カッキー

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最近の記事

バーニングマン2023振り返り Day10-テンプルバーン

最後の火曜日 マンが燃えた次の日の朝、僕たちは抜け殻のようになる。これまでの10日間は夢か幻か。あれだけ様々な感情を伴う強烈な体験の連続も、砂嵐で完全にホワイトアウトしたプラヤが次の瞬間抜けるような青空を見せるかのように、意識の中で全くの別物に変質していく。 僕は、こうして、自分が夢から醒めていくのを自覚する。あるいは、また長い一年の眠りにつこうとしている。自分の中に共存する二つの世界のバランスをとるように。まどろみの中、半覚醒の状態に身を委ねていくように。 今これを書

    • バーニングマン2023振り返りDay9-マンバーン

      2回目の月曜日 BRCラジオが タイトルや歌詞に「stay」を含む曲をひたすら流し続け「ゲートは開いていないのでその場に留まるよう」と警告を発し続けるも虚しく、プラヤからの脱出を試みる人たちは日に日に増えていった。 ゲートを突破しようとする車は、公式にエクゾダス(BRCからデフォルトワールドへの帰還)が開始された際に列の一番後ろに回される、と盛んに喧伝されているのが心配ではあったが、J&Mも、Eも、とにかくゲートまで行ってみる、と月曜の朝までにはキャンプを後にしていった。

      • バーニングマン2023振り返りDay7 or 8-隔離

        土曜日、あるいは日曜日 バーニングマンも後半になると、今日が何曜日なのか、いつからが昨日なのか、時間の感覚が失われてくる。 だから、なんだと言うのだ。デフォルトワールドの時間も地図も、僕たちが無限の世界を限定するための、一つの指標に過ぎない。本当にそこまで考え抜かれて設計されたのか、それとも度重なる偶然が、この街をこのような形に有機的に進化させたのかは僕には分からないが、BRCは理由など説明せず、ただそこに生きるバーナーに「今、ここしかない」と容赦なく現実を突きつけてくる

        • バーニングマン2023振り返りDay6-虹

          金曜日 朝目覚めると、天気は上々だった。雨は僕の祈りを聞き入れてくれたかのようだった。昨日の予報によれば、このまま週末まで雨が続く可能性が高いとのことだったのだから、僕の祈りの力もなかなかのものだ。 とは言え、テントの外はビチャビチャで、ちょっと外に出れば泥だらけになるのが目に見えた。噂に聞いていた、プラヤの泥だ。ブラックロック砂漠は「砂漠」と言えど、その正体は夏の乾季に水が蒸発してカラカラに干からびた、ブラックロック湖の底だ。雨が降って水分を含むと、細かい粒子状に砕けた

        バーニングマン2023振り返り Day10-テンプルバーン

          バーニングマン2023振り返りDay5-雨

          木曜日 木曜日は、今年のバーニングマンで僕が一番楽しみにしていた日だった。僕が好きなアーティストやDJのステージが、この日に集中していたのだった。水曜日までは、いわばウォーミングアップで「今日から本気を出す」と言った気持ちでいた。今年のバーニングマンはスロースターターだけど、きっと、これから週末にかけてどんどん盛り上がっていくに違いないとの淡い期待も、この時点では残っていた。 まだ夜明け前、あたりが暗闇の中、僕はBRCの一番端、10:00ストリート&Hストリートまで自転車

          バーニングマン2023振り返りDay5-雨

          バーニングマン2023振り返り Day4 -ファイト・クラブ

          水曜日 その日の朝目を覚ますと、EがAと口論しているのが聞こえた。「どこかに出かけるなら、必ず声を掛けて欲しい」と自分のRVに戻ったEを忘れて、3人だけでマンへ行ってしまったからだ。 確かに彼にちょっと悪いことをした、とは思うけど、その日の出来事が刻一刻と変化していくバーニングマンでは、こんなことはよくあることだ。快適なRVに篭り、スターリンクでネットフリックスを観ることにしたEが悪い、と当たり前に僕たちが考えてしまうのは、原則9「Participation(積極的に参加

          バーニングマン2023振り返り Day4 -ファイト・クラブ

          バーニングマン2023振り返り Day3-プラヤ生活の始まり

          火曜日 Aと僕は、毎朝「アークティカ」までクーラーボックスに使う氷を一緒に買いに行く「アイス・バディ」になった。Aは、道すがら「あれを見て!」とか「これを見て!」とかそこかしこを指さしながら、興奮気味にユーモラスな語り口で実況を行ってくれた。自分では絶対に気が付かなかったディテールを彼女が発見した時や、まさに自分が今注目していたものを、彼女も同時に同じような視点で捉えていることが判った瞬間など、2人とも大はしゃぎの道のりだった。通りかかったド派手なバービー仕様のミュータント

          バーニングマン2023振り返り Day3-プラヤ生活の始まり

          バーニングマン2023振り返り Day2-仲間が集まった

          月曜日 朝、目が覚める頃までには、ガラガラだったオープンキャンプエリアにも次々と新しい人たちがやって来ているだろう、という僕の予想は完全に外れた。昨日の夜に比べても、チラホラと車が増えている程度で、大きなRV(キャンピングカー)が近くに停まって、僕のテントを風や日差しから守ってくれたらラッキーだな、なんて考えは甘かったようだ。 バーニングマンのチケットを手に入れるのは、いつもはなかなか大変なことだ。オンラインで数回に分けて行われるチケット販売では、通常数秒も経たずに1回数

          バーニングマン2023振り返り Day2-仲間が集まった

          バーニングマン2023振り返り Day1-到着

          日曜日 “So, what are you looking for here today?” -で、今日はここに何を探しに来たの? チケットカウンター2番の向こうにいる、鼻の周りのそばかすとキュートな笑顔が魅力的な、絵に描いたようなカルフォルニア女性が、ちゃめっ気たっぷりに僕に尋ねる。カウボーイハットにスノーゴーグル、たくさんの首飾り。他の場所であればチグハグに見えるはずのファッションがやけに眩しい。僕は、その調子に合わせるように、おどけてみせる。 “Honestly,

          バーニングマン2023振り返り Day1-到着