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ADHD(注意欠如多動症)の基礎・対応

発達障がいシリーズ第2段は、ADHDについて概要と大まかな対応についてまとめてみました✏️

ADHD(注意欠如多動症)の3つの主症状

ADHDとされる方には、3つの主症状があります。
これは、前頭前野という計画性や認知能力、自己抑制などの機能を司る脳の部分の働きによるものと言われています。

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主症状は以下の3つとされています。
不注意:ケアレスミスをする、注意散漫、整理整頓が苦手、忘れ物が多い等
 実行機能障害により、ワーキングメモリが低いためと言われています。複数の情報の記憶の保持が難しいため、情報が抜け落ちやすくなり、マルチタスクが難しくなると言われています。

多動性:手足がもじもじしている、机に座っていられない、おしゃべりが止まらない、静かに遊べない等
「じっとしていられない」という特性のことを指します。
実行機能のワーキングメモリの低下により、新しく入った情報を優先し、古い情報を保持できないという特性によるもので、目の前のものに反応し続けます。

衝動性:順番を待てない、列に割り込む、突然怒る、相手の質問中に答える等
「我慢できない」という特徴のことを指します。
実行機能の自己抑制機能の低下により、我慢できずに行動してしまうと言われています。

ADHDの方は、前頭前野の発達が3年ほどゆっくりであると言われています。
脳の発達により改善する部分もありますが、約60%の方が引き続き大人になってもADHDの症状を持つと言われています。

ADHDは日本語で「注意欠如多動症」と言われていますが、以下の図のように、「不注意」の特性が良く見られる方もいれば、「多動衝動性」が良く見られる方もいます。

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上記のような症状を見ると、良くないことのように捉える方もいるかもしれません。ADHDの方は新しいものや、未知のものにも興味を持ち、果敢に挑むことができる、しやすい方と捉えることもできます。この特性が関係しているのではないかと言われているものに、日本よりもアメリカの方がADHDのお子さんは多いというデータがあります。これは、アメリカ合衆国という国の成り立ちによるものとされていて、かつてアメリカを見つけ、住み始めた人たちの好奇心や行動力があるのでないかと言われています。
人間の歴史の中で、これまでもADHDの症状を持つ方は昔から存在していました。しかし、狩猟時代などはそのような果敢に危険に挑んでいく人は、例えばマンモスに負けて亡くなってしまうようなリスクも高かったのではないかと言われています。

ADHDの診断基準

ADHDの診断基準は以下のように言われています。
(あくまで基準の紹介です。診断は、必ず専門医を受診してください)

①不注意症状
a.細やかな注意ができず、ケアレスミスをしやすい。
b.注意を持続することが困難。
c.上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える。
d.指示に従えず、宿題などの課題が果たせない。
e.課題や活動を整理することができない。
f.精神的努力の持続が必要な課題を嫌う。
g.課題や活動に必要なものを忘れがちである。
h.外部からの刺激で注意散漫になりやすい。
i.日々の活動を忘れがちである。

②③多動性/衝動性の症状
a.着席中に手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする。
b.着席が期待されている場面で離席をする。
c.不適切な状況で走り回ったり、よじ登ったりする。
d.静かに遊んだり余暇を過ごすことができない。
e.衝動に駆られて突き動かされるような感じがして、じっとしていることができない。
f.しゃべりすぎる。
g.質問が終わる前にうっかり答え始める。
h.順番待ちが苦手である。
i.他の人の邪魔をしたり、割り込んだりする。

上記の内容からさらに以下の条件に当てはまる場合とされています

「①が6つ以上(17歳以上は5つ以上)」または「②③が6つ以上(17歳以上は5つ以上)」
かつ「症状が12歳以前に現れている」かつ「6ヶ月以上の持続」かつ「社会性に困難を抱えている」

補足情報
・DSMーIVでは7歳以前とされていましたが、症状があるのは覚えているが、証拠が集まりにくいことからDSMーⅤで12歳以前に改訂されました。
・2つ以上の場所で見られると言われています。これは、ADHDが脳機能の困難なので、場所を問わず症状が見られるはずであるという鑑別の視点です。例えば、学校では多動でも、家では落ち着いている場合、学校に課題があることがあります。
・「6ヶ月以上の持続」については、ADHDが脳機能の困難なため一過性のものではなく、継続して見られるはずであるという鑑別の視点です。

ADHDの併存症状

ADHDの方には、LD(学習障害)や素行性(行為障害)、不安障害、うつ等の症状がADHDでない方よりも多いと言われています。
ADHDの症状以外の部分でのサポートも必要と言えます。

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ADHDの方への支援

ADHDの症状は脳機能、特に前頭前野という部位によるものとされています。そのため、神経伝達物質の活動への影響もあると言われています。

神経伝達物質には以下のようなものがあります。
ドーパミン:楽しい時(快の感情)や興奮した時に放出される
ノルアドレナリン:緊張した時や集中している時に放出される
セロトニン:安心感や幸せに感じる時に関係する

ADHD症状の原因となるのは、ドーパミンやノルアドレナリンの不足です。
これにより、注意力を高めたり、コントロールすることができない、難しいと言われています。
この神経伝達物質との関係に対して介入することがADHDの方への支援になります。

支援の方法
運動の活用
ドーパミンやノルアドレナリンは運動により脳から放出されます。
そのため、運動することで、ADHDの症状が和らぐと言われています。

薬物療法
ここで問題です!
衝動性から暴れてしまっているお子さんは、どちらの状態であると思いますか?
a.脳の覚醒が高い状態
b.脳の覚醒が低い状態

答えは、、、b.脳の覚醒が低い状態 です。

お薬の種類には以下のようなものがあります。
(用いるお薬については、専門医にご相談ください。)

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by一般社団法人こども発達支援研究会

ADHDの方はドーパミンが不足しているので、集中力が低い状態なので、ドーパミンの放出が促されるものに反応しやすく、飲酒など、快の刺激になるものに対して依存症になりやすい傾向があると言われています。
ADHDの方の周囲の方は、そのような依存性の高い物の危険性を伝えることやそもそも近づけないといった工夫をしていくことも必要となりそうですね。

ADHDの不注意への対応

例えば、不注意のために忘れ物が多かったり、時間を守るのが難しい場合はどのようにすればいいでしょう?

特性的にできないこと、苦手なことに対しては「代償行動」を取れるようにすることが大切と言われています。
決してわがままではないので、変えられること(環境など)は変えるなど一緒に方法を考えてみましょう。

代償行動の例
・荷物を一つにまとめて常に持つ
・教科書を忘れる→置き勉をする
・朝は遅刻してしまう→バイトは遅い時間を選ぶ      など

ADHDの報酬系機能の障害への対応

報酬系機能の障害とは、目の前の興味関心が高い物を優先してしまうというものです。これは、脳の特性なので「報酬の活用方法」を考えてみることが有効とされています。

報酬の活用の例
・お約束を守れない→守れたら1日○円、お菓子ゲット
・時間を守れない→早く到着したら〇〇できます      など

この方法の流れとしては
1.報酬を活用して成功体験を積む
2.どんな報酬なら行動できるか自己理解する といった感じです

報酬の種類には以下のようなものがあります
・具体的報酬:お小遣い、お菓子、おもちゃ
・抽象的報酬:褒められる、認められる
・内的報酬:自分の興味関心の充足

「〜が終わったら〇〇」のような後報酬で効果がない子の場合
衝動性強いお子さんは報酬が活用できないことがあります。
他の方法として、ADHDのお子さんはノルアドレナリンの機能が低いことから、
「カウントダウン」を活用する方法もあります。カウントダウンは緊張感を高めるため、ノルアドレナリンが刺激されるので切り替えが早くなりやすいと言われています。

ADHDの「集中できない」への対応

ADHDのお子さんは、刺激を与えて脳を活性化すると集中力が保ちやすいと言われています。
つまり、手いじりなどをしながら勉強することで効率が上がりやすいということになります。
一時流行ったハンドスピナーなども使いやすいと思います。

ADHDで姿勢が悪くなりやすいお子さんへの対応

DCDの合併率が高いとされており、そのために姿勢が正しく取れないお子さんが多いと言われています。
これに対しては、姿勢を補助する道具を活用することが効果的と言われています。
机に座る際は絶対に椅子でないといけないという訳ではないはずので、学校などと相談しながらお子さんにあった方法を見つけていけるといいですね🌱

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参考文献:
杉山登志郎(2007)『発達障害の子どもたち』講談社現代新書
杉山登志郎(2011)『発達障害のいま』講談社現代新書
平岩幹男(2013)『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉』講談社
かなしろにゃんこ(2019)『僕にはイラつく理由がある』講談社
かなしろにゃんこ(2019)『うちの子はADHD 反抗期で超たいへん!』講談社
借金玉(2018)『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』KADOKAWA
 辻井正次(2019)『発達性協調運動障害(DCD)不器用さのある子どもの理解と支援』金子書房
川上ちひろ(2019)「発達障害のある女の子・女性の支援」金子書房
一般社団法人こども発達支援研究会 研修会資料


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