どんな練習をしたらいいのかを決定する。

いつまでにそれを達成すべきかを選手と一緒に考え、計画を作る。

計画通りにいっているかをチェックする。



こんな感じだろうか。

ティーチングと全然ちがうのがお分かりだろう。

重要なのは、コーチングは正解を教えない、ということである。正解はその選手の頭の中にあり、言語化できていないだけ。指導者は選手の気づきをサポートする役割を担う。

サポート役に徹するのだ。

ティーチングの場合、指導者から見たときの修正点を指摘する。この指摘が選手の腑に落ちている場合はいいが、だけどもほとんどの場合、腹落ちしないケースのほうが多い。すると、どうなるか。

長続きしない。選手が心から納得していないわけであるから、練習に身が入らない。やらされる練習になる。



コーチングとティーチングのどちらが望ましいか、というのは状況にもよるが、これを読んでくれている方からみると「コーチングのほうがいい」と思うことだろう。繰り返すが、状況による。

コーチングはコミュニケーションの技術である。


いま、例としてサッカーの話をしたが、これはコミュニケーションの技術なのだから、ほかの事柄にも役に立つ。日常会話、恋愛、子育て、そして、仕事であるよね。


前置きだけでひとつの記事になりそうだが、さらに話をすすめたい。

今日は、私が26歳のときに受けた、人生で1度だけのコーチング体験について書こうと思う。

この1回のコーチングを受けて、私としてはすぐに体系立ててまとめ、仕事に応用した。6年が経過したいまも、あの1回のコーチング体験が活きている。それをシェアしたい。


では、いってみヨーカドー!


女性上司に言われた

26歳のとき、私の上司は悩める女性だった。横浜本社の企業の北海道支社を立ち上げたはいいものの、1年間の契約社数は0件。おそらく相当のストレスだったと思う。

私がこの会社に入社したのは、上司が支社を作って1年後のことで、初めての札幌現地採用の人間として入社した。

入社してすぐ、この上司に言われた。

「イトーさん、コチハラ先生(仮名)のコーチング受けてきなよ。めちゃくちゃ有名な人だから」

コチハラ先生は、札幌の男性で年齢は60代。大手企業から独立して、札幌にコーチングを広めた人らしい。コーチング歴20年だったかそれくらいの人なんだと聞いた。

【関連】当時の上司と私の関係


「コーチング? なんすかそれ」

私の質問を受けて、上司はチラシを見せてくれた。コチハラ先生が笑顔で写っており「コーチングの魔法! 無料体験会! 参加受付中!」と書いてある。


「ほんとにすごいんだって! 私なんてコチハラ先生の前で大泣きしちゃったんだから!」

ええ……大泣きかぁ。
怒られるとかじゃないよな。

この人、相当ストレスたまってるんだろうなぁ、と思いながら、私は性格が悪いけどやさしい人間だから、その指摘はしない。日本海溝に指摘を沈めるようにして笑顔で言った。

「無料ならまぁ、仕事終わりで行けばいいんすね?」


と、いうわけで今から6年前の平日、たしか19時。私はひとり、コチハラ先生のコーチング無料体験会に行くことにした。


コーチング会場で

会場に行くと、私のほかにビジネスマンが10人以上いた。スーツの男性もいるし、私服の女性もいる。

「この人、マナー講師っぽいなぁ」という見た目の女性もいて。私はなんだか「ハンター試験会場に来たみたいだなぁ」と思っていた。


不思議な雰囲気だった!


だだっ広い会場には、椅子が半円形、三日月形に3列ほど置かれ、椅子の向かう先にはホワイトボードがひとつ。

私は「せっかく来たんだし、最前列ど真ん中に座ったろ」と思って、すい~っと陣取った。


やがて時間になると、
コチハラ先生であろう人物が登場だ。



コチハラ先生はグレーのスーツで、上品すぎず、みすぼらしすぎず、とにかくちょうどいい。髪の毛も奇麗だし、眼鏡も似合ってる。

なによりいいのは、
常に微笑をたたえていることであった。

「こんにちは、コチハラです。本日はありがとうございます」


コチハラ先生が言うと、全員が拍手をした。

あ、拍手すんのね。

はじめてマルチのセミナー会場に来た気分である。どうやらこの会場にいる私以外の人は、何度かこの無料体験会に来たことがあるらしい。



コーチングを受けたろ

そこからコチハラ先生がホワイトボードを駆使しながら、コーチングとはなんぞや、コチハラ先生とコーチングの衝撃的な出会い、札幌で活動してきた紆余曲折話を聞いた。

コチハラ先生は優雅に話す。


私はといえば、当時26歳で社会の常識も知らない純粋無垢の男の子であった。なんなら「赤ちゃんはキスをしたらできるもの」と信じて疑っていないくらいの純粋さである。

コチハラ先生の話を最前列でうんうん聞いた。

普通に話が面白かったから。後ろの人たちがどう思ってるかなんて関係ない。とにかくうなずこう! 純粋万歳!



「それでは、せっかくですので、コーチングを体験してもらいましょう。みなさんの中でコーチングを受けてみたい方はいますか?」

シーーーーーンとした。

その中で、天井を突き破る勢いで手を伸ばす男性がいた。

私だ。



コーチングの概念はよくわかったよコチハラ先生。でもいまいち腑に落ちてない。体験させてくれ。俺をコーチングの魔法にかけてくれ。


「お、では、先ほどから笑顔のこの方に受けてもらいましょう」

会場にまた拍手が響く。私は「ではこちらへ」と言われるがまま、全員の前に用意された椅子に座った。会場にいるみんなを正面に見るかたちだ。


コチハラ先生vsイトーダーキ(26歳)


異種格闘ビジネス決戦バトルである。



コチハラ先生はまず言ってきた。

「相談事はなんでも構いません。プライベートのこと、仕事のこと、なんでもOKです。ただし、みなさんに聞かれてもいいことにしてくださいね」

会場の人たちがクスッと笑う。

「なんでもいいんですね。では仕事のことでお願いします!」

おおっ!

「では、仕事のことでいきましょう。イトーさん、仕事でどんな悩みがあるんですか?」

というような質問をされ、私が答える。
私の悩みをみんなが聞く。

コチハラ先生は答えを言わない。

このときの大きな議題は、当時私が所属していた会社のサービスを、北海道に広めるためにはどうすればいいか? というものであった。


何個質問されたかは忘れたが、これ。

最終的に、きちんと答えが出た。コチハラ先生は一言もアドバイスをしなかった。答えは私の中にあったのである。

すげぇ、と思った。

「コチハラ先生! これがコーチングの魔法ですか!」


……

応用できることに気づく

この無料体験で、コチハラ先生からされた質問の意図を後から分析した結果「これは営業現場でも間違いなく使える技術だ」という結論にいたった。

当時の私はそれを応用して、営業話法シートを作成。それを全国の支社にすぐに広めた。効果はテキメン!

ほんとにすごい!

今でこそコンサルが使いそうなノウハウなのだが、当時の私からすれば、とんでもないリーサルウェポンを手に入れた感覚。


だから、ここまで読んでくださった方のために、その話法、いや、リーサルウェポンをシェアしたい。


ビジネスを成功に導く7つの質問

<応用し放題の7ステップクエスチョン>

[1]うまくいっていることはなんですか?

→いきなり課題はなんですか? と聞かない



[2]理想の状態はなんですか?

→ガチの理想と、現実的な理想を聞く



[3]現状はどうなってますか?

→現状がどうなのかを尋ねて、ここで課題を把握する



[4]理想と現状を阻むものはなんですか?

→いわゆるギャップ。ここに改善策が隠れている



[5]どんな施策が考えられますか?

→ギャップを埋めるための施策を出してもらう



[6]現状に点数をつけるとしたら100点満点中何点ですか?

→数値化させると客観視できる
→たいていは20点~60点と答える



[6]では10点アップさせるとしたら、どんな施策が考えられますか?

→いきなり100点は目指さない
→スモールスタートを目指そう



[7]どんな計画でいきますか?

→出た施策をどう実行するか
→観測の頻度をどうするか決めましょう

……

おわりに

さて、先ほどのコチハラ先生との無料コーチング体験の思い出では、相談内容が以下のようなものだったと書いた。

このときの大きな議題は、当時私が所属していた会社のサービスを、北海道に広めるためにはどうすればいいか? というものであった。

これを相談したところ「コーチングの魔法や!」と思わず叫ぶような結論が出たのだが、最後の最後に当時、どんな結論が出たのかを書いて、この記事を終わりたい。


コチハラ先生との無料コーチングの結果、

サービスを北海道に広げるためには……


一生懸命テレアポする。


これだった。


<あとがき>
自分の脳みそでたくさん思考を重ねて出た結論であれば、それがどんな素っ頓狂なことであれ、納得感があるものです。事実、当時の私はそれから死ぬほどテレアポをし、結果、本当にサービスが広まりました。コーチングの魔法! 今日も最後までありがとうございました。

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